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□繋いだ約束
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「幸せになりたい…」


夜も更け、寝支度も整えまさに今からベッドに入り二人だけの時間が始まろうとしていた時に愛子が呟く。


「……それは僕と一緒にいるのが幸せじゃない、というふうにも聞こえるです」


僕は先にベッドに入っていた愛子の隣に横たわりながら少しいじけた返事をした。


すると愛子がこちらへ寝返りを打ちながら、そうじゃないよ、と微笑みながら僕を見る。


物憂げな表情がたまらなく色っぽいです。


「…エイジとの今が幸せすぎて怖いの。この幸せがいつか無くなっちゃったらって……そう考えてると怖くなるの。だから、そんなの考えなくてもいいくらい本当の意味で『幸せになりたい』ってこと…」


愛子は時々、こんな事ばかり言って僕を困らせます。どうして僕の愛を信じてくれないんでしょうか。


「この幸せが無くなるわけないです。もし無くなるとしたらそれは愛子が僕に飽きた時です。僕が愛子に何の感情も抱かなくなるなんて事は絶対有り得ませんから」


愛子は、にっこりとして僕を見つめてくるだけ────


「そんな事ばかり言われたら僕が不安になっちゃいます。愛子は…いつか僕から離れてしまうつもりです?だからそんな事考えるです?」


すると愛子は少しムッとしながら、そんな事ないよっ、と言い返してきた。


「ほら、僕も今の愛子と同じです。愛子がそんな事ばかり言うから僕もムッとしちゃいます」


ごめん、と小さく呟く愛子。


僕は愛子の手をそっと握り


「この手を一生離すつもりはありません。一生です。この意味わかってくれますか?」


恐らく愛子が今一番欲しいであろう言葉を僕は知っています。


瞬間、愛子の瞳が大きく揺れ


「…うん…///…ありがとぉ…」


そう言うとゆっくりと愛子の瞼はおりていきました。


僕は手を繋いだまま彼女にそっとキスをして、もう少し待っていて下さい…、そう呟いて眠りにつきました──────






僕が愛子を確実に幸せにできるまで。愛子が僕と同じ名字になる、その日まで。




もう少しだけ、待っていて下さい─────



─END─

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