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□愛のカタチ
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「香水変えたです?」
情事後、たゆたうシーツの上で二人寝そべっていると、行為後特有のゆるりと流れる空気を割くようにエイジが口を開いた。
「うん、季節も秋に変わるから香りも変えようかなぁと思って」
ごろんと右隣に横たわるエイジに体を向け、そう応じると、エイジの何やら憂いた表情が私の視界に飛び込んできた。
「季節の変わり目…ですね。そう言えば愛子、夏になる時も髪型変えてたですね」
エイジは私と目を合わせず天井を仰ぎ見た儘、呟くように言葉を紡ぐ。
その表情は虚ろで、半開きの目は遠く、私はエイジの考えている事がすぐにわかった。
また何か根拠の無い事に不安を感じている───
「…うん、やっぱ季節変わると心機一転で頑張りたいじゃない?それがどうかした?」
エイジの遠回しな発言に私も、わざと素っ気なく答える。
私に何か変化がある度にエイジは鋭く突っ込んでくる。
前髪を少しだけ切ったり、いつもと違うファッションをしたり、ネイルを変えただけでもすぐに気付かれてしまう。
それだけ私を見てくれていると言う証なんだろうけれど。
「…別にどうもしないです」
ぷいと吐き捨て、私に背中を向けて裸の肌を隠すように布団を頭まですっぽりと被るエイジ。
「…どうしたの?エイジ」
『どうしたの』だって。
わかっているくせに。わざと気付かない振り。
私、少し意地悪。
「言ったら愛子怒るです。だから言わないです」
・・・うん、それもう、ほぼ90%は言っちゃってるようなもんだよ。
エイジの不器用な想いに私は苦笑して、布団の中から少しだけ覗く淡い色の髪をそっと撫でた。
「…怒んないから、ちゃんと言って?…エイジのそれが私にとって愛されてるって証拠になるの」
私の言葉にエイジは、布団から顔を出してチラリと肩越しに、こちらへ視線を送り、寝返りを打った。
衣擦れの音と共に、風圧がふわりと私の顔に当たる。エイジの香りが私の嗅覚を擽る。
香水も何もつけていないエイジの香り。男の、匂い。
「……愛子に些細な変化がある度に、僕は怖いです……」
やっぱり。
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