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□意地っ張りな君が好き
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どんなに辛い事があったって、彼女が弱音を吐いているところを見た事はありません。


いつでも凛として、前だけを視ている。


そんな姿が偶に、僕の目には淋しく映る時があります…。




今日もまた然り。




「…愛子、何かあったです?」


「なんにも…」


さっきから、ずっと無言の儘、僕のベッドの上でゴロゴロしている愛子に尋ねても返ってくる言葉は案の定。


まあ、いつもそうですけど…。


『女には色々あるのよ』


僕の受け答えに面倒臭くなると愛子が決まっていつも言う台詞。


そう言われると、僕には何も言えません…。


僕は、男ですし、愛子みたいに雇われの会社勤めでも無いですし、社会人としての付き合いも無いですし、女同士の派閥とやらも経験した事も無い…。


愛子の悩みや怨みや妬み、それらを僕にはどうする事も出来ないのかと思うと、





偶に、僕は愛子にとって何なのか、と不安になる時があります。


問題が起こっても自分の中で決着を着けようとする愛子。


愚痴を零す訳でも無く一人、溜め息ばかり吐いている愛子。


僕には何も語らずとも、こうして僕のマンションに来てくれている事自体、辛い時に会いたいのは恋人であるこの僕なのだと、勝手に解釈してしまってるですけど……そう思っていいですよね?







偶には、僕の胸に甘えて欲しい、です。







「愛子…起きて下さい」


ベッドに横たわる愛子の傍にずりっと近付いて、怠そうに体を起こす愛子に僕は両腕を広げて言いました。



「…おいで」



「…え…」




それは、いつも僕が漫画を描くのに疲れた時に、愛子がしてくれる事。


「…偶には、いいじゃないですか///」


僕が顔を赤らめて言うと、愛子は、今にも泣きそうな顔で切なく微笑み、



トン、と僕の胸に顔をうずめてきました。


瞬間、愛子の柔らかな髪と、良い香りが微かに僕の鼻を擽りました。


僕は、そっと愛子の背中に腕を回して、絹のような髪を優しく撫でてあげました。


すん、と鼻をすする音が聞こえ、泣いていると気付きましたけど、僕は何も言わず、ただただ僕の胸の中で小さくうずくまり身を委ねる愛子が愛おしくて堪りませんでした。





それだけの事なのに、僕は愛子を抱き締める事が出来ると云う幸福に改めて、彼女を心底、愛しているのだと実感しました。





偶には、こういうのも悪く無いです///





彼女の気が済んだら、


もう頑張らなくてもいいんだと、


今の愛子の儘でいいんだと、


気休めにしかならないかもしれない、僕のありったけの想いを込めて。




意地っ張りな、君が好き───






─END─


2012・6・29

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