Love△Triangle
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「そこ、間違ってるぞ」
「…あっ!点が一つ足りないんですね」
「ちげぇよ。こっちのつくりは"木へん"だぞ」
リボーンは軽くひなを小突きながらも優しく正しい字を教えている。俺が間違えたら銃弾飛んできたのに…。なんだこの格差は。
談話室に居るのは任務を終えた二人と仕事のない俺しかいない。ひなはリボーンに漢字を教わっているから(ひなは漢字が苦手)、俺の話し相手にはなってくれない。俺は淋しく二人の様子を見ていた。
それにしても。じっと二人を見る。…二人の雰囲気が何となく変わった気がする。何時もならリボーンがあんなに顔近付けてたらひなは離れてと赤くなって叫ぶのに…。俺には二人の距離が縮まったように感じた。
やっぱりデートに行かせて正解だったらしい。そう、あれは俺のアイデアなのだ。リボーンとコロネロを比べたら、やっぱりコロネロの方が大幅に勝っている。三人の邪魔をするつもりはないけれど、せめて少しでも追い付けれたら…そう思って、故意に休みを被らせ、リボーンにそれとなくアドバイスした。
俺はリボーンに幸せになってもらいたい。素直じゃないしドSだけど、今まで色んな不幸や困難を乗り越えてきたアイツには。でもリボーンが幸せになるには隣にひなが居ないと駄目だし、リボーンならひなを幸せに出来るはずだ。まぁ、コロネロも良い男だからなぁ。結局ひな次第なんだけど…。
でも落とした女の数知らず、な百戦練磨のアイツが本命には初とは予想外だった。少し笑ってしまう。
「っ…!」
俺目掛けて飛んできたシャープペンシルは壁に突き刺さった。俺が避けなかったら目に当たってたぞ?!リボーンを見ると、ニヤリと笑っていた。隣に座っているひなは集中しているから一連のやり取りに気付いていない。前言撤回…コイツにひな任せてたら危ないかも。
「ふぅ…」
「少し休憩にすっか」
「はい!」
リボーンさんは珈琲持って来ると言って立ち上がった。
「わ、私が行きます!」
「俺がやりたいんだ。お前はいいから座っとけ」
強く椅子に戻され、彼はさっさと部屋から出て行ってしまった。
「ひな…愛されてるね」
「そ、そんなことないです…!」
ぶんぶんと手を顔の前で振る。
「実際どうなの。リボーンとコロネロは」
「どういう意味ですか?」
「どっちが好きなのかなって」
「!!」
分かるくらいに顔が赤くなってしまった。ボスは温かく微笑んでいた。
「…本当は」
「ん?」
「…本当のところ、よく分かんないんです」
私は椅子から立ち上がり、ボスの正面のソファーに座った。
「…コロネロは、私がいくら酷い事をしても、それでも好きで居てくれて…。私にとってはとても大きな存在なんです」
本当は私から解放してあげて、違う、他の人と幸せになってほしいのに。
「リボーンさんは、私にとって優しくて何でも出来る上司で…」
ふと、昨日のあの夜の事が心に浮かぶ。
「…何となく、リボーンさんの隣に居ると落ち着けるんです」
「ひな…」
「…私、最低ですね。こんなに素敵な人達を振り回してばかりで」
俯いていると、隣に座ってきたボスが私の頭に手を置いた。
「そんなことない。誰だって迷うことだよ」
ボスはゆっくりと私の頭を撫でた。
「…俺はさ、昔から京子が好きだったんだ」
「リボーンさんに聞きました」
「…そっか。でもさ、ハルに会って、アイツが俺のこと好きだって何度もアタックしてきたんだ」
私は目を見開いた。あのハルさんが…?
「なんかさ、段々ハルのことも気になり出してきて…。どっちが好きなのか、分からなくなったんだ」
「…どうやって、決めたんですか?」
「自分の心、だよ」
「心…」
「結局、俺の心は決まってたんだ。京子が好きだって。だからさ…」
ボスは私を優しい眼差しで見つめた。
「ひなも時間が過ぎたらきっと分かるよ。リボーンかコロネロ…どっちを本当は好きなんだって」
だから慌てて答えを出す必要はないんじゃないかな、ボスの言葉に私は涙が出そうになった。
「…ありがとうございます」
「もう……本当にひなは可愛いな」
「キャッ」
勢いよく抱き着かれた。
「俺にとって、ひなは大事な娘なんだから。何時でも相談しろよ」
「娘…?」
「京子も言ってたぞ。"ひなちゃん、私の娘にしたい"って」
「…嬉しいです」
嬉しさに浸っていると、何やら焦げ臭いにおいがした。
「…ボス、何か臭いませんか」
「…俺もそう思う」
ふと、奥のテーブルに何やら煙が出ているものがあった。
「!あれは…」
「ひな、駄目だ!それに近付いちゃ…!!」
ボスの言葉を流して私は走ってその物体に近づく。
「…バズーカ?」
「ひな!!」
"ポンッ"
視界が真っ白になった。
「…何か煙いな」
珈琲カップを二つ持って談話室へ向かっていると、何やら煙の臭いがした。
爆発音は聞こえなかったけどな…
「何だよ、これは」
扉を開け、ツナとひなに尋ねようとした。が、ツナしか居ない。ひなの代わりに居たのは…
「あれ…何で私此処に?」
スーツ姿の見知らぬ女だった。
「ん?ボスがどうして…でもやけに若いなぁ」
俺の方を見ると、驚いたように目を見開いた。
「…若返ってる!」
「はぁ…?」
そいつは納得したように手を打った。
「ああ…"私"が爆発に巻き込まれたのね」
そう言って笑うソイツは、アイツの笑顔に似ていた。
「ひょっとして…」
「はい。…十年後のひなです」
十年後のひなは可愛らしさは残っているものの、可愛いというよりは美人になっていた。
(…十年前の私、大変なことになってそうね)
(どういうこと?)
(誰かさんに押し倒されてるんです)
(!誰だソイツは)
(…さぁ?)