デンヒョウ
□rainyday
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どうやら俺のライチュウは雨が好きみたいだ。
この時期になるとこいつは窓際を一人占領し、毎日飽きずに眺めている。
今日もライチュウは外を眺めながら頬の電気を散らせていた。
とても嬉しそうだ。
散歩に行くか?と言ってみれば目を輝かせ千切れるんじゃないかと思うほど尻尾を振る。
仕方がないから散歩と表してクロガネまで歩く事にした。
勿論、ヒョウタに会いに行くためだ。
ピカチュウだった頃は一緒の傘に入ることも出来たのだがライチュウとなった今じゃどう頑張っても俺かこいつが濡れてしまう。
だからこいつ専用に黄色い傘を買ってやった。
今ではこいつのお気に入りになっているみたいだ。
クロガネにあるヒョウタの家に行ってみればやっぱりヒョウタはいた。
岩のエキスパートであり外仕事の多いヒョウタにとってみれば雨なんて嫌なんだろうなとか考えてみる。
早速呼鈴を鳴らせば「はーい」と、言う明るい声と共にパタパタと足音が近づいてきた。
「デンジさん!!いらっしゃい。今日はどうしたんですか?」
「散歩がてら寄った。」
「…行動範囲が恐ろしいです。」
「ああ、疲れた。でもこいつはまだ足りないみたいだがな。」
ライチュウは後ろの水溜まりを覗き込んで落ちてくる雨粒が成す波紋をじっと眺めている。
よく飽きずに見れるもんだ。
「ちょうど僕もズガイドスも暇していたところなんだ、良かったら上がってよ。」
言われるがまま中に入ればいつの間にか中に入っていたようでズガイドスがタオルでライチュウを拭いていた。
「わりいな。」
「いいんです。」
その光景を微笑ましく眺めているヒョウタの横顔にちょっとだけくぎ付けになっていた。
すると視線を戻すヒョウタと目が合いとっさに視線を反らす。
「雨の日に散歩なんていいですね。僕のズガイドスは雨が苦手だから。」
もう一度目を合わせればヒョウタはニコッと微笑んだ。
「今度ライチュウと散歩に行くか?…きっと雨が嫌になるぜ。」
rainyday
ヒョウタは俺の髪にそっと触れた。
20120617