ごちゃまぜ
□嘘も程ほどに
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〜リボーンver.〜
「お前が嫌いになった」
「…は、い?」
「だから嫌いになったって言ってんだろ」
嫌い…?今嫌いって言ったよね?リボーンが、私を…?ぐるぐるとその言葉が頭に回っている私に、彼は更なる爆弾を落とした。
「…だから、別れよう」
私が云とも寸とも言わない内に、彼はじゃあなと背を向けた。涙が頬を伝っていることに気が付いたのは、廊下を通り掛かったボスが肩を叩いた時のこと…
「大丈夫?」
「…駄目そうです」
そうだよね…よしよし、優しく頭を撫でられ、涙は更に溢れてきた。ハンカチを目に当てるけれど、もう濡れ雑巾のようにビショビショで、意味がなくなってしまった。
「…私、嫌われることしたんでしょうか?」
「…んー、こればっかりは…ね。リボーンじゃないと分かんないなぁ」
昨日、一昨日…その前の日々を振り返るけど、全く見当がつかない。私が自覚してなかっただけだろうか。泣きじゃくる私の背中を摩ってくれるボスは、私に優しく問い掛けた。
「なまえはどうしたいの?」
「…出来れば元通りになりたいです」
でもリボーンは私のこと嫌いって言ってたし…
「今でもリボーンのこと好き?」
「勿論です!宇宙一大好きですから」
勢いよく立ち上がり、つい叫んでしまった。恥ずかしくなって顔を赤くすると、ボスはそれを見て微笑んだ。
「それをリボーンに言ってみたらどうかな」
「で、でも…」
「言ってみないと分からないよ?なまえの想いをドンッとぶつけてごらん」
もしもの時は何時でも話を聞いてあげるからさ、ボスのお陰で気持ちも少しだけ晴れ、私は大きく頷いた。
「…で。何だよ、用って」
任務に帰ってきたとボスから聞いて、私はリボーンの部屋に駆け付けた。扉をノックすると不機嫌そうな彼が姿を表した。血の臭いは消えていたからシャワーは浴びたんだろう。話があるのと言えば、無言で私を招き入れてくれた。黒いソファーに腰掛けたリボーンは私を睨み上げている。私に向けたことのないその顔を少し恐いと感じてしまったけれど、此処で怖じけづいたら駄目だと自分を奮い、拳を強く握りしめた。
「…リボーン」
真っ直ぐ彼を見つめる。その瞳に今私が映っていますか?…きっと他の女性が居るんだろう。私より綺麗で私より強くて私より賢くて…全てにおいて完璧な彼にピッタリの女性が映っているんだろう。それでも…それでも私のこの気持ちは変わらない。
「私…ずっとリボーンが大好きだから」
一度口から出た言葉は止まらない。
「リボーン以上に好きになる人なんて有り得ないの」
「私の想いは、五年前に出会った時から変わってないよ?」
何も言わずに見つめるだけの彼に、私は自分の最高の笑顔を見せた。
「例えリボーンが他の誰を好きだとしても…私は貴方を愛しています」
全て言い切り満足した私は、おじゃましましたと彼に背を向けた。涙は何故か出てこなかった。
「…行くな」
背中に温かさを感じ、足は自然と止まった。彼に後ろから抱きしめられていることに気付く。…どうして?どうして抱きしめられているの?
「…他の女の子に嫉妬されちゃう。離してよ…」
「離せと言われても離さねぇよ」
「なんで…」
私の身体を回転させ、私は彼と正面に向き合った。
「リボーンは私のこと嫌いなんでしょう?だったら…だったら抱きしめたりしないでよ!!」
「…フッ」
「…えっ?」
リボーンは突然笑い出した。…意味が分からない。私は大まじめなのに…面白いことなんて何処にもないはずなのに…。
「なまえ、今日は何日だ?」
「えっ、4月1日だけど…」
「じゃあ何の日だ?」
何の日…?誰かの誕生日でもないし記念日でもない。4月1日?んー………!まさか、
「…エイプリルフール!?」
「気付くの遅ぇよ」
じゃあ、今までの…嫌いって言ったのも別れようって言ったのも…全部…嘘?!
「…はぁぁぁ」
一安心して力が抜けた私は床に崩れるように座り込んだ。私と目線を合わせるようにしゃがんだリボーンを睨みつける。
「馬鹿!ドS!鬼畜野郎!!」
「悪かったって。そんな怒るなよ」
彼からは反省の色が全く見えない。それにムカついた私は、思ってもみないことを叫んでしまった。
「…リボーンなんて、大嫌い!!」
エイプリルフールのお返しだ。これぐらい言ったって別に良いだろう。でも、彼の顔はみるみる内に歪んでいく。
「…何て言った」
「大嫌いって言ったのよ!!他の所で浮気してやるんだから」
「…そうか」
突然顔を暗くしたリボーンに、どうしたのかなと首を傾げていると、突然私の身体は宙に浮いた。
「だったら身体に教えるまでだな。他の男の所へ行かないように」
なんでエイプリルフールなのに本気にしてるの?リボーンは顎で掛け時計を指し示した。見てみれば、夜中の12時を5分以上過ぎている。
「お前が大嫌いって叫んだ時はもう2日だったぞ」
「嘘でしょ…」
「もう嘘はつかねぇよ」
嘘つきになるからな、そう言って私をベッドへ下ろしたリボーンは逃げる隙を与えることなく覆いかぶさった。
「ま、待って!」
「待たねぇ。…嘘つきはお仕置きしねぇとな」
ニヤリと笑ったリボーンに私は嵌められたとしか思えない。パジャマのボタンを外す前に、彼は思い出したかのように言った。
「そうそう…俺がなまえを嫌いになるなんて有り得ない話だからな」
コツンとおでこをつけてきたリボーンは、珍しくも優しく笑った。
「俺はお前を愛してる。今までだって、これからだって、ずっと…」
「リボーン…」
目を閉じた私は、彼のキスを受け止めた。私も…この想いだけは死んでも変わらない…彼にそう伝わりますように、と。
(えっ…ボスも共犯なんですか!?)
(…ごめんねなまえ。リボーンにどうしてもって頼まれたんだ)
(余計なこと喋んじゃねぇ。襲うぞ?…なまえを)
(ちょっ…何で私が犠牲になるのさ?!)
(そういう運命だからだ)
(…意味分かんないんだけど)