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□好きすぎて
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雄「うん。確かに受け取ったよ」
仕上がった原稿を担当の雄二郎さんに預け、ほっと胸をなで下ろし帰宅の支度にとりかかる。
雄「…と、愛子ちゃん、だっけ?どう?新妻くんのアシスタントはもう慣れた?」
急に雄二郎さんに声をかけられて一瞬驚いたものの状況をすぐに理解し私はとりあえず質問に答えた。
「あ、はいっ!まだ三週間ですけど…少しは慣れてきました。あぁ〜っΣと言ってもまだまだ未熟者でみなさんにも新妻先生にも迷惑かけてますがυ」
雄「はは。まあ愛子ちゃんはアシスタントの経験も長いし、あとはこの環境に慣れるだけだよ。今から帰るの?よかったらこのあと一緒に食事でも…」
新「雄二郎さん、そういえばこないだ話してたネームなんですけど、やっぱり少し訂正したいんですけどいいです?」
さっきまで黙々と次の原稿を描いていた新妻先生が急に雄二郎さんの言葉を遮るように話しかけてきた。
雄「…え?あぁ…どこの部分かな」
新「…今度でいいです。お疲れ様でした」
なにやら若干、不機嫌そうな新妻先生に違和感を感じる。
雄「あ、あぁ、じゃあまたあとで連絡するよ。それじゃ」
雄二郎さんも新妻先生になにやら威圧感を感じたのか少し慌てながら部屋を出ていった。
玄関の扉が閉まるのを音で確認し、私も帰ろうとバッグを肩にかけた。
「あの…じゃあ私も失礼します。お疲れ様でした」
新「………」
あれ?聞こえなかったのかな…。
新妻先生は無言でこちらに背中を向けたままだ。
いつもなら、振り向いてあどけない笑顔でお疲れ様でーす!なんて言って見送ってくれるのに。
「お疲れ様でした」
私はもう一度、挨拶をして帰ろうとした。
その時……
新「……今度、時間ができたら一緒にお食事に行きませんか」
いつもの奇声を発する新妻先生の声とは違った落ち着いたトーンの声が私の耳を、心臓をくすぶった。
「…え?…」
新妻先生のほうに目をむけると、ゆっくりと新妻先生は私のほうに振り向きながら、
新「…雄二郎さんじゃなくて、僕と行ってほしいです」
まっすぐと私の目を見て話す新妻先生の顔はほんのり赤く染まっていた。
その瞬間、それまで意識すらしていなかった懐かしい感情がふつふつと私の中に込み上げてきた。
新「……雄二郎さんのほうがいいですか…」
落胆した様子で肩を落とす新妻先生をみて私は思わず声をあげてしまった。
「いえっ!新妻先生と行きたいですっ!!///」
……………。
驚いた表情でこちらを向いた新妻先生の表情が段々といつもの剽軽な顔に変わる。
新「本当ですかっ!嬉しいですっ!よかったですっ!///」
私は自分の口からついて出た言葉に多少驚きながらも顔がみるみるうちに熱を帯びてくるのを感じていた。
この懐かしくも甘酸っぱい感情が何なのか
この時、二人は
その感情をお互いに理解していた。
それはずっと後にわかる話。
好きすぎて
新(雄二郎さんに勝ったです(ニヤリ))
(…もしかして新妻先生、さっき嫉妬してたのかな?///意外…///)クスクス
新(愛子さんは僕だけのものです)
→あとがき