ごちゃまぜ
□一目惚れを信じますか
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「あれ?さっきも此処来たような…」
確か10分くらい前に見かけた通りだ。どうやら戻ってきてしまったらしい。参ったなぁ。地図と睨めっこしてみるけどさっぱり分からない。自分の方向音痴が恨めしい。これだったら素直に迎えに来てもらえば良かった…。
私が頭を抱えて悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り向けば、見知らぬお兄さんA。
「お困りかい?子猫ちゃん」
一体この人の目はどうなっているんだろう。私は人間なのに…!でも尋ねたら教えてくれるかもしれない…私は期待を寄せた。
「あのう、此処分かりますか?」
「OK、OK。連れてってあげるよ」
私の肩を抱きながら歩きだす。あれ、この人本当に分かってるのかな?私が地図で指しても見向きもしなかったけれど。…まぁ他に頼る人も居ないから彼を信用することにしよう。
すると、強く右腕を引かれた。
「コイツは俺の連れだ」
「えっ…?」
振り返った先には見知らぬお兄さんB。ちょっと待って。私貴方とは初対面なのだけど。私が口を開こうとすると、黙ってろと目で訴えられ、口を閉じる。
隣のお兄さんAはご機嫌斜めな様子になった。
「本当かい?彼女、ずっとぐるぐる迷子になっていたけど」
「コイツが俺の傍から勝手に居なくなったんだ」
言い合いになるお兄さんたち。私…どうすれば良いの?!
「いい加減その腕を離さねぇと…」
お兄さんBが目にも止まらぬ速さで取り出したのは拳銃。あれ、モデルガンだよね?最近のはよく出来てるなぁ…リアルに見える。
「す、すみませんでしたぁ…!」
何故か青ざめた顔をして、お兄さんAは去って行ってしまった。どうしたんだろう?
お兄さんBは私に近付くと眉を潜めた。
「お前…連れてかれる所だったぞ」
「連れてかれるって、目的地ですよね。なら親切な方では…?」
「…ちげぇよ。ああいう所だ」
長い指が指したのは、いかがわしいお店。私は口が開いたまま塞がらない。
「…私、食べられちゃう所だったんですか」
「ああ。速攻にな」
そういえば、電話でもしつこく言われたっけ。イタリア男に気をつけろよ、ホイホイ付いて行くなよって。このお兄さんは助けてくれたってことかな?
「有難うございました」
丁寧にお辞儀すると、私の腕を掴んだまま歩きだすお兄さんB。
「あ、あの!」
「目的地まで連れてってやる」
「…本当ですか?」
さっきのお兄さんAみたいな人だったら…そう思うと懐疑心が沸いて来る。お兄さんは私を上から下まで眺めると鼻で笑った。
「お前みたいなチンチクリンは対象外だから安心しろ」
「チ、チンチクリン?!」
大分失礼な人だ。私がぷうっと頬を膨らますとお兄さんは笑った。…顔だけはカッコイイのに。
「着いたぞ」
20分くらい歩いただろうか。ようやく待ち合わせのカフェへとたどり着いた。良かったぁ…私はホッと溜息をついた。
「じゃあな」
「ま、待って下さい!」
去ろうとするお兄さんの手を慌てて掴む。
「何だ」
「あのう。有難うございました」
見知らぬ私の為にわざわざ送ってくれるなんて。口は悪いけれど、実際は良い人なんだろう。
「あと…名前教えて戴けませんか」
「なんだ?逆ナンか?」
「ち、違います!」
恩人だから名前くらい覚えておきたいと思っただけなのに…。私が顔を真っ赤にして否定すると、お兄さんは冗談だと笑った。
「リボーンだ」
黒い、鋭い瞳が私を射抜く。まるで心までも射られたような心地…
「じゃあな………なまえ」
私の頭を撫でると、背を向けて去って行った。あれ、今私の名前…。自己紹介したっけ。
頭にはリボーンさんに撫でられた温もりの感触がまだ残っていた。
(綱吉!久しぶり)
(なまえ姉!一人で大丈夫だった?)
(お兄さんに送ってもらったから大丈夫)
(お兄さん…?)
(リボーンさんって人)
(!!)
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なまえ姉はツナの従姉妹のお姉さん設定。
リボーン視点は次頁。