デンヒョウ

□酔って、潰れて、キスをして
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「でぇ〜んじさぁん、僕ねぇ、化石がだぁいすきなんですよ?知ってましたぁ!?ねぇ、知ってましたぁ!?ウフフフぅ〜。」

俺の隣で酔い潰れたヒョウタが意味もなく笑いだした。

「…ったく、だから程々にしろって言ったのに。」
「…だからねデンジさぁん、化石って言うのは…ってぇ〜聞いてますぅ?」
「おー。」

やっぱり行かせなきゃ良かった。いくら仕事仲間とはいえ相手はヒョウタより歳上ばかりだ。
そりゃあたくさん飲まなくちゃいけなくなるよな。
きっと自分の意思で飲んだのではなく、回りに押されて飲んだのだと言うことは何となく分かる。
全く、俺には毒づいたりするくせに他の奴にはすごく優しくする。
そこが可愛くないんだよな。
とか考えているうちにヒョウタの家の前に来ていた。

「…で何億年も地下で眠り続けた。それが化石ですよ!!」
「ほら、着いたぜ。」
「ちょっとぉ〜聞いてましたかぁ!?」
「あぁ、聞いてた。」

嘘ついたからハリーセン飲ませなくちゃね、と絡んでくるヒョウタをよそに玄関の鍵を開けた。

「ほら、靴ぬ゛…っ…。」

最後の言葉を言う前にヒョウタがバランスを崩したらしく俺の方にに倒れてきた。勿論、そんなことを想定もしていなかった俺はどうすることも出来ず、一緒に倒れた。

「…っ痛、大丈夫か?」
「デンジさんが下になったので大丈夫でぇ〜す。」

倒れたと言うのに相変わらず酔いが覚めていない。

「ったく、ほら起きろって。」
「…。」

起きろ、と言っているのにも関わらずヒョウタは起き上がるどころか距離が近くなってきている。

「おい、」

そしてゼロ距離。
唇が重なった。
いつもなら俺からするのに今日はヒョウタから、しかも舌まで絡めてくる。
俺はそれにされるがままになっていた。
どちらともなく離れれば唇から唇へ糸が繋がり、そして切れた。

「デンジさん、シません?」

…誘われてる?
戸惑いながらもヒョウタの顔を見れば熱の隠った眼差しが返ってきた。
きっと奴はマジだ。

「今日はやけに積極的だな。」
「ふふ…。」

ヒョウタは俺の問いには答えず意味有り気に笑う。
きっと今は何をしても無理だ。
…いや、全力で止めようと思えば止めるかもしれない。
しかしそんなつもりはない。

「別に構わないが場所を変えないか?」
「うん。」

酒のせいなのか分からないが頬を真っ赤に染めたヒョウタが起き上がった俺に両手を差し出してきた。
それを引っ張りベッドまで誘導する。
やはり酔っているせいで足取りは覚束無い。
俺より筋肉質の体を支えるとヒョウタは俺の服をきゅっと掴んだ。

酔って、潰れて、キスをして


全く、可愛い奴め。


20120816

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