びーえる
□ツンツン頭の受難
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「上野君、誰か来たよ」
それは、ホントに何気ない始まりだった。
俺、上野佑哉(ウエノユウヤ)はその声に振り返り、あぁと返事をした。
それが、これから起こる受難の第一歩だなんて、予想もしなかった。
教室の中。丁度下校チャイムが鳴り、俺は机から潰れた鞄を取り出して、大して中身の無いソレを肩にかけた。
クラスメート達が一人また一人と帰っていく中、俺も帰ろうとして先程の“誰か”に捕まったのだった。
「やっほー、佑哉」
明るい声の方へ目を向ければ、そこに顔見知りの幼馴染みがいた。
「阿紀…」
瑠吹阿紀(ルスイアキ)。俺が小さい時から家が近所で、良く遊んでいた。今でも、クラスは違うが同じ学校に通っている。
「一緒に帰ろう?途中までさ」
「あぁ、いいぜ…」
俺は何の疑いもなく、阿紀に返事をして、教室を出た。
「あ、佑哉ゴメンっ!俺、ちょっと体育館にシューズ置いてきたみたいだ。取りに行って来るから待ってて」
「あ?あぁ、早くしろよ?」
「…うん!」
下駄箱の中を覗いていた阿紀は、自分の靴と部活用シューズを肩から下げて、俺に早口でそう言うと廊下に消えた。
「…上野君だよね?2−1の」
少しして、見知らぬ生徒が俺を呼んだ。