夢の館

□寒い日には
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『うー…さっむい…』

身が縮こまるような寒さに思わず首を暖かなマフラーの中に引っ込める
かれこれ、私が通うこの岩鳶高校の校門で15分は待たされている
校門で待ってろというメールが来た時間を合わせると25分ほどなのだけど
そして、私を待たせている本人は…

「紗英!」

『やっと来た…』

遠くから私を呼ぶのは、私を待たせた張本人
学校指定の白ランの上にベージュのコートを羽織り、遠くからでも目立つ赤髪と真紅の目
彼、松岡凛は手を振りながら小走りでこっちに向かってきていた

『遅い。帰ろうかと思った』

「悪かったって…ぶちょ…元部長がなかなか離してくれなかったんだよ」

凛はそう言って、汗を拭う
こんな寒い冬場だというのに汗をかくほど走って来たのか、と少し嬉しくなる
そこでふと違和感に気付いた

『凛、髪乾かした…?』

「ん?あ、そういや部活終わってすぐ来ちまったから髪乾かしてねえな」

『!!それを早くいいなさいよ!!ほら行くよ!』

私はグイッと凛の腕を引っ張る
目指すは私の家
今日は金曜日で、彼のいる鮫柄では珍しく土日がオフなんだそうだ
なので私の家に泊まる事になったのだ
元々、一人暮らしをしていたため、都合も良かったし

『ほら、入った入った!』

「お、おいっ押すなよ…!」

何かをわめいている凛を無理やり家へ入れて、早急にヒーターを付ける
凛をソファに座らせて、洗面所の方からドライヤーを持ってくる

『動かないでねー』

「……別にいいっての」

『風邪ひかれて困るのはこっちなの』

ドライヤーのスイッチを押し、髪を乾かし始める
綺麗な赤髪が穏やかな風により揺らぐ
丁寧に丁寧にその髪を乾かす
私の好きなさらさらとする髪を指でなぞる

「俺の髪、撫でて楽しいか?」

『楽しいよ。凛の髪、さらさらしてて好きだし』

あと良い匂いするから
と、付け加えれば、変態かと突っ込まれる
あらかた終わったのでドライヤーの電源を切る

『はい、おわり』

「おー…って、お前、手ぇつめたっ」

『え』

乱れた髪を直してたせいで首筋に指先が触れたのだろうか、びくっと肩を揺らして凛はこちらを見る
あー…まあ、あの寒い中待ってれば冷たくなるか

「悪い。俺のせいだな」

『いや、元部長に捕まってたならしょうがないでしょ。御子柴さん、めんどくさそうだし』

「それでも、あの人振り切ってでも来ればこんな冷たくならなかっただろ」

そっと私の手を包み、自分の手で温める
じんわりと感じる熱でようやく自分の手が冷え切っていた事に気付く
冷え性なのもあるのだろうけど

『凛の手あったかいね』

「そりゃ、誰かさんのお蔭でヒーターの前に座らせられてたからな」

『そーでした』

だいぶ温まったので、手を解こうとすれば逆に握りこまれる
何事かと凛を見上げればさっきより近い距離

『え…り、りんっ…!?』

何か反応する前に、食らいつくようにキスをされる
いつも凛はキスをするとき、軽いので済ませてくれないことが多い
それもあのギザギザした歯で舌を甘噛みする事もしばしば

『ん、んんっ…!!』

逃げようにも両手は掴まれてしまっていた抵抗は出来ない
せめてもの抵抗で体を逸らせるけど、後ろには背もたれも何もないわけだからボスッとソファに背を預ける形になってしまう
自分から自殺行為に走ってしまった

『はっ…んぅ…っ』

「んっ…」

唇に舌が這わされて、無理やりこじ開けようとしている
開けない様にきゅっと引き結んでいると、今度は歯で下唇を甘噛みされる
ぞくりと背筋が粟立つ
思わず口を開けてしまう

『は、ぅ…ゃっ…』

その一瞬を見逃さず、凛は舌を捻じ込む
それから何分経ったか分からない
もしかしたら何秒間だけだったかもしれない
終わる頃には完全に力が入らない状態だった

『っは…この、馬鹿…!』

「その顔で怒られても、怖くねーよ」

ニヤニヤと笑う凛にむっとするが力が入らないせいで叩く事も出来ない
こいつの舌を甘噛みする癖のせいで、麻痺しそうなぐらい弄られた
ゾクゾクと身体が震えてしまうのはしょうがないと思いたい

『ひっ…!』

するりと服の隙間から手が入ってくる
彼の手は確実に上へと這い上がっている

『凛っ…!』

「んー?」

『先にご飯食べないとっ…お腹すいたでしょ?部活終わった後だし』

よし、これで回避できる
そうおもったのに

「冷え性のお前をあっためてから、な」

『ちょっ…やめっ…ぁ』

「本気で嫌なら、やめるぜ?」

そう言う凛の表情はやめてくれそうな顔ではなく、完全に火が付いた顔をしていた
なんて嘘つきな

『あ、ぁ…っ』

「んじゃ、いただくぜ」





勿論
このあと美味しく頂かれました




END

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