その他

□彼だけが知っている
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「マツバさん!?」

「やあヒョウタくん。寒くなかったかい?」

「だ、大丈夫です。」

「寒いと思って、暖かいお茶とお菓子を用意しておいたんだ。上がってよ。」

「お邪魔します。」


こうして僕は彼を驚かすことなくお邪魔することになった。

久し振りに連絡なしにエンジュまでやって来たのだが彼は前のように家の前に立ち、出迎えてくれた。突然会いたくなったからドッキリにのつもりでやって来たのに逆に僕が仕掛けられたようだ。やはりこれこそが彼の持つ千里眼の能力なのだろうか?と考えつつ曇った眼鏡越しに彼の背を追った。



「すみません、いきなり来てしまって。」


なんて口では申し訳なく言っているものの悴んだ手は遠慮なしに湯気の立つ湯飲みに動いていく。


「気にしないで。僕だって君に会いたかったんだ。…君と同じく、ね。」

「!?」


やっぱり全て見透かされていたようだ。なんだか凄く恥ずかしい。


「…君は寂しくなると連絡しなくなるよね。」

「それはどういう…?」

「ん?その通りさ。」


彼はニコリと笑うとそれ以上続きを話さなかった。ただ、寒いね。と呟くのみ。
その代わり炬燵の下で長い足を僕の足へくっ付けて離されなかった。



見透かしているのは何?



千里眼?それとも貴方自身?

20121209

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