short@
□ホームメード・ディッシュ
1ページ/4ページ
私達、付き合ってるんだよね?
付き合い始めてまだ一週間の出来立てほやほやのカップルだけどさ、
私の記憶が誤作動を起こしていないなら、確かそうだった筈。
それなのに、今の目の前の光景は、何?─────
「佐藤さん好きですよ」
「本当ですかぁっ///嬉しいですっ」
今日も漫画に勤しむ彼に差し入れをと思い、いつも通り、呼び鈴も鳴らさず仕事部屋に直行すると、目の前には彼のアシスタントである女の子の佐藤さん、と、エイジが二人仲良さそうにクッキーを頬張っている。
「おおっ!愛子も来てたですかっ!愛子もどうです?佐藤さんの手作りクッキーとってもデリシャスですよっ!」
「こんにちはっ」
クッキーを満面の笑顔で私に薦めるエイジの傍らには、少し、したり顔な笑顔で挨拶をしてくる佐藤さん…。と、手作りクッキー…。
私の手には、買ってきた市販のワッフル…。
「およ?愛子も何か持って来てくれたです?」
手に提げていたワッフルの袋に目ざとく反応を示したエイジが楽しそうに尋ねてくる。
「あ、駅前で買って来たワッフル…甘い物、被っちゃったね」
にしても二人の距離、少し近過ぎやしないかい?
「僕あそこのワッフル大好きですっ!どーもでぇす///」
私は、エイジにワッフルの袋を渡しながら、さり気に先程聞いてしまった爆弾発言の内容を尋ねてみた。
「…さっき、すごい楽しそうだったけど、何の話してたのかなぁ…?」
…無理に笑顔を繕うも少し口調が強めになってしまった。一体どこがさり気なくなんだか…。
さっき?、とエイジが首を傾げて暫くした後、ああっ!と思い出したようにクッキーで一杯の口を開いて、もごもごと答えてくれた。
「佐藤さんが、私の事好きか嫌いかで言ったらどっちですか?って訊いてきたですから好きと答えただけですよ?佐藤さんは優しいですし!仕事も出来ますし助かってるです」
「にっ新妻先生っυ///」
なんでそれを今言っちゃうんですかっと書いてあるような罰の悪そうな顔をして佐藤さんは俯いている…。
この人、エイジの事好きなんだ…。いや、前々からそんな気はしてたけどさ。
恐らく私がエイジと知り合う前から好きだったのかもしれないな…。
部屋が隣同士だと言うだけで、差し入れをしたり世話をやいたり、エイジと交流しているうちに、いつの間にか恋人になっていた私の事、疎ましく思っていても仕方無いよね。
私が彼女の立場だったら、やっぱり厭、だもの────
「…愛子、どしたです?」
無言で俯く私に心配してかエイジが私の顔を覗き込んでいる。
「ううん、何でも無い、仕事頑張ってね。エイジも佐藤さんも!」
私は、無理矢理、笑顔を作って仕事部屋からパタパタと出て行った。
「…なんか、怒ってませんでした?υ」
「はい?どうしてです?」
「もー新妻先生、鈍すぎですυ」
私が出て行った後の仕事部屋で二人がそんな会話をしているとも知らず、私はモヤモヤした気持ちを抱えながら部屋へと戻り、頭まで布団をすっぽり被って、その儘眠りに就いた。
→