異世界少女と不器用男子

□サッカーで想い出作り
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「えーと…どうしてこんな事になってるのかな!?」
「お前が想い出作りたいって言ったから」
「正論ではあるんですが、何故あんたら+αの技覚えなきゃいけないの!?」

なぜこんな事になってるのか…
それは数分前に溯る




「想い出?」
「そ…想い出。作っときたいんだ。この世界で」
「なるほどな…」

あれから、看護士達に見つからない様に病院を抜け出し、麗奈の家を訪れていた
彼女の家には現在木葉がいるはずなのだが、今は何処かに出かけているようで不在だった
でも此処に来ることが分かっていたのかポストの中には家の鍵が入っていた
麗奈が言うには園では週刊だったそうだ
鍵を毎回忘れて家に入れない馬鹿が数人いたからとの事だ
その中にきっと木葉も含まれているのだろう
麗奈は家に入るなりキッチンで紅茶を入れる準備をした
始めは豪炎寺がやると言っていたのだが自分の家だからと聞かなかった
そうして皆がくつろいでいる時に唐突に話を切り出したのだ
そして回想初めに戻る

「私はおそらく記憶が戻ったら元の世界に返されるんだと思う。もともとここに来た理由は華音を改善させることだったから」

神宮寺華音。もとは麗奈と同じ世界で生きていたが、突然イナズマの世界にトリップし好き放題やっていた女
こうして狂ってしまったのは、元の世界で酷い虐めを受けて心が壊れてしまっていたから
それを助けたのは同じ思いをしていた麗奈だった
今では改善し、めでたく好きだった吹雪士郎と付き合っている
そもそも麗奈がこうして怪我を負い、入院しているのは華音を助けるためだった
彼女は自分の友達や大切な家族、信頼している仲間を貶され罵られると感情が高ぶり、無茶をしてしまう
今回もそうだったのだ

「…そういえば華音はどうしてる?私を刺した奴らは捕まったって知ってるけど…」
「アイツは吹雪に慰められながら日に日に元気になって行ってる」
「そうそう、最初はすっごい落ち込んでてよ。励ますのにエライ苦労したんだぜ?」
「お前はなにもしていないだろう。励ましていたのは吹雪達だ」

鬼道は呆れながら紅茶を飲む
この三人の言うとおり、麗奈が入院した当初は顔色も悪くいつもの麗奈曰く花が咲くような笑顔を見せてはいなかった
それは彼氏の士郎の前でもそうだった
私がしっかりしていなかったから、と、自分を責めている事が多かったという
時には士郎に別れようと言おうとしていたようだ
それを聞き麗奈は目を伏せた

「…そっか…華音には悪い事したな…何も事情を話せない今、記憶が無い時にお見舞いに来られてもますます落ち込ませるだけだし…」
「……だろうな。せっかくアイツが改善してくれたのに、助けたお前が最悪の状態となると面倒な事になると思うな…」

リビングに重々しい空気が流れ始めた時、今まで口を開かなかった晴矢がようやく口を開いた

「なあ、ビデオテープとかあるか?」
「え?…う、うんあるけど…」
「よし、じゃあ河川敷行くか」
「え、え、え?」

晴矢はビデオがどこにあるか聞き、それを麗奈が答えるとその場所に行きビデオを取り出す
そのまま外に行こうとする
それを鬼道が止める

「まて南雲、お前いったいどういう意味だ」
「あぁ?想い出作りたいって言ったんだろ?だったらビデオで記録を残しゃあいいじゃねえか」

何言ってんだと言わんばかりに晴矢はため息を吐いた
その態度に逆に他の皆がため息を吐きたくなってしまう

「お前なぁ…さっきまで人の話聞いてたのかよ…」
「神宮寺の事だろ?そいつを元気付けるためにも、だよ」
「どういう意味だ?」
「それは河川敷に着いてからだ。ホラ、麗奈ユニフォーム持って来い。ワンピースじゃ出来ねえだろ」
「え、あ、うん…?」

混乱しながらも麗奈は自室のある二階に行き、雷門高のユニを着て来た
それを見て、晴矢は再び行くぞと声をかけた
その晴矢の後ろでポツリと

「晴矢って…重症人だったよね…?」
「言いたい事は…分からなくもねぇな…」
「一応、点滴の支柱持ってるんだけどな…」
「取り敢えず行くか」

こうして、麗奈達は河川敷に向かうことになった
着くなり晴矢はペンチすわり、ビデオの電源を入れた
まったくもって意味が分からない麗奈達は只見てるだけだった
そしてセットし終わってから晴矢はここに連れて来た意図を話し始めた
その理由は単純だった
想い出を残すためにビデオで皆がサッカーをしている姿を撮るというものだった
それは麗奈の為だけじゃなく華音の為でもあるという
麗奈の元気な姿を見せれば華音も元気になるのでは…と
だが、それでは少し問題があった。もし仮に元気になったとして、華音はきっとお見舞いに病院を訪れるはずだ
それでは会えるのは記憶を無くした麗奈のみだ
けど晴矢はまだ笑っていた

「んなの面会謝絶だって言えばいいじゃねえか」
「苦しすぎだろ」
「んじゃ、不動が合わせたくないって言ってたって言えば?コイツを独占したいからーって」
「なっ!?//」
「え…」
「あぁ、それなら」
「って良いのかよ!!?///」

顔を少し赤くしながら不動はギャーギャーと吠える
麗奈はそんな不動を見て驚いたままだった
そんな二人を置いて、三人は頷き合う
不動が彼女の事を好きなのは三人の中では暗黙の了解のような状態であり、それを知っていてこの発言をしたのだ
晴矢は始め、麗奈の事が好きだったのだが今ではさっぱりだ
もう好きではなくなったのか、それとも元々好きではなかったのか知らないが、そんな感情は何処にもないのだ
それどころか豪炎寺と似たような感情を持ち始めた
それが何故なのかは…彼自身もまだ分からない

(…まあ、良いか)

晴矢は胸のざわつきを隠し、話を進めて行った
そうして冒頭に戻るのだ
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