デンヒョウ

□機械音痴と俺の日常
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「ただいま。」


玄関が開いたと同時に今まで待っていた奴の声が聞こえた。
この手が空いていれば「おかえり。」とでも言って抱きつきたかったがどうも無理そうだ。
仕方がないから正面に目をやりながら「ん。」とだけ言っておいた。


「どう、直った?」


足音が寄ってきたかと思えば後ろで心配そうに眺めている。


「もう少しだ。」

「ごめんね…壊すつもりはなったんだけど…。」


帰ってきて早々、ヒョウタのテンションは下降を辿っている。
それは紛れもなく目の前の電子レンジのせいだろう。
ヒョウタは重度の機械音痴だ。
こないだもコンポを一つ壊したばかりだった。
まあ、それも俺が直したけど。
一体、どうやったら壊れるのか?こんなことを言ったらきっと怒られるだろうが一種の才能のようにも思える。


「…出来た。」

「ありがとうございます!!」


ずっと後ろで心配そうに見ていたヒョウタは急に笑顔になった。


「もう壊すんじゃねーぞ。」

「はい!!」


嬉しそうに笑うこいつを見てると少し悪くないと思う俺は多分、重症だ。


「腹減った。」

「分かりました、ご飯持ってくるので待っていてください。」


上機嫌にキッチンへかけていくヒョウタを見送り、大きく欠伸をかいた。


「うわっ!」


ヒョウタの声だ。
それと同時に変な音がした気がするがきっと気のせいだろう。


「…デンジさん?」

「……何だ?」

「炊飯器から…煙が出てきました。」

「……それは普通じゃないのか?」

「…黒い、煙です。」

「…。」



もう触んな



俺は目頭を押さえた。
もう、嫌だ。

20121027

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