R18

□夏のせい
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    ◇

 家のインターホンが静かな家に鳴り響く。ちょうどこれから機械の微調整に入ろうとしていたデンジはため息交じりに手に持っていたレンチを机へ下ろしノロノロと玄関へと向かった。家での時間というのはデンジにとって大事なものであってあまり邪魔をされたくないものだったが、気づいてしまったものを無視するのも気分が悪かったのだ。変な売込みだったら即ドアを閉めてやろう、と思いながら扉をゆっくり開けるとそこには見知った顔が一人。何も持たず息を切らして立っていた。

「……ヒョウタ?」

 しかし、ヒョウタと呼ばれる彼は声を出さない。確か今日は家に来るなんて連絡は入っていなかったはずだ。とはいえいきなり家にやってくることなんてないわけではないのでやはりアポなしでサプライズだろうか?そのわりに何も持っていないというのが不自然だ。
 それに見た感じズガイドスは置いてきたようだった。いつも遊びにくるときは必ずと言っていいほど彼がヒョウタの後ろをノコノコ歩いてくるのだ。これは明らかにおかしい。
 どうしたんだ?――そう口を開こうとしたらそれは声にはならず目の前に立っていたヒョウタによって塞がれていた。

「……ッん。ぁ……ッ……」

 濡れる唇から伸びてくる舌がデンジの舌を捉えると足りない、とせがむ子供のように何度も舌を絡めてくる。情熱的な口づけにデンジも最初は戸惑ったが、ヒョウタの熱い息づかいに当てられ満更でもなくなっていた。
 それにしても、何故ヒョウタはこんなことをしてきたのだろうか?何に対しても抜かりなく隙のない彼は表でデンジとこんなことをすることは全くないのだ。しっかり外と中のメリハリがついていて、むしろそこら辺が適当なデンジがいつも怒られていたはずだったのだが。…やはり何かが変だ。
 ヒョウタの気が済んだのか絡んだ舌が動きを止め、ヒョウタの顔が離れていく。口の端を唾液が伝うのを感じたが今はそれを拭う余裕はなかった。

「…………」

 目線はずっと足元を見つめ黙ったままのヒョウタの肩を抱き返答を待ったがヒョウタは返事をする素振りを見せない。そういえばここが玄関先だったことに今更気づき、中へ強引に引き込んだ。暗いから誰も見てないだろう…なんて勝手に解釈して。…その時も彼には力が無かったが。



 引き込んだのは良かったが今度は急にヒョウタの手がデンジの袖を掴み流れのまま床へと投げたのだ。
 突然襲われる背中の痛みに無意識のうちに舌打ちをして、ヒョウタへ反論を試みようとしたがその前にヒョウタが起き上がろうとするデンジの足元へと腰を据え中途半端に広げていた股間へと顔を埋める。お、おい……!と怒ることも忘れてヒョウタを剥がそうとするも、何せ彼の方が力は上なので手首を捕まれてしまえば抵抗などできるわけもない。
されるままにジーンズの前を寛げられると、トランクスの上から舌先で緩くつつくとデンジの口から言葉にならない声が漏れた。

「っ……おい、ヒョウ、タ……やめ、ッ……!」

 そのまま舌はトランクスの縁を捉え、歯で慎重に下ろしていく。中の物が出てくる頃には前の方はヒョウタの涎とデンジのカウパー液でベタベタに汚れていた。トランクスから取り出されたペニスは弾みでヒョウタの顔を勢いよく跳ねる。
 トランクスを下ろす間にヒョウタの口によって緩く刺激を受けていたデンジのペニスは案の定上を向いていた。まだ夕方ということもあり、風呂に入っていなかったのでデンジの物は汗や排泄の臭いが残っていたがヒョウタはお構いなしに、それにすら欲情する素振りを見せ、パッかりと口を開いて喉の奥まで飲み込んだ。

「……おいヒョウタッ馬鹿ッ……ぁ……」

 剥がそうと試みてもやはりマウントを陣取っている筋肉に勝てる筈もなく、デンジはヒョウタに捕らわれたまま快感の行き場もなくただヒョウタの舌で悶えていた。
 それを尻目にヒョウタは上半身を使い、口でピストン運動を始める。次第にカウパーの量が増え、じゅるじゅると粘性の音がたつ。それと同じくしてデンジの口から甘い息づかいが聞こえ、ヒョウタの中心がひっそりと熱を持ち始めていた。切なく震える後ろを誤魔化すようにスリスリと内腿をすり合わせるがデンジにはヒョウタの高く掲げた臀部がゆらゆらと誘惑するように揺れているようにしか見えない為、性欲を助長させる要素でしかなかった。

「……ッヒョウタ、口、離せ……出るッ!」

 しかしヒョウタは動きを止めない。寧ろ、最後のスパートと言わんばかりに上下の運動を激しくする。引かない快楽の波はあれよあれよと高ぶり受け止めきれない刺激が行き場をなくしてデンジの背中が大きく仰け反った。
 デンジの欲を受け止めたヒョウタは掴んでいた両手首を離し、口の端からこぼれる精液を掬い、残らず口内へ入れてやる。すべて飲み込もうと喉奥に落とし込み、彼は物足りない顔でデンジを見つめる。

「おい、…吐き出せ…。汚い、だろ…」

 体はだるくて動けなかったがさっき自由になった手を動かしヒョウタの口へ持っていく。口に突っ込めば吐き出すのではないか、働かない頭でゆっくりと手をやるとヒョウタは口でパクリと指先を挟み、舌で器用に嘗め回した。関節の皺、指の輪郭を周り、爪の間。熱の籠った視線を送られ、萎えたペニスがまた反応し始めそうな気がしてデンジはとっさに手を引っ込めようとしたがヒョウタはそれを許さない。一瞬、口を休めたかに思えたが、熱に浮かされた赤茶の瞳は挑発的な視線をおくった。それはどこかで…いや、いつかのバトルで見た強気で情熱的で挑発的な視線と同じだった。
ーーープチン。
 どこかで抑えていた欲望が押し寄せてくるのをデンジは感じた。


「…途中で止めてもらえるなんて思うなよ。」



20190827

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