Love△Triangle
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「…続いて新婦の入場です」
司会の奴がそう言えば、会場は拍手で沸いた。俺は客席を目立たないように見渡す。…今の所は怪しい奴らの姿は見受けられない。動くのは式が一番盛り上がった所だろうな。
俺は大きな扉の方へ目線を戻した。ひながあの向こうには居るんだな…。心拍数が段々と上がっていく。どんな姿なんだろうか?任務が言い渡されてからあれこれ思い巡らしてみたが、きっと予想を良い意味で裏切るんだろう。ゆっくり扉が開かれた。
ベールに顔が殆ど隠れて見えないが、あれは間違いなくひなだ。俺にはアイツの他の奴にはない独特なオーラが分かる。父親役に紛した奴と腕を組み、一歩一歩、こちらへやってきた。会場内の大きな拍手に包まれて…
ぴたり。
俺の目の前で止まったひなはそっと俺を見上げた。
「っ…!」
俺にしか見えてないひなの顔。滅多にしたところを見たことがない化粧。ましてやこのウエディングドレス姿…今まで見てきたひなの姿で一番綺麗だったし、世界中のどんな女にも負けない。これが本当の結婚式だったら俺は此処で抱きしめてキスしていただろう。でもフリな訳だからそんなこと出来るはずもないし、ぐっと堪えた。
俺達は席に案内され、座った。
「では続いて…」
司会が式を進めている中、俺は誰にも気付かれないようにそっと耳打ちした。
「…綺麗だな。惚れ直したぞコラ」
「!!」
俺を見上げたひなの顔は紅潮していた。
「俺とお前が挙式する時はもっと豪華なドレスにしてやる」
次の瞬間。勢いよく俺の足はひなに踏まれた。つい声を漏らしそうになる。ひなを見れば満足そうにしていた。…人に見られねーからって、今のは酷過ぎるだろ!
賛美歌も終わり、いよいよ式のメイン…誓約がやってきた。
私とコロネロは神父さん(獄寺さんが化けてる)の前に立つ。
「…シオン、貴方は今この女子を妻にしようとしています。貴方は真心からこの女子を妻にしようと願いますか?」
「願います」
「貴方はこの結婚が神の御旨によるものだと確信しますか?」
「はい」
コロネロ(シオンさん)は力強く答えていく。
「貴方は神の教えに従い、清い家庭を作り、夫としての分を果たし、常に貴方の妻を愛し、敬い、慰め、助け、死が二人を分かつまで健やかなときも病むときも、順境も逆境も、常に真実で愛情を持ち、貴方の妻に対して節操を守ることを誓いますか?」
コロネロはちらりと私の方を見て笑い、直ぐに神父さんの方に向き直る。
「誓います」
その瞳は真っ直ぐだった。
神父さんは次に私の方を向いた。
「…リサ、貴方は今この男子を夫にしようとしています。貴方は真心からこの男子を夫にしようと願いますか?」
「…願います」
「貴方はこの結婚が神の御旨によるものだと確信しますか?」
「…はい」
本当の結婚式でもないのに、私は緊張しながら誓いを立てていく。
「貴方は神の教えに従い、清い家庭を作り、妻としての分を果たし、常に貴方の夫を愛し、敬い、慰め、助け、死が二人を分かつまで健やかなときも病むときも、順境も逆境も、常に真実で愛情を持ち、貴方の夫に対して節操を守ることを誓いますか?」
「…………誓いま「そこまでだ」
一人の男が立ち上がり、ナイフを私とコロネロに向けた。会場内はどよめきと悲鳴が響く。
ザッ。
会場内の多くの人達が立ち上がる。その数はボンゴレが配置した人数の10倍ほど。
「…どういうことだ?」
コロネロは私の前にサッと出て、私を庇うかのように立った。
「ちゃんと警告しただろ?式は中止しろと。従わなかったお前達が悪い」
「何が目的だ?」
するとその男はゆっくり近づきながら私を指差した。
「そこの女…俺と結婚するつもりだったんだ。ずっと愛していたのに…なのに…なのに!他の男と結婚するだと?!俺を捨てて他の男と結婚するなんて…許せねぇ!!」
「情けない男ね」
私はベールを脱ぎ捨てた。
「お前…!リサじゃない…」
「ああ、私はボンゴレファミリーのひな。リサさんの代役よ」
「ボンゴレだと…?!」
男は目を見開いた。
「本人達は別の会場で挙式してるわ。もう誓いも済んだんじゃない?」
「…騙されたわけか」
私は一歩一歩男に近づく。
「好きな女の幸せも願えないなんて…貴方本気でリサさんを愛していたの?」
「っ、お前に何が分かる!!」
「分からないわ、貴方の気持ちは。でもね…一つだけ分かるの」
ちらりとコロネロを見る。
「…本当に、本当に愛した人には、自分じゃなくてもいい…別の人であっても幸せになってほしいって」
「…ひな」
「本当は貴方も分かってるんでしょう?リサさんは別の男の人と幸せに、「…うるせぇ!!!もういい…お前らがリサ達じゃなくても…ボンゴレって分かったしなぁ。俺達はお前らが大嫌いだ!!マフィアのくせに善良ぶりやがって…。此処でお前ら共々ぶっ潰してやる!!!」
会場内に銃声が飛び交う。とうとう闘いが始まってしまったようだ。ボンゴレが配置していた戦闘員も駆け付けて来て、大混乱に陥った。ランボさんや山本さんが一般の人々を安全な所へ誘導している。獄寺さんとボスは互いに背中を守りながら闘っていた。私とコロネロは男を睨みつけていた。周りを数十人に囲まれながら…
「…ひな」
コロネロが私にしか聞こえないように小声で話す。
「お前、絶対俺の後ろから離れるなよコラ」
「私も戦う!」
「その格好で、銃を持たずにか?」
「あっ…」
しまった。相棒は控室に置いてきたんだった…。計画ではこれほどの敵は想定外だったから、私は戦わなくていいってことになっていた。
「でも、こんな数…コロネロだってライフルないじゃん!!」
「俺を見くびんな。これくらい朝飯前だコラ」
「相手は全員銃持ってるんだよ?!」
コロネロの力を下に見てる訳ではないけど、武器も持たずにやり合うのは話が違う。私が横に出ようとすると、コロネロによって戻された。
「大丈夫だコラ。俺を信じろ。…お前だけは命に代えても守ってやる」
「嫌!!」
私はコロネロに後ろから抱き着いた。
「私はコロネロに死んでほしくない…。そんな所見たくない!!」
「ひな…」
「…私は二人とも生き延びる道を選ぶよ」
この志は昔から変わってない。その思いが伝わったのか、コロネロは深く溜息をついた。
「…絶対死ぬんじゃねーぞコラ」
「コロネロこそね」
私達は笑って互いに背を向ける。
いつの間にか周りを囲む敵は増えていた。
「…一人当たり頭数5、60かな?」
「もっと増えてるぞ」
「…今生の別れは済んだか?」
きっと彼はボスなんだろう。私はキッと睨みつけた。
「人の幸せも願えないあなたに…あなた達には負けない…!」
「そうかそうか。そんなに死にたいのか。…跡形もないくらいぐちゃぐちゃにしてやるよ!!やれ…!!」
周りの男達はそれぞれ拳銃を構えた。私とコロネロはどう上手く避けようか考えながらじっと睨み回す。
ズガン、ズガン、ズガン!!
「えっ…?」
何故か次々と男達が倒れていく。
ズガン、ズガン、ズガン…!!
どんどん数は減っていく。しかも全員適確に頭を一発撃たれては倒れていく。
こんな完璧な射撃が出来るのは一人しかいない…
コツ、コツ、コツ…
「お、お前は…」
私の目の前の男は震えながら私の後ろを指差す。
「俺の花嫁に何しやがるんだ」
コロネロと同じ…白いタキシード姿のリボーンさんが立っていた。
(『きっと奴らは誓いの時に本性見せるだろうけど、もし姿見せなかったら介入してくれない?奴らも慌てるだろうし』)
(結局俺が介入する前に奴らは仕掛けやがった…)
(俺の邪魔をし、更にはひなを殺そうとするだと?)
(…覚悟はできてんだろうな。加減はしねぇぞ)