デンヒョウ

□ありふれた言葉だけど
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「ねぇ、僕らって付き合っているんだよね?」


僕の隣で寝転がる彼に何気なく質問してみた。


「は、何で今更…。」

「ちょっと聞いてみただけ。」


何でもない、とでも言うように言えばデンジさんは黙ってしまった。
確かに、彼の言い分はごもっともだ。毎回家に現れ、寄り添いながら一緒に過ごし、笑い、泣き、喧嘩もし、たまに体を重ねる。こんな関係は恋人だから成し得ることだろう、いや最早夫婦レベルだろうか。なのに僕はまだ足りないと思ってしまうのだ。
きっとその理由を彼に言ってしまえば楽になるのかもしれないけどあえて言わない僕も僕だと思う。
だって、気づいてほしいじゃない?

すると、デンジさんはふとこっちを向き距離を詰めてきた。


「デンジさん、僕疲れたんで今日はシませんよ。」

「俺はそこまでがっついてねーよ。」


とは口で言っているものの、早速腰に巻き付いてきた。


「嘘ばっかり。」

「なぁ。」

「ん?」

「…好きだぜ、ヒョウタ。」

「!?…今更何?」


最近、あまり顔に出さないようにしていた筈なのに低く囁く声に反応し顔が一気に熱くなった。


「お前がそう言わせたんだろ?全く、我が儘な姫様だな。」


顔を真っ赤に染めている僕とは対照的に澄ました顔で笑っている。なんだかとても苛々します。


「あなたに言われたくないです…!」

「そうか。」


デンジさんは何でもないとでも言うようにさらっと受け流し、頭を擦り寄せてきた。


「シませんよ、」


と言ったが彼の手はゆっくりと動き出しタンクトップの裾から脇腹を撫で上げてきた。


「その気なくせに。」

「…デンジさんが、ね。」

「分かってんじゃねーか。」


いつの間に仰向けになったのか知らないが僕の数センチ前には彼の顔があった。


「仕方ないですね。1回だけですよ。」


飽きれながら言えば耳元で好きだ、と酷く落ち着いた声で囁かれた。



ありふれた言葉だけど



止めてよ、そんなことを毎回言われたら何でも許してしまいそうだ。

20121104

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