夢の館

□スガくん大好きっ
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「スガくん、おはよ」

にこりと笑うのは、俺の彼女の早咲紗英
今日も可愛いなぁなんてことを頭の片隅で考えていると突然彼女がどアップで映る

「スガくん?」
「え、あ、な、何?」
「ぼーっとしてたけど、何か悩み事?良ければ相談に乗るよ?」

そう言って紗英は首を傾げながら、花が咲くような笑顔で笑う
…悩みは無いけど、あるとすればこの無自覚な彼女をどうにかしたい

「いや、大丈夫。ちょっと昨日の部活で疲れただけ」
「あ、新入生の?確か教頭先生のカツラ…」
「わーっわーっそれは言っちゃだめだべ…!」

俺は慌てて紗英の口を覆う
一瞬驚いたが、俺の行動の意味が分かったのかこくりと頷いた

「でも、楽しそうで良かった…一時期暗い顔してた時があったから。部活止めるんじゃないかなって思ったの」

紗英はえらいえらいと俺の頭を撫でる
この年で子ども扱いされるのは嫌だけど、彼女に撫でられるのは意外と嫌じゃない
それに、背の低い彼女が頑張って背伸びをするのを見てるのも好きなのだ

「でも、よく分かったな。普段は顔に出さない様にしてたのに」
「いつも、第二体育館の前を通るからちょっと覗いてってるのもあるけど…いつも部活に打ち込んでるスガくんがその時だけ乗り気してなかったから」

紗英はなんてことないみたいな言い方をするが、俺にとっては嬉しい事だった
些細な事でも変化に気付いてくれる彼女はホントにできた子だと思う
俺はその小さな体をぎゅうっと抱きしめた

「わわっ…スガくんっ…皆見てるよっ…///」
「まだ教室に誰も来てないから大丈夫」

今は大好きな彼女をずっと触れない分の補給をしたい
俺は腕に力を込めて、離さないと主張したのだった






放課後
私は部室で袴に着替えて、道場に向かう途中いつものように体育館を覗く
そこにはやっぱりスガくんの姿がある
オレンジ色の髪の子とじゃれ合ってる姿がかわいくてつい口元が緩んでしまう
普段の人懐っこい彼も好きだけど、部活をしている時の真剣な顔の彼も好きで飽きもせずここに来るのだ

(でも、スガくんの笑顔は一番素敵だな)

そうしてしばらく見ていると、視線に気付いたのかスガくんは私に向かって手を振ってくれた
口パクで頑張れと言うのが聞き取れた
私もお返しにと口を開く

(そっちも頑張ってね、孝支)

「っ…!!////」
「?どうしたんすか、菅原さん」
「へっ!?あ、いや…///」

私が珍しく名前で呼ぶと、やっぱり顔を赤くした
私はそれを見届けて、体育館を去る



(…名前、あいつの声で聴きたいな)





部活も終わり、帰り支度をしようと部室へと歩みを進める途中
見慣れた姿が見えた
………紗英だ
彼女は俺に気付くと、ぱたぱたと笑顔で俺の元に寄ってきた
先に部活が終わっていたのか、もう制服姿だ

「お疲れ様っ」
「うん。お疲れ様…待っててくれたんだ」
「…一緒に帰りたくて」

そう言って照れ笑いをする紗英に本日何度目か分からない心臓が高鳴る感覚を感じた
そういえば…と、部活初めのあたりの出来事を思い出す
俺は##NMAE2##の腰に手を回して抱き寄せた

「っ…!!スガくんっ…!?///」
「あれ、名前で呼んでくれないの?」
「!!!」

段々と顔が赤くなる彼女が可愛くて、ついつい頬が緩む

「俺はお前の声で聴きたいな」
「ぅ…////」

俺は親指で、紗英の唇をなぞる
そうしていると、少しだけ口が開き言葉を発した
けれど耳には届かない

「ん?」
「っ……孝支…///」
「うん」

良く出来ました。と俺は先ほどまで触っていた唇にキスを落とす
そうすると背中に紗英の腕が回る。そんな些細な事にも胸が躍る

「紗英、大好き」
「私も、スガくん…孝支が好き…大好きっ」

そう言った紗英の笑顔は特別可愛くて、もう一度キスを落とした…







「「っ…」」

「スガのやつ、いつの間に彼女を…」
「スガさんうらやましいっす…!俺もいつかは潔子さんと…!!「それは無理だと思いますけど」なにおう!!?」

「菅原さんの彼女さん、可愛いな」
「だねー」
「…そうだな」
「…?影山?」
「あ゛?」
「顔赤…「るっせぇボゲェッ!!」ギャッ」




「なっ、あいつら…」
「見られてたね…」

俺達は顔を見合わせて、ぷっと吹き出した
俺の腕から抜け出した紗英は小走りで少し遠くまで行くと俺の方を向いて

「孝支っ!!」



大好きっ


END

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