短編

□それは恋の真似事
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「好きよ」

それは本心なのか、疑えるくらいに綺麗な笑顔で紡がれた言葉だ。

「僕も好きだよ」

きっと彼女は僕と同じように思っている。本心なのか、と。
お互いの認識なんてそんなもんだ。

「愛してる」

そっと頬に触れ、キスをする。
やわやわと、深く。
お互い求めるものをその度に与え、満足する。
そうやって僕らはバランスを保ち、生きてきた。
依存、とはまた違う。恋人、これも違うだろう。
だからと言って、友達なんて軽い関係でもない。

「ふふ、くすぐったいわ」

彼女は首もとにある僕の頭をふわりと撫で、笑みを浮かべる。
感情が読み取れない程の、綺麗で完璧な笑みを。

「好きだ、愛してる」
「私もよ」

愛してるわ。
囁かれる言葉に意味はない。
薄っぺらい白い紙のように、すぐ破けてしまう。
わかりながらも求める自分に呆れてしまうほど、彼
女の紡ぐ言葉は綺麗なのだ。
必要なくなればお互い、
まるで何事もなかったかのように赤の他人に戻る。

「ん…」

こんなに美しい彼女を手放すのは惜しい。
でも、そう。必要なくなれば、

「どうしたの?」

崩れることのない笑み。
独占欲、そう言われるとそうかもしれない。
手放すの事に、少なからず抵抗心を抱いているのだから。

「何でもないよ」

引き寄せ、キスをする。
まるで恋人のように、頬を撫で首筋へ、肩、腰。
抵抗はしない。求めているから。彼女が僕を。
拒むことはない。欲しいから、愛が。好きが。欲しいから。

「貴方の手、いつもあったかいわ」
「君が冷たいんだよ」

指を絡め、自然と横になる。もっと、ずっと、何度も、
言うように休むこともなく深い深いキスと、

「焦らすなんて嫌よ?」
「わかってる」

お互い欲求を満たし、干渉はしない。
キスやそれ以上、以外のことも、するのだ。

表向きは恋人。そして裏は、


それは真似事
(艶めかしく、絡み合って、深く、)





企画提出⇔同工異曲
色々考えたのですが結果ここに落ち着きました。
男女のこういった絡み合いが好きです。
ふへふへ。ありがとうございました。


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