Love△Triangle
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トイレから出て、リボーンさんの所へ戻ろうとすると、ジェラートの屋台を見つけた。…お昼ご飯代には全然及ばないけど。
私はピンクと白のを持ってリボーンさんのもとへと急いだ。…ん?リボーンさんは女の人二人に囲まれている。逆ナンかな…?リボーンさんモテるもんね…。彼女達は私より何倍も綺麗で大人っぽくって…。何時もよりは大人に見えると言っても童顔のせいでまだお子ちゃまだ。私は胸が少し苦しくなった。…あれ。なんでこんな気持ちになるんだろう。
「あっ…!」
考え事をしていた私は、石が落ちていることに気付かず、足を踏み外した。やばい…ジェラートが…!
「ふぅ…」
ひなが帰ってくるのを待っていると、女が二人俺に近づいてきた。
「お兄さん…カッコイイ方ですねぇ!」
「良かったら私達とお茶しませんかぁ?」
…うざい。わざと甘えるように喋りやがって。化粧は濃いし、ひなの足元にも及ばねぇ。無視して立ち上がろうとするが、俺の行く手を阻まれた。
「…俺は待ってる奴が居るんだ。他を当たってくれ」
「お友達とかですかぁ?!それならその人も一緒に…」
ふと、ひなが歩いてきているのが見えた。アイツ、何を手に持ってるんだ?俺の方を見たかと思えば一瞬固まっていた。…嫌な所見られたな。俺は小さく舌打ちをした。ひなはゆっくり近付いてきた。かと思えば何かに躓いたんだろう。身体が倒れかけていた。
「ひな…!」
俺はなりふり構わずひなの方へ駆けて行った。頼む…間に合ってくれ…!
そのまま倒れる…!かと思えば、私は温かいものに包まれ、ちゃんと立っていた。手元にあるジェラートのカップも無事だった。
「大丈夫か?」
そう…私を助けてくれたのはリボーンさんだった。
「…大丈夫です。ありがとうございました」
でも…リボーンさんは何で私を助けてくれたんだろう。あんなに綺麗な人に囲まれていたのに…
「あんな女に目がいくかよ」
「えっ…?」
「俺にはひなしか見えてねぇからな」
私の心を読んだんですか?それでも私は怒らなかった。リボーンさんの言葉に、さっきの胸の痛みも消えていたから。
「さっさと食べねぇと溶けるぞ」
「あっ…!」
忘れてた。リボーンさんに白を渡すと首を傾げられた。
「お前が両方食うんじゃねぇのか?」
「私、そんな食いしん坊じゃないです…!」
「冗談だ、冗談」
笑いながらさっきのベンチへ戻ると、もう彼女達の姿は居なかった。
「何処まで行くんですか?」
「もうこの先だ」
バスに乗り、向かう先は終点。俺達以外には誰も乗ってない。
「あっ…」
ひなが指差す方には綺麗な夕焼けが広がっていた。
「綺麗ですね…」
「お前の方が綺麗だけどな」
「っ!…お、お世辞はいいです!」
「お世辞じゃねぇよ」
冗談にされてたまるか。ひなの頬に手を沿え、俺はしっかり目を見た。
「リボーンさん…」
「お前は、「次は終点タウ町、タウ町です。どなたさまも御忘れ物なさいませんようご注意下さい」
まるで俺達を邪魔するかのように運転手の声が響いた。アイツ…わざとやったのか?そうとしか思えない。
バスから降りる時に睨むと、ジジイはニコニコしていて丁寧に頭を下げるだけ。…ムカつく。苛々を感じながらも、ひなの手を引き目的地へと足を進める。
「此処って…」
着いた先は、天文研究所。
「お前来たことあるのか?」
「いや…話に聞いたことがあるだけです」
流石星空好きのひなだ。此処のプラネタリウムは一部の間で結構人気が高い。
「…もしかして調べてくれたんですか?」
「好きな女の為ならお安い御用だ」
握っている手に少し力が篭められたのを感じ頬が緩む。
「ほら行くぞ」
俺はすたすたと歩き出した。ありがとうございます、透き通った声はちゃんと俺の耳に届いていた。
「わぁ…」
平日だからだろうか。私達以外には誰も居なかった。次々と目に映る星たちに私はただただ感動を覚えていた。プラネタリウムは確かに人工のものだけど、私には実際の星のように感じた。
見入っていると、ふと肩に重みを感じる。…リボーンさんだった。昨日も任務行ってたもんね…疲れてるに決まってる。
「…お疲れ様です」
ずり下がったブランケットをそっとかけ直すと少し身じろぎしたけどまだぐっすり寝ているみたい。普段なら絶対見られないリボーンさんの寝顔をまじまじと見つめた。私がいつも仕事しかしてないから連れ出してくれたんですよね?今日一日、本当に楽しかったです。ありがとうございました…
気付いたら私はリボーンさんの頬にキスをしていた。我に帰って慌てて唇を離す。
…大丈夫。気付いてないみたい。まだ寝てるもん。私は再びプラネタリウムに目を戻した。心臓の音を煩いくらいに感じながら。
「んー!凄かったですね」
外に出ると満天の星空。土地柄か、都会よりも星が綺麗に見えた。さっきのも綺麗だったけどやっぱり実物は実物で感動を覚える。
「…なぁ」
多分寝起きだからだろう。今までずっと黙ったままだったリボーンさんはようやく口を開いた。
「お前…俺にキスしたよな?」
「えっ…」
握られた手に強い力が篭められた。実は起きてたの?自分がやってしまったことが恥ずかしい。
「やり逃げは許さねぇぞ」
黒い瞳が真っすぐ私を射抜く。
「…なんとなく、です」
「はっ?」
「リボーンさん見てたらなんとなくしたくなっちゃって…」
これで許してもらえるのかな?じっとリボーンさんを見上げると、少し目を反らされたけど直ぐに私に向き直った。
「…だったら俺からやっても問題ねぇよな?」
クイッと長い指で顔が上に向く。
「…今ならまだ間に合うぞ」
リボーンさんはやっぱり優しい。ちゃんと逃げる機会を作ってくれている。
「…して下さい。いっぱい」
何故か嫌じゃなかった。私がはっきり答えると、リボーンさんは目を大きく見開いて、そうかと優しく笑った。リボーンさんの顔がゆっくり近付いてきて、私はそっと目を閉じた。
(た、立てない…)
(クック…そんなに俺のキス良かったか?)
(前もこんなことがあったような…)
(ほら。おんぶしてやるから乗れ)
(………すみません)