小説
□その先は見えている
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ダン…ッ!!!
「ぐっ…!!っ!!!!???」
壁に叩きつけられたかと思ったら、いきなり口を塞がれた。
口で。
ヌルリとした感覚が俺の舌を襲って、口内で暴れる。
あまりの息苦しさに逃げようにも、地球最強の力によって首を壁に押さえつけられては、顔を背けるどころか、息さえままならない。
首を掴む腕を握り、もう片方の手で体を突き離そうと必死にもがくが、こいつはびくともしなかった。
顔はいつまでたっても離れてはくれない。
「……っ;」
気道と動脈を塞がれて、だんだんと身体は痺れてき、力を失っていく。
そして、とうとう腕を握る手が落ち、膝がガクリと折れて俺は壁伝いにその場に崩れ落ちていった。
そこでやっと、口と首は解放される。
危ない…意識を失う寸前だった。
「ハアッ!!ハァッ、ハァッ…!」
大きく息を整えながら、一体どういうつもりかと俺はそいつを見上げる。
「すみません…。」
目の前に立つ大きな影がぽつりとそう言った。
表情は暗くて分からなかったが、声は切ないものだった。
全くもって、わけがわからないが、とにかく俺は立とうと試みる。
だが、まだ己の身体は充分に力を戻してお
らず、手足は だらんと弛緩したままだった。
そこへ、影は覆い被さってくる。
「く…っ!!!;」
「ごめんなさい…」
「!!」
「僕…もう、止められないんです……!!」
「………。」
苦しみ、絞り出すような声。
近くでやっと見えた顔は今も泣き出しそうな表情で………。
「……悟…飯……」
抵抗出来ない俺は、そのままいいようににされるしかなかった……。
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