ごちゃまぜ
□さよなら…でも愛してる
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『出会いと別れ』
全く正反対な言葉だけれど実際は同じこと。どんなに永遠を誓ったカップルも、必ずどちらかが先に死ぬのだから…
それでも私は貴方と過ごした幸せな時間がずっと続くと信じてた…信じてたのに
「もう2時か…」
彼が夜中にしなければならない職であるのは分かっているけれど、何時も不安になってしまう。怪我をして倒れてないのかなとか予想以上に多くて苦戦しているのかなとか。胸の前でギュッと手を握り神様に祈る。…どうか無事に帰ってきてくれますように、と。その時、ガチャリと鍵が開けられた音がした。相変わらず気配はしないけれど、それがむしろ彼が帰って来てくれたと分かる。ドアが開かれ、温かい温もりに包まれるはほんの数秒後。
「…ただいま」
「おかえりなさい」
先に寝てて良かったぞと何時も言われるけれど、心配で寝れるはずもないし、疲れた貴方にちゃんと言葉をかけたいから…そう言えば、お前本当に可愛いよな、そう言って優しくキスしてくれる。
「…なぁ、なまえ」
「どうしたの?」
首を傾げた私の耳元に彼は口を近づけた。
「抱いていいか」
「っ…!」
耳まで真っ赤にする私を見て、クスクス笑う声が聞こえる。
「何時まで経っても慣れないよな」
「だ、だって…仕方ないでしょう?」
「まぁ、そこも含めてお前らしいがな」
恥ずかしくて下を向く私をひょいっと軽々持ち上げた。
「わ、私同意してないけど?!」
「その内大人しくなるじゃねぇか」
事実に反論出来ず押し黙る私を見て彼はまた笑った。
「んっ…」
情事後、ようやく意識を取り戻すと彼が私の頭を撫でていることに気付いた。
「わりぃ。起こしたか」
「ううん、起きてから気付いたし」
突然手を止めた彼は私を強く抱きしめた。
「…なまえ、愛してる」
「何時もは滅多に言わないのに…。"言葉じゃ安い感じがするだろ"って」
愛人さん達には感情を入れずに言ってきた言葉…彼はそう言っていた。だけどそんな言葉じゃ表せないくらいお前が好きだ、彼がそう言ってくれたのは今から三年前。あんなにたくさん居た愛人さん達とも全て縁を切ってくれた。それだけ私は愛されているのかな…時々自惚れてしまうこともある。
「…たまには良いだろ。たまには」
勿論言われて悪い気はしないし、むしろその言葉は私の心臓を高鳴らせる。彼にもこの鼓動が伝わっているんだろうな…そう思うと恥ずかしくて、首に腕を回し肩に顔を埋めた。
「…私もリボーンのこと愛してる」
小さい声で、自分だけに聞かせるように。それでも彼には聞こえたらしい。背中に回る腕の力が強まった。
「よし、第二ラウンド行くか」
「…えっ?」
「誘ってるようにしか思えねぇぞ」
言われてハッと気づく。私も彼も一糸纏わぬ状態であることを。それなのに私は彼に自分の身体を押し付けたようなものだ。
「ちょっ、ちょっと待っ「待ったはなしだぞ」
ニヤリと笑う彼に、もう逃げられないんだと悟る。観念した私は不意打ちでキスをした。彼がポカンとしている表情は珍しく、つい笑いを零したのもつかの間。彼から激しいキスが送られ、私の身体は再び熱を帯びる。
「…愛してる」
そう言った彼の顔が淋しげに見えたのは気のせいだろう。
「あれ…」
目が覚めた時には隣の彼は居なかった。ベッド脇の時計を見れば、時刻は8時過ぎ。窓からは太陽の日差しが差している。何時もはまだ居るのに、急な仕事でも入ったのかな。どことなく嫌な予感がしてリビングルームに行けば、机には一通の封筒。恐る恐る中を開いて手紙を広げた。
『なまえへ
すまない。もうお前とは会えなくなった。俺にはどうしてもやらなきゃならねぇ使命が託された。不本意だがやるしか選択肢はない。俺のことは早く忘れて良い男見つけろよ。…愛してる』
たったわずかな行の手紙。それでも彼の想いがいっぱい詰まっていることが分かる。手紙にはうっすら涙跡が残っていたから…
「忘れられる訳ないよ、馬鹿…」
馬鹿馬鹿…何度も呟いたその言葉と共に、強く握りしめる手紙にポタポタと落ちる雫。
「…本当に馬鹿だよリボーンは」
神様…どうか私の願いを聞いて下さい。私が居なくても、あの人が笑っていてくれますように。
「…さようなら、愛しい人」
(ん?リボーン写真落としたよ。…わぁ、すげぇ綺麗な人。誰だよこの人)
(……俺の最初で最後の、最愛の人だ)
(えっ…まじ?!詳しく聞かせてよ!)
(ダメツナが。余計な詮索するんじゃねぇ)
(ま、待てよ!撃ってくるな!)
(なまえ、俺は永遠にお前を愛してる…)
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アルコバレーノになる前夜という設定。
書いてて私も涙が出てきました…