びーえる
□愛したい 愛せない
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「前にも言ったけど、俺はずっと…佑哉のモノが欲しかっただけだよ」
…学校の昼休み。食堂にやって来た俺、上野佑哉(ウエノユウヤ)の目の前で、幼馴染み、瑠吹阿紀(ルスイアキ)は楽しげに笑って言った。
俺が体育館で輪姦されたあの日から、数日が経っていた。いくら探しても見つからなかった阿紀が、突然食堂に現れるなんて予想もしなかった。
「…‥」
聞きたい事は山ほどあるし、この間の出来事も許した訳じゃない。本当なら、いくら幼馴染みでも殴り飛ばしたいところだが、さすがに他のヤツらに益々「2―1の問題児・上野佑哉」とレッテル貼られるだけだ。
「…阿紀」
「食堂なんだから、昼飯食べないの?用が無いなら、俺…行くよ?」
すっ…と横をすり抜け、阿紀は食堂の奥に消えていく。
「…ッ!?」
思わず身体が硬直して、その場に固まる。それもその筈、阿紀の片手が死角で見えないように、俺の尻を撫でていったからだ。
「…!」
振り返ると、可愛い表情の笑顔とは逆に、口元を妖しく動かす阿紀が、俺を一瞬だけ見つめて去った。
「…っの、野郎!」
俺はただ、何も出来ずにその方向を睨むしかなかった。
だが、この時の俺は…何も知らずにいた。