ごちゃまぜ

□貴方のために
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「もう…分かんないよ!」

ポイッとシャーペンを投げて机に臥せる。



「オイなまえ。まだ終わってねぇぞ」

「こんな…大学レベルの問題やらせるリボーンがいけないんじゃん!!」

バンッとテキストをたたき付け、椅子から立ち上がる。


「何処に行く」

「鬼が居ない所ですぅ」

べーっと舌を出すと、銃弾が放たれた。私は慣れたように軽く避ける。小さな舌打ちが聞こえた。


「そんなんじゃ十一代目になれねぇぞ」

「別にいいよ。マフィアのボスになるつもりないから」

私は普通の幸せが掴みたい。毎日生きるか死ぬかの日々を送る気なんて更々ない。


「ツナも同じこと言ってたぞ」

「でも私は絶対ならないから。…じゃあね」

私はリボーンに後ろ手を振って窓から飛び降りた。重心を上手く操作しながら、無事に下へと着地する。もう何百回もやったからおてのもの。3階を見れば彼が顔を出していたから私は大きく手を振って屋敷を後にした。











「ったく…」

開かれたままのテキストを見れば、ちゃんと式が立てられ答えもあっていた。俺は赤ペンを取り出し丸を付ける。
なまえはツナよりも運動神経も良いし、頭も良い。しかも伸びしろがまだまだ未知数だから成長が期待できるし、現に俺やツナ達も凄く楽しみにしている。
だが、本人は全く見向きもしない。なまえが本気を出すのは睡眠を妨げられた時と、知人が誰かに馬鹿にされたり傷付いたりした時だけ。
何で俺の生徒は何時も一癖も二癖もある奴ばかりなんだろうか。ふと、アイツら二人の顔が頭に浮かぶ。最初はヘナチョコだったりダメダメだったのに、いつの間にか立派なボスになっている。なまえは元々才能があるからアイツらより凄くなるはずだ。
ふと、なまえの机の上の銃が目に止まる。アイツ、持って出掛けてねぇのかよ?!次期ボスとしての危機感がなさすぎる。何か嫌な予感がして俺はソレを掴んで急いで部屋を出た。頼む…何もないでいてくれ!














「暇だなぁ…」

外に出てみたのはいいものの、行くところもなく、私は公園のベンチに座っていた。休日なのに、子供達の姿も見当たらない。
リボーンやお父さんが私に期待してくれてるのは痛いほど分かる。でも、私にはそれが苦しい。お父さんはダメダメだったらしいけど、本当はボスとしての素質があったんだろう。それに引き換え、私は…



「人生どうでもよくなったなぁ」




「…だったら此処で死ぬかい?」

振り返れば数人の男の人が立っていた。



「…何か用ですか?」

「お前、ドン・ボンゴレ沢田綱吉の娘だろ?」

「!!」

「お前に直接怨みはないが、お前の父ちゃんにはあるんでな」



ガチャリ。

「悪いが死んでもらう」


気付いたら周りを囲まれていた。…最悪な状況みたいだ。そっと腰に手をやると拳銃を持って来なかったことに気づく。落ち着け、私。こういう時には冷静に…。




「あばよ」



パンッ

私に向かって撃たれたソレは、あの家庭教師に比べたら何倍も遅い弾だった。




「「「なっ?!?」」」

私は近くの男の顔に肘うちを食らわすとあっさりダウンしてしまった。まず一人ね。


「この餓鬼…!」

向かってくる男達に次はどうしようかと思考を巡らした。
















「!これは…」

公園に着くと目の前に広がるのは数十人の倒れている男。その中心にはなまえが立っていた。


「あ、リボーン」

「…何だこれは」

なまえの話によると、いきなり襲い掛かってきたから返り討ちにしたらしい。まだ13歳の餓鬼が大の男をこんなにあっさりと?なまえの将来を考えたら楽しみで少し鳥肌が立つ。



「お前は怪我してないよな?」

「うん!大丈夫だよ」

へらっと笑う姿に俺は少し戸惑う。俺はコイツの笑顔に弱い。理由は分かってるが、まだそれを認めたくない。こんなまだ男も知らないような餓鬼に何で…



「帰るぞ「無傷では帰らせねぇよ!」

まだ意識はあったのか、一人の男が立ち上がり、銃をこちらに向けていた。…チッ!




ズガン、ズガン…!


俺が撃った弾は男の眉間に当たった。奴が撃った弾は…











「…怪我はねぇな、なまえ」

「リ、リボーン…!」

俺の肩に掠った。スーツに穴が空き、血が流れ出す。なまえは、抱きしめていた俺の腕から逃れてポケットから取り出したハンカチを押さえ付けた。



「どうして…」

「お前を守るのも俺の仕事だ」

「守らなくていい!そんな…そんな怪我するなんて」

「大したことねーから気にすんな」

俯くなまえの頭を優しく撫でる。突然顔を上げたなまえの目からは涙が溢れていた。



「お前…」


「私のせいだ!私が外に逃げたりしたから…」

涙を流す姿はもう大人の女に見えた。




「ごめん、なさい…」

流れる涙を拭うことなくなまえは俺を見つめた。そっと手を伸ばして涙を拭ってやり、背中に回して抱き寄せた。




「気にすることねぇ。お前をこれくらいの傷で守れたんだからな」

「…リボーン」


するとなまえは決意したかのように真っ直ぐな瞳になった。そこには一点の曇りもない。






「私、……私は十一代目になる」



「!…何故だ?」


「貴方を守りたいから」

度肝を抜かれたように俺は目を見開いた。




「もう二度とリボーンに傷は負わせない」

「…言うようになったじゃねーか」


本当なら男が言う台詞だろ、それは。少し負けた気がして悔しい。
俺はなまえに触れるだけのキスをした。それだけでみるみる内になまえの顔は真っ赤になった。



「い、今!リボーン…」

「そんなんで赤くなるようじゃまだまだ餓鬼だな」

「が、餓鬼…?!」


「でも、」

林檎みたいななまえに向かってニッと笑う。



「今の口説き文句は満点だぞ。仕方ねぇから俺の女にしてやる」

愛人の奴らとはもう関係を切ってある。なまえが俺にとって大きな存在になってからは。



「帰ったら勉強の続きするぞ」

「また?!」

「何だ?保健の授業が良いのか」

「……バカリボーン」

照れ隠しか、なまえはぱしんと軽く俺の背中を叩いた。


「帰ったらまずは手当てでしょ」

「お前がしてくれるならな」

ツナにも報告しねぇとな。もしかしたら失神するかもな。
指先が触れ合い、俺は自然に手を握った。小さくて温かな手は俺の手を握り返してくれた。







(ああ、ツナ。俺達恋人になったからな)
(えっ…なまえとリボーンが?!そんな……嘘だよね)
(…本当だよお父さん)
(そんな…!俺の可愛い娘が…ああ……)
(お父さん?!しっかりして!!)

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