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□恋愛連鎖
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───熱し易く冷め易い───
自分の性格は誰よりも私が一番よく理解している。
だから、燃え盛るような業火の如く激しい恋に堕ちても
こうも逢えない日が続くと、やがては下火になって消えていくかもしれないって
あなた、解っているの?
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時刻は午前2時を回った頃。
草木も眠る丑三つ時なんて云われる時刻。
だけどそんなの嘘っぱち。
東京に夜なんて無い。
どんなに闇夜が空を覆い尽くそうとも、地上の人工的な灯りによって暗闇も喰らい尽くされてしまう。
だけど、私の闇までは、喰らい尽くしては、くれないみたい。
今日も鳴らない携帯を横目で睨みつけながら、私は眠らない東京の街と共に朝を迎えるのだ。
「こんな状態で、付き合ってるなんてどうして言えるの」
私の溜め息も虚しく消えていく。
私の恋人は、今を駆ける人気漫画家。
一般人と違う生活は多忙極まりないなんて承知のうえでの付き合いだった、筈なのに。
偶に気紛れのようにメールや電話を寄越すくらいで、もう1ヶ月は会っていない…。
会いたい────
髪を撫でて、
その細い指で唇をなぞって、
優しく微笑みかけて欲しい…。
そうしたら私も
あなたの髪に触れて、
ぎゅうって、抱き締めてあげたいのに、
言葉なんて要らないから、
ただただ、あなたの存在を、空気では無く、直に確かめさせて────
───その時、携帯が一番欲しい人の声を運んで震えているのに気付く。
待ち侘びていたと思われないように、少し焦らして電話に出れば、電話の向こうでは、いつものあどけない声がする。
無神経。人の気も知らないで。
「…今、何時だと思ってるのよ」
私、天の邪鬼。
───会いたいです───
…先に言われてしまったその言葉が冷めきった心に、ぽっと火をつける。
ああ、まただ。
まるで私の心変わりを許さないかのような、絶妙なタイミングで寄越される彼の連絡に、偶に策略を感じるも、
下火が、勢いを増していくのは時間の問題。
そしてまた逢えない日が続いては、眠れない夜が訪れる。
堂々巡りな関係は、いつまでも、いつまでも
私が厭きるか、
あなたが厭きるか…
そうでも無い限り、ずっと続いていくの、連鎖のように─────
→あとがき