Love△Triangle

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「「「本当にすみませんでした!!」」」

土下座をする三人組。すでにコロネロの鉄槌を受け、大きなたんこぶが出来ていた。きっと彼等は恐れてる。私が更に力を奮うんじゃないかって。周りの隊員達は気の毒そうにする様子はなく、冷たい目で眺めていた。もちろん隣に居るコロネロも。



「私が言いたいのはただ一つ」

ゆっくり三人に近づくと、びくんと肩を震わせた。私はしゃがんでそっと三人の頭を一人ずつ撫でた。



「皆が無事で良かった」

予想していなかったのか、目が大きく見開かれた。



「私はね、別に此処の人間じゃないから…嫌われたって憎まれたっていいの。だから騙されたとしても怒ってない。でもね、」

ふと一人居なくなったと言われた時を思い出す。



「誰かが傷付く所は見たくない。その人にどう思われていても」

「ひなさん…」

「もうこんな事絶対しちゃ駄目だよ?」

三人はもう一度深々と謝罪した。



「…良いのかコラ」

「コロネロがきつく叱ってくれたでしょ?だから怒るのはそれで十分」

「そうか…」

私が笑うとコロネロも笑い返してくれた。






「あのー、二人の世界作ってるとこすみません…。ひなさんとコロネロ長官ってもしかして…」

とある隊員が突然尋ねた。他の人も興味津々な感じだ。
これはどうすれば…。ちらりと隣の彼を見るとコロネロはニヤリと笑った。…何か何時もと違うような。


「いいか、お前ら。覚えとけよコラ」

コロネロは私の目線に合わせて足を折った。すっ、とコロネロの手が両頬に当てられる。


「あ、あのー。コロネロ?」

「愛してる」

その言葉を皮切りにコロネロは勢いよくキスをした。周りから歓声や悲鳴が遠く聞こえる。昨日は僅かな時間だったのに、今日はすごく長いし激しい。息が続かず口を少し開けると何かぬるりとしたものが入って来て口の中を動き回る。これ…コロネロの舌?!私が目を見開くと彼は目を閉じていた。キスを堪能しているかのように…。
私は心の中でため息をつくと、そっと目を閉じてコロネロの首に腕を回した。












「ハァ…」

つい調子に乗ってしまった。あの後…どれくらい俺達はキスしていたのだろうか。気付けば日は暮れ、隊員達は誰ひとり居なかった。


『…コロネロの馬鹿』

『ハァ?!お前だって俺に腕回してたし満更でもない感じだったじゃねぇかコラ!』

『で、でも!あんなに突然…しかも隊員達皆居たのに』

『見せしめだ』

『見せしめ…?キスなんて見世物じゃない…!!』

『いや、そういう意味じゃなくてな…』

『それに…し、舌まで入れてきて…』

『ああ、ディープキスのことか?』

『……私まだ慣れてないのに』

『ひな…?』

『もっと優しくしてよ馬鹿!!』

そう言って奴は何処かへ去って行ってしまった。後を追い掛けた時には何処かに消えていた。その様子を見た奴らは…もう破局したんですか、嫌われて可哀相ですねと言ってきたので全員ゲンコツを下した。
明日でひなが居るのも最後なのに…。来てくれるんだろうか?
今日は滅多にない休みの日。隊員達には嵌め外すなよと釘を指すと、それはコロネロ長官でしょうと返された。あいつら生意気に成長しやがって…。
俺は街をぶらぶら歩いていた。もしかしたらひなに会えるかもしれない…そんな淡い期待を寄せながら。
でももう時刻は夕方。彼女の姿は何処にも見当たらなかった。…帰るか。肩を落として基地へとトボトボ歩きだす。









「ひな姉ー!!早く早くー」

「待ちなさいって!私一杯荷物持ってるんだから!ったく…カイジは持ってくれてるんだからリクトもちょっとは持ちなよね」」

"ひな姉"と呼ばれたその名前…そして彼女に似た声。もしかして…




「えー!!」

「レディに持たせる気?」

「レディって何処に居るんだよ」

「…カイジもそこに直りなさい」

三歳児と十二、三くらいの餓鬼を連れて歩いていたのは間違いなく彼女だった。







「ねぇ、ひな」

「何、言い訳でも言う気?」

「違う違う。あの人」

カイジに指差された先に居たのは……金髪碧眼、目立つ隊服に同じ柄のバンダナ姿。



「コロネロ…」

間違いなく彼だった。



「ほらリクト。行くぞ」

「えー?!あの人誰?」

「良いから邪魔すんな」

ひょいっと私から荷物を取り上げるカイジ。


「ちょっ、ちょっと!」

「早く仲直りしろよ」

「どうして…」

「今日一日中ぼやいてたぞ。"コロネロ"って」

一生の不覚…。全く覚えていない。



「ケンさんには言っとくからさ」

ぽんぽんと私の頭を撫でるとリクトの手を引いてさっさと行ってしまった。アイツ…何時もは意地悪ばかりしてくるのに。いつの間にあんな男に成長した?!




「ひな…」

「コロネロ…」

名前を呼び合ったけれど私達はひたすら無言のままだった。それに耐え切れず、目の前に見える夕焼けに目を向ける。



「綺麗だね…夕日」

「…お前空好きなのかコラ」

こくんと頷くと、コロネロは何か考えていて、思い付いたのかぱちんと指を鳴らした。


「ついて来い」

「えっ…?ちょっ、ちょっと何処に?!」

「良いから良いから」

繋がれたその手…私はそれだけで赤くなってしまうけど、彼はどうなんだろうか。生憎顔は前を向いていて見えない。目の前のコロネロの背中が大きく映った。







着いた先は基地の浜辺。何時もは此処で訓練するが今日は休み。当然誰も居ない。

「何で此処に…」

「前見てみろ」

ひなは顔を海へと向けた。




「わぁ……」

目の前の光景に目を奪われている様子。そりゃそうだろう。俺ですらこの前の景色に感動を覚えるのだから。ゆっくりと波打際まで来るさざ波の音を聞きながら、俺達は目の前に広がる夕日をただただ見ていた。日が沈むのは呆気なくて、いつの間にかもう姿を消した。


「見て、コロネロ」
ひなが指差した上を見上げれば、満天の星空が出番を待っていたようだ。



「今年の七夕は二人は会えるのかな?」

「七夕…?」

「ああ、七夕って言うのはね、日本特有の日なんだけど…」

何でも織り姫と彦星という引き離された恋人が一年に一回だけ会える日、だそうだ。空には天の川と言う星の川が出来るらしい。



「去年は雨が降ってて駄目だったんだけどね…」

「いつだ?その七夕っつーのは」

「来月の七日。七月七日だよ」

俺はそれを聞いて目を見開く。あまりにも偶然過ぎて…


「コロネロ?どうしたの」

「その日、俺の誕生日だコラ」

「…本当に?!」

じゃあさ、ひなは俺の手を包んだ。



「またその日も一緒に星見よう?」

ふわりと笑うその顔に、また強く心が惹かれた。




「…つーか、もう機嫌直ったんだなコラ」

「あっ…言われてみれば」

どうやら忘れていたらしい。俺も頭から抜けていたが…。



「ごめんなさい」
「わりぃ」

同時に謝る。ハモったのがおかしくて俺達は笑った。



「コロネロがキスばっかりするから…」

「…嫌なのかコラ」

「嫌じゃないよ!でも」

伏せられた目が俺を見つめた。




「…私のこと身体目的なのかな、って」

「ハァ?」

突然のことに驚いてしまったがすぐに笑いが込み上げてきた。


「な、何で笑うの?!」

「身体目当てだったらもっとナイスバディな女口説くぞコラ」

「…どうせナイスバディじゃないですよーだ」

ぷいと顔を背けられる。



「拗ねんなよコラ。俺が言いたいのは…」

ぐいっと顔をこちらに向けさせ、おでこを合わせる。それだけのことなのにひなの顔は真っ赤になった。






「命を懸けてでも守りたい…そう思えるくらい愛してるんだ」

一度目は俺の上司。でもソイツに抱いたのはただの憧れで…彼女だけには生きていてほしかった。二度目は目の前に居るコイツ、ひな。そう思えるのは今までに感じたことのない愛情…ただそれだけ。



「…私もコロネロのこと守りたい。子供達と同じように」

「つまり俺はあいつらと同じってことかコラ」

大分意地悪なことを聞いてしまう。聞かなくても答えは知っているのに…



「子供達は家族愛。コロネロは…」

一旦言葉が区切られた。続きが早く聞きたい…それなのにひなは口を閉ざした。










「えっ…?」

今の感触は…


「ふっ…長官がそんな間抜けな顔してるって知ったら隊員達の笑い者になるよ?」

ケラケラ笑うひな。さっきのは夢じゃないらしい。


「やったなコラ!」

「きゃっ!」

勢いよく抱き着かれたひなは当然俺の重さに耐え切れることなく地に横たわった。いつの間にか紐が取れたのか、何時もの一つ結びではなく、髪が下ろされている。サラサラとしたひなの髪が首に当たって痒い。砂が付くのも気にせずに俺達は砂浜にねっころがっていた。



「あっ!流れ星」

ひなが指差した所には確かに流れ星が見えた。でも願う暇なく消えてしまう。



「私はお願い出来たよ」

「なんて頼んだんだ?」

「…ないしょ」

しつこく聞いても教えてくれなかった。気になるが本人が言ってくれないのだからどうしようもない。

なぁ、星達…どうか俺の願を聞いてくれ。…ひなが俺の隣で何時までも笑っていてくれますように。






("コロネロがずっと幸せでいますように")
(そう願ったって言ったら貴方は笑うかな?)
(私の隣に居なくても…何時までもその笑顔は守りたいから)

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