ごちゃまぜ

□酒は飲んでも…
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「んっ…」

寝返りを打とうとすると、何かが身体に巻き付いている感じがした。恐る恐る目を開けば、目の前にあるのはしっかり筋肉のついた胸筋。



「えっ…?」


どうしてこの人が…しかも私のベッドに…しかもその格好で居るの?!
記憶を呼び戻そうとしても、昨夜のことが思い出せない。


「まさか…私…」

「昨日は良かったぞ、なまえ」

いつの間にか目の前の彼は起きていた。私は出来るだけ視界に入らないよう、斜め上を見た。



「う、嘘ですよね?」

「嘘だと思うなら…」


どさり。一瞬の内に、彼は私に覆いかぶさった。




「昨日のつづき…ヤるか?」

耳元で囁かれた甘いテノール。彼の手は、既に私のキャミの下に潜り込んでいる。





「っ、キャアーーー!!」

ばちん!












「……」

「何だツナ。俺の顔に何か付いてるか?」

「うん、ばっちり。真っ赤な手跡がね」


堪えられなくなったのか、ツナは爆笑し始めた。俺はツナ目掛けて迷わず弾を放つ。…チッ。避けんじゃねーよ。


「それ、なまえにやられたんでしょ?」

「……」

「無言は肯定と取るよ」


なまえの奴…次あったらただじゃおかねぇ。なるべく人に会わないよう努めたが、今日に限って多くの奴と擦れ違った。このザマのおかげで、ツナ含め、守護者の奴らにも笑われた(ランボは絞めたがな)。



「なまえ、昨夜のこと忘れてるの?」

「…みたいだな」

ツナから同情の目が向けられた。だったらさっき笑うんじゃねーよ。



「…任務行ってくる」

「気をつけてね」

「誰に言ってんだ、ダメツナが」

俺がしくじる訳ないだろう?いってらっしゃい、と執務室から出る俺の背中にかけられた。













「どうしよう…」

私はなんと恐ろしいことをしてしまったんだろうか。あの…あのリボーンさんに平手打ち?!とんでもない仕返しが待っているんだろうと考えると身震いがする。



「あ、なまえ」

「おはようございます!ボス」

「おはよう」

いつも笑顔で挨拶してくれるボス。お陰で恐怖心も少し和らいだ。



「ねぇ、なまえ」

「はい」

「昨日のこと…覚えてる?」

「…全く記憶にありません」

「そっか…」

一体どうしたんだろう。私は首を傾げた。ボスは思い立ったように私を見た。



「実はね…」

ボスはゆっくりと昨日の出来事を話しはじめた。













「あ、山本さん。そこのお水取って下さい」

「おう。はいよ」

「ありがとうございます」


夕食中、なまえは隣の山本の近くにある水を指差し、取ってもらうよう頼んだ。気前のいい山本は、なまえのグラスについであげた。お礼を言って、なまえは一気に飲み干した。


「ぷはぁー!」

「お前はどこぞのオッサンかよ」

「レディに対してなんてこと言うんですか?!」

「レディは一気飲みなんかしねぇ」


なまえは頬を膨らましてぷいっと顔を反らした。リボーンはなまえの頬を指でつついて萎ませた。二人は楽しそうに笑っていた。
俺を含め、他の守護者達は『イチャイチャは別の所でやれ!』と心の中で思っていただろう。




「あのう…」

「ん?」

クロームが山本にそっと話しかけた。


「これ………お酒」

指差したのは山本がなまえに注いであげた水の瓶。


「まじかよ…」

眉間に皺を寄せる隼人は、先日の騒動を思い出しているんだろう。


「なまえ、あのさ!」
急いでなまえの方を見たときには、もう時既に遅しだった。









「りぼーんしゃーん!!」

「っ!オイ!止めろ、なまえ!!」

勢いよくなまえに抱き着かれたリボーンは珍しく慌てていた。


「…お前酔ってるだろ」

「ええー、酔ってないでしゅ」

そう言うなまえの顔は真っ赤。舌も上手く回ってない。



「…なんかあついれすねぇ」

「お前、止めろ!!」

「いやですぅー」

ニコニコしながらなまえは服を脱ぎはじめようとした。リボーンは止めようとするが、彼女は既にネクタイを取り、ボタンも三つ開けている。


「本気で止めろって!!」

「…じゃあ、ぬがしてくれるんでしゅか」

「誰が…」








「リボーンひゃんが」

そっとリボーンの頬にキスをしたなまえ。


一瞬固まったリボーンは無言でなまえを抱えて立ち上がった。…あーあ、これは完全にスイッチ入っちゃったな。


「…お前ら」

部屋から出る前、背を向けて立ち止まった。





「…今夜はなまえの部屋に近づくんじゃねーぞ」


そのままさっさと出て行ってしまった。俺らは顔を見合わせながらも、何事もなかったかのように食事を再開した。










「…って事があったんだよ」

何ということだろうか。ずるずると床に座り込む。私は少量のお酒で直ぐに酔ってしまうし、その後の記憶も常に残っていない。


「私…」

「ん?」

「私…リボーンさんとしてしまったんでしょうか?」

うるうる涙目になりながらボスを見上げる。



「(っ…!その顔はやばいって)…あっ」

ボスが小さく声を漏らした。何だろうと私は振り返る。






「…何やってんだ。お前ら」

どことなく不機嫌なリボーンさんが立っていた。













ボスは仕事が残ってたんだとわざとらしく言って走って行ってしまった。

「…オイ、「申し訳ありませんでした!!」

私は床に額を付ける勢いで土下座した。


「迷惑をかけた上、平手打ちまでしてしまって…」

ちらりと見たリボーンさんの顔には真っ赤な紅葉が見える。


「…思い出したのか?」

「いえ、ボスに教えてもらったんです。…あの、それで…」

尋ねたいけれどなかなか言葉に出来ない。
そんな私を見て、リボーンさんはしゃがんで同じ目線になった。



「あの時大変だったんだぞ?ワイシャツは脱ぎ出すわ、俺の服は脱がせるわ」

…昨日の私をぶん殴りたい。何をやってるのよ?!


「ベッドに行ったかと思えば、俺まで連れてかれたんだぞ?俺の手を離さずに、そのまま寝るし」

「…穴があったら入りたいです」

「でもまぁ…」

リボーンさんは優しく私の髪を撫でた。



「お前の寝顔…可愛かったぞ?」

「!!」

私が真っ赤になったのを見て、リボーンさんは笑った。


「あの、ちょっと待って下さい。結局私達は…」

「ああ、あれは冗談だ」


なぁんだ。私はホッと胸を撫で下ろした。



「何だ、襲って欲しかったのか」

「誰もそんなこと言ってません!!」

私はぶんぶん頭を横に振った。







「なまえなら大歓迎で襲ってやるぞ?」

鼻がくっつくすれすれの距離の私達。黒い目は私を射抜く。まるで私の心は見透かされているようで…




「っ!し、失礼します…!!」

急いで立ち上がった私は慌ててその場から走り去った。残ったリボーンさんが妖しく笑っていたとも知らずに。












(何でリボーンさんが此処に居るんですか)
(何でって、決まってんだろ)
(…知りません)
(襲ってほしいんだろ?本当は)
(!ち、違います…!!)
(嘘つく奴には優しくしねぇぞ)
(…………優しくしてくださいね)
(フッ。畏まりました、お姫様)



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『酒は飲んでも呑まれるな』
by 銀魂

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