Love△Triangle

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「まだか…」

約束の時間まであと30分。俺はいつになくソワソワして待っていた。あの日から興奮が抑え切れず、隊員達には冷めた目で見られた。…気にしなかったけどな。昨日は結局一睡も出来なかった。ふと、ひなと初めてデートした日のことを思い出す。あの日も前の晩は寝ることが出来ず、目を真っ赤にして待ち合わせ場所に一時間前から居たものだ。ひなは孤児院の餓鬼達が離してくれなかったらしく、5分前にやって来て、何度も頭を下げた。でも俺はそれよりも、いつもより女の子らしい私服姿に心を奪われていた。それでも素直じゃない俺は、"可愛い"の一言が言えなかった。まだ青かったな…あの頃の俺は。



「コロネロー!」

後ろからアイツの声が聞こえ、俺はゆっくり振り返った。


「ごめん!リボーンさんがなかなか離してくれなくて…」
ボスが助けてくれたの、そう言って笑うひな。最近はスーツ姿しか見てなかったから私服姿は大分久しぶりだ。ふんわりしたシフォンのカットソーにミニスカート、足元は春らしいパンプスを履いている。何時もは無造作に一つでまとめている髪も、今日はポニーテールだ。一体何処で習ってきたのか、化粧はコイツに合うナチュラルメイク。…此処まで来る途中、大丈夫だったのかよ。俺が黙っていたからか、ひなは不安そうに眉を下げた。


「変、かな…?」

「そんなことねぇ。ただ…」

「…ただ?」




「いつもより可愛いと思っただけだコラ」

その言葉だけで赤くなるひなが愛おしい。俺はボストンバッグを取り上げ自分の荷物と一緒に肩に持ち上げた。


「じ、自分で持つから良い!!」

「何言ってんだコラ。こういうのは男に持たせろ」

「でもコロネロだって自分の荷物あるし…」

「両手で重たそうにしてる奴に持たせられるかよ。それに、」

空いた右手を差し出す。



「お前が荷物持ってたら手つなげねぇだろ」

敢えて俺の方から手を握ろうとせず待っていると、小さな手が俺の手を掴んだ。


「…握手じゃねぇんだから、こうだろ」

「あっ!」

繋がれた手を恋人繋ぎにすると、ひなの肩がびくんと震えた。それが可笑しくて笑ってしまうと、少し睨まれた。


「…楽しみだねコロネロ」

「そうだな」

この三日間はひなの心からリボーンが居なくなってくれればいい…。そう願いながら、テーマパーク『BEATO PARADISO』のゲートへ向かった。













「これで、二人分お願いします」

係のお姉さんに、抽選くじで当たった券を渡す。


「はい、カップル券ですね。では証拠を見せて下さい」

「証拠…?」

「カップルであることを示さなければ、入場は出来ません」

「…どうやって示せばいいんだコラ」


コロネロが眉を潜めて尋ねると、お姉さんは営業スマイルで答えた。


「此処でキスして下さい」


「「キス…?!」」

「はい。カップルなら出来ますよね?」

笑顔を絶やさないお姉さん。これは…やるしかない、のかな?でも周りにはたくさん人が居るというのに…。コロネロを見ると、目で訴えてきた。…うん、分かったよ。私は覚悟を決めてコロネロに向き直る。くいっと顎が上を向けられ、コロネロの顔が近づいてきた。私はそっと目を閉じて、首に腕を回した。


「んっ…」

いつまでキスし続ければ良いのかな…?分からないままコロネロに身を委ねていると、キスが段々激しくなってきた。


「っ、…はっ……」

コロネロの舌が入ってきて私の舌と絡み合う。無意識に私もコロネロに合わせていた。






「はい!もう良いですよ」

掲げられたストップウォッチには丁度10分と表示されていた。…まさか10分もキスしてたってこと?!恥ずかしくてコロネロの顔をしばらく見られそうにないかも…。お姉さんに部屋のキーと券を貰い、荷物はお兄さんが持って行ってくれた。


「…行くか」

「…うん」

指先が触れ合い、私達は自然と手を繋いだ。











このテーマパークは、やたらと広い。全て制覇するには少なくとも10日はかかるらしい。今日は一先ず絶叫系を乗ることにした。

「コロネロー!次あれ乗ろう」

その笑顔は見惚れるが、何でコイツはあんなに速く、高い所から落ちたり、ぐるぐる回転させられたりしたのにこんなに元気で居るんだろうか。男の俺ですら恐怖を覚えていたのに、隣のひなは楽しそうに笑っていた。そう…コイツは生粋のジェットコースター好きだ。『さっきの恐かったね…』とか言えば可愛いげはあるのに、『さっきの遅かったね』とか『もっと回転しないのかな』とか言うから恐ろしい。でも惚れた弱みだろう、ひなが楽しそうに笑う姿を見るだけで俺は幸せを感じた。
フリーフォールに乗った後、俺の様子を見て休憩しよっかと提案してくれたので俺達はベンチに腰掛けた。ちゃんと気配りしてくれているのが嬉しい。


「次は何にすんだコラ」

「んー、此処には二大アトラクションがあるらしいんだけど、一つはアレなの」

ひなが指差したのは、頂上も遥か高くにあり、回転数が半端なく、急な下りも多い。コースターもさっき乗ったのより速く過ぎ去って行った。…今まで乗ったものとは比べものにならないやつ。俺は冷や汗が垂れるのを感じた。


「もう一つはあの観覧車なの」

「…確かにでかいなコラ」

一周するのに1時間はかかるんじゃねぇかってぐらいだ。

「あれは時間かかりそうだし、また後で乗れば良いかなって。だからお昼ご飯食べたらあっちのコースター乗りたいなって」

良いかな、首を傾げて尋ねられたら頷くしかない。コイツは無意識でやるから心配だ。リボーンとかにやってねぇだろうな…。











「…コロネロ、大丈夫?」

「ああ…」

力無く返事をするコロネロの背中を摩る。ついさっき、『Cielo?Inferno?』という二大アトラクションの一つに乗ったら、コロネロはフラフラ状態になってしまった。


「ごめん。私が誘ったせいで…」

「…謝んなコラ。俺も同意したんだから」

「でも……あっ!水でも買ってくるから待ってて」

自販機を遠くに発見した私は急いで駆け出す。水がある自販機を見つけ、小銭を入れてミネラルウォーターを選ぶ。ボトルを取り出してコロネロの元へ駆け出すと、一人の男の人と擦れ違う。





「ん…?」

今擦れ違った人…何処かで見たことあるような。何処だったっけ。振り返っても彼の姿は何処にも居なかった。何処に消えたんだろうか。彼は一体…。モヤモヤした気分が残りながらも、私は再びコロネロの元へと走り出した。








(…つーかお前は大丈夫なのかコラ)
(ご心配なく。アレくらいならまぁ普通かなって感じだったし)
(…そうか。なら良いが。(コイツ超人過ぎるだろ…!))

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Beato…幸せな
Paradiso…楽園
Cielo…天国
Inferno…地獄

↑イタリア語。

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