ごちゃまぜ
□ねぇ、覚えてる?
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「うぅ…ラルぅー!」
「…残念だったななまえ」
久しぶりの席替えは最悪な場所になってしまった。
後ろの席のラルに抱き着くと、優しく抱き留めぽんぽんと背中を叩いてくれた。
「お前から話しかけてみたらどうだ?」
「無理無理、心臓ショックで死んじゃうよ!」
「…オーバーだな」
私はちらりと、窓側の後ろから二番目の彼を見た。彼は頬杖をついて窓から外を眺めていた。
「でもこのままだと何も変わらないぞ?」
「うん…」
「せっかく同じクラスになれたんだろ?勇気を振り絞れ」
バンッと勢いよく背中を叩かれる。痛かったけど、私に勇気をくれた。
「…頑張る!」
その意気だ、ラルは優しく微笑んだ。
『あれ…体育館って何処?!』
入学式当日。私は予想通り迷子になってしまった。腕時計を見ると入学式まであと10分。これはかなりまずい…。
『…オイ』
『どうしよう…もう誰も居ないし…』
『…オイ』
『これだったら寝坊するんじゃなかった…』
『…オイ!』
肩を叩かれ私は大きく跳ねた。
『び、びっくりさせないで下さいよ…』
『何度も声かけたのに気付かないお前が悪い』
この人…見た目的に先輩なのかな?随分制服着崩してるし、顔も整ってて大人っぽい。
『あの、体育館何処か分かりますか…?』
『…通りでワタワタしてたんだな。来い、案内してやる』
スタスタ歩き出す先輩に遅れないようについて行く。
『…お前、名前は?』
『私ですか?』
『お前以外に誰が居るんだよ』
『…すみません。私はみょうじなまえって言います。先輩は…?』
振り返った彼は眉間に皺を寄せた。
『…俺、お前と同級生だぞ?』
『えっ…そうなんですか?!』
彼はわざとらしく溜息をついた。
『リボーンだ』
『へっ?』
『だから、俺はリボーンだ』
名前を名乗ると、彼…リボーン君はまたスタスタと歩きだした。
三分くらい歩いただろうか。
『着いたぞ』
『良かったぁ…』
私がホッとしているとリボーン君は私に近付いてきた。
『じゃあな……なまえ』
優しく微笑みながら、私の頭を撫でるとさっさと体育館に入ってしまった。
はっ…!私も行かなくちゃ!…今度会ったらお礼言おう。私の頭にはまだ彼の笑った顔が焼き付いていた。
あの日から私はリボーン君に恋をした。でも一年も二年もクラスは離れてて…廊下で擦れ違うことも滅多にない。ましてや彼はあの容姿に頭も良くて、スポーツ万能。学園中の女子生徒から大人気だ。しょっちゅう囲まれている所を見かける。
「えーっと…」
ラルとルーチェには先に帰っててと言って私は一人自習をしていた。なんといっても今年は受験生。色恋沙汰だけに腑抜けていたら痛い目を見てしまう。私は駄目な一方、ラルやルーチェはトップの方だ。私は二人と一緒に合格したい…その思いでコツコツ頑張っている。
「ちょっと休憩しようかな…」
窓の方を見ると綺麗な夕焼けが広がっていた。私はもっと近くで見ようと窓側の席へと向かう。その時、彼の席が目に留まった。…誰も居ないし、大丈夫だよね?
「…失礼します」
椅子を引いて腰掛ける。此処から私の席を見ると、遥か遠くにあった。何ていっても廊下側の一番前だもん。遠いのは当たり前だ。
「リボーン君…」
貴方はあの日のことを覚えてるかな?…きっと忘れてるんだろうな。
段々眠たくなってきた。駄目………寝ちゃ…
「っ…!」
どれくらい寝てたんだろう。目を覚ますと辺りは既に真っ暗になっていた。帰らなくちゃ…。私はふと、肩に何かかかってるのに気が付いた。
「学ラン…?」
誰がかけてくれたんだろう。名前を確認しようと名札を見る。
「…"リボーン"?」
「俺がどうした」
声がした方を見るとリボーン君が誰かの机に腰掛けていた。
「…ご、ごめんなさい!」
慌てて席を立ち、リボーン君に学ランを返すと自分の机へ向かう…つもりだった。
「あ、あのー」
「ん?何だ」
「…何で私は掴まれてるの?」
右手首がリボーン君の手に捕らえられている。
「…じゃあ聞くが」
何だろう?
「何で俺の席に座ってたんだ?」
私はその質問にフリーズしてしまった。
「なぁ…教えろよ」
「そ、それは…」
私はそろーりと一歩後ろへ下がった。
「逃がさねぇぞ」
両肩を強くつかまれ、リボーン君の顔は私に近付いた。
「ち、近い…」
赤くなる私を面白がるように更に顔を近付けるリボーン君。もう鼻と鼻がくっついてる距離。
「…自分の席と間違っちゃって」
上手くごまかせた!と私は内心喜んだ。
「そうかそうか…って、俺が納得するとでも?お前は廊下側一番前だろ」
「どうして…それを…」
「お前のこと、いつも見てたから」
分からない。なんで学園の人気者の彼が、平凡な私を見てるの?…いや私は騙されたんだな。
「…私は騙されません!」
大きな声で叫ぶと彼はキョトンとした顔をして、すぐに眉間に皺を寄せた。
「…お前は覚えてないのか?入学式のこと」
忘れるはずがない。だって私はあの日貴方と会って…
「一目惚れしたから…」
あれ、今私口に出しちゃった?
「リ、リボーン君…今のは…」
「ばっちり聞こえたぞ」
…なんてことを!私のバカバカ。ムードもへったくれもありゃしない。あーあ…私、もう学校に来れなくなるなぁ。
「…振ってください」
きっぱりと。彼に言われて想いを断ちたいから。
「嫌だぞ」
「えっ?」
「…まだ分からねーのか」
リボーン君は深く溜息をついた。私…何かしちゃったかな?
ちゅっ
「…!!」
「…お前。目くらい閉じろよ」
い、今!リボーン君がわ、私に…キス?!
状況が全く理解出来ずにワタワタしてしまう。
「鈍感ななまえでも、キスの意味くらい分かるだろ」
「………好き?」
私が首を傾げながら恐る恐る尋ねる。きっと否定するんだろう。
「そうだぞ」
えっ?!リボーン君が私を…好き…?
これは夢なんじゃないだろうかと頬を抓ると痛かった。
「俺は本気だぞ」
そう言って、リボーン君はあの日に見せた…あの、優しい笑顔を見せた。
「お前は?」
聞かれなくても私の気持ちはあの日から全く変わってない。むしろ日に日に想いは増していった。
「…大好きです!!」
私が笑ってそう言うと、リボーン君はお前可愛い過ぎると私を強く抱きしめた。
(えっ?!ラルもルーチェも知ってたの?!)
(ああ…)
(なまえをいつも見てたのよ?)
(…気付かなかった)
(けど良かったな、なまえ)
(二人ともありがとう!)
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元ネタは前サイト^^
ワタワタしてる鈍感な子を目指しました