デンヒョウ

□好きだなんて言わない
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「好きなんじゃないの?」


楽しそうに口角を上に上げて話すナタネちゃん。
内容が内容だけに僕はいつも以上に慌てていた。
僕がデンジさんの事好きだって!?


「な訳ないじゃん!!なんで…」


そうだ。
デンジさんが好きなわけない。
会う度色々なことで弄ってきて、僕が反発すればそれをニヤニヤしながら眺めている。
あんな質の悪い人間のどこがいいと言うのだろうか。


「全く、素直に認めれば良いのにねえ。」

「だから、違うんだっ…」

「あ、デンジ。」

「え!?」


いきなり言うものだから反射的に動揺しただけだからね!?
なんて思っても自分には分かる。
どんなに屁理屈を並べても自分は誤魔化せない事が。


「よぉ、どーしたんだ?ヒョウタ顔真っ赤だぜ?」

「いや、あの…」

「どうした?言ってみろよ。」


デンジさんの口角が少し上がった。
きっと彼は原因を知っている。
知ってて言わせようと企んでいるに違いなかった。
そう思うとなんだか腹立つ。


「…バカ!!」

「痛!!ちょ、おい!!…クソ…。」


どうすることも出来ないから、取り合えず回し蹴りをお見舞いしてあげた。
後方で痛みに苦しむ声が聞こえたけどそんなの知らない。絶対に言わないんだから。



好きだなんて言わない



「全く、似た者同士なんだから…。」

ナタネちゃんの溜め息が聞こえた。

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