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□穏やかな光
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「ただいまぁ〜…」
ふぅっと息をついて私は、ドサッと両手一杯の買い物袋を玄関のマットの上に置いた。
前屈みになると大きなお腹が圧迫され息苦しい。
ガチャンッ
仕事部屋の扉が開き、続けてドタドタと騒々しい足音が近付いてきた。
「お帰りなさいですーっ!」
大丈夫でしたっ!?、えらくないですっ!?、…エイジは私が出掛け先から帰ってくる度に、私の身体を気遣う。
まあそれは…、
「大丈夫だっていつも言ってるじゃない、妊婦は買い物くらいの軽い運動も必要なんだよ?」
そりゃそーですけど…、呟きながら私のお腹を優しくさするエイジ。
優しい表情。その顔は既に父親の顔。
…そうなのだ。今、私のお腹の中には大好きなエイジの赤ちゃんがいる。
臨月に入ってからエイジは毎日ずっとこの調子。
大事にされてるって嬉しいんだけどね///
「エイジ、買い物冷蔵庫に仕舞わなきゃ。アイス溶けちゃうよ?」
「おおっ!そうだったです!僕が運ぶです」
食材やエイジのおやつが入った重たい買い物袋を両手に提げてスタスタと歩くエイジの後ろをついて廊下を歩く。
エイジの背中を見詰めながら私は、ふっと笑みが零れた。
いつの間にこんな頼もしい背中になったんだろ…。
付き合い出した頃は、甘えん坊で、意固地なところもあって、ゴーマイウェイみたいだったエイジが…
今では妻である私の事を一番に考えてくれる良き旦那様になっているなんて…。
じぃんと感慨に浸りながら私はキッチンに向かい、エイジにお礼を言って買い物袋を受け取り小さなテーブルにドサッと置いて食材を取り出していた。
「…愛子、そう言えば名前どうするです?」
買い物袋からガサガサとアイスを出しながらエイジが話し掛けてきた。
「あっ!もうアイス勝手に開けて…っ、て、名前?赤ちゃんの?」
「はいです。もう1ヶ月しか無いですよ?」
とりあえず産まれてくる子供は女の子だと判っていたので、女の子の名前を考えてはいたのだが、こればかりは産まれた赤ちゃんの顔を見ない事には決められないものがあった。
「だってねぇ…考えてた名前が顔とイメージ合わなかったらダメだし…」
「そうですね、名前はすごく大事です」
爽やかな水色をしたソーダ味の棒付きアイスを早速、口に含みながらエイジが口を開いた。
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