ダイミク
□本と辞典だけの幸せ
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「僕ももう少し身長が高かったらな良かったのに。」
ぽつりと呟いていた。アームチェアに座りぐらぐらと揺らす様は子供のようで先程の言葉のことも考えていると何だか笑えてくる。
「ふふ…どうして欲しいんですか?」
「ちょっと、僕を子供みたいだって思ったでしょ!?」
私の考えていることはお見透しのようだ。しかしそんなことで向きになるのは実に彼らしい。
「そんなことないです。…で、どうしてですか?」
「うん、ちょっと立ってみてよ。」
「?」
立て、と言われたため何も考えずに立ったが肝心の彼はと言えば何やら本棚を漁りあーでもないこうでもない、と呟いていた。
そして、
「こんな感じかな?」
取り出したのは分厚い石の辞典とこれまた石の本。
「あの、ダイゴ?それは…?」
「ミクリ、動かないで。」
と言って私のすぐ前にそれらを積み重ね、履いていた靴を脱いだ。その時点で何となく察しが付いた。乗るんですね。
本に乗ったのを見計らって視線を戻せば私を見下げるように立つダイゴがいた。
「…なるほど、こう言うことですか。」
なんて言っていたらいつの間にか彼の腕のなかに収まっていた。何時もは私の腕のなかにいる彼が今日は私を腕に収めている。何だか不思議な感じだ。
「うん、たまにはこんなのもいいでしょ?」
「…まぁ。」
「ダイゴはダイゴだ〜とかそんな慰めは無用だよ。」
「まだ何も話していないでしょう?」
「でも言おうとしただろう。」
「…さぁ、どうでしょう。」
本と辞典だけの幸せ
そんな些細なことで喜ぶ彼がとても可愛らしく見えた。
そんなことをしなくても私はいくらでも貴方の胸に収まってあげるのに。
20121113