桜と誠と鬼と鷹

□序章
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『……………………………』


此処は京都
時刻は真夜中
服装は何故か着物
そこに俺は立ち尽くしていた
すぐさま俺は状況整理を始めた


(えー…と、確か俺はさっきまで剣道の稽古をしてて……それがどうしてこうなったんだよ。しかも服装変わるとか何この超次元)


ちなみに俺の服装は上が普通の着物で下が平助みたいな感じになってる
詳しくは人格の章に行って見てくれ
と、俺は自分に起こった事に驚きつつ辺りを見回す
周りを見る限り視界に広がるのは家、家、家
しかも造りは俺が見るものとは明らかに違う
まるでこれは―――――


『俗に言うタイムスリップって奴か…つーか、今何時だよ。』


俺は持っていた携帯を開いて時間を確認しようとしたが時間が表示されていなかった
まぁ、歴史を超えたんだし当たり前だろうな…


『取り敢えず歩いてみるか…』


俺は何時の時代かを見るために歩き出した
近くにあった建物に二条城と書いてあったから多分場所は京都で間違いないだろう


(にしても目印になるようなもんねえな…ってアレ?イグいなくね?)


此処に来る前までは俺の相棒である鷹のイグが居たはずだ
だが探してもアイツの姿は見つからない


『嘘だろ…アイツいねぇと困るんだけど』


だけどもその心配はしなくて良さそうだ
微かだがアイツの羽ばたく音が聞こえた
恐らく俺と同じように周りを散策しているのだろう
今、聞こえるのは俺の足音だけ―――――


の、筈だった




「ぎゃゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ひゃはははははっ!!!」



突然近くの路地裏から誰かの叫び声と誰かの笑い声が聞こえてきた
俺はすぐさまその場所に向かう。そして俺の視界に入ったのは


『っ!!?』


漆黒の髪を上に纏め上げ白い袴を着た女の子がへたり込み
その横では黒い着流しの上に浅黄色の羽織を着た男が白髪の男の心臓を貫いている所だった
そこで俺は直感した


(これ、もしかしてタイムスリップじゃなくて………
トリップとかいう奴ですか)


そう、俺の目には羅刹に脅える雪村千鶴とその羅刹を切り殺す斎藤一の姿だったのだ
つまり此処は江戸時代の新選組を舞台とした


薄桜鬼の世界


「あーぁ残念だな……」


その声と共に俺は腕を掴まれ千鶴の方へと投げ出される


『いっ!!』


「僕一人で始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君こんな時に限って仕事早いよね」


俺を投げたのは他でもない沖田総司ただ一人だった
総司は笑顔を絶やさずに一へと不満を漏らす


「俺は勤めを果たすべく動いたまでだ。…あんたと違って俺に戦闘狂の毛は無い」


「うわ、酷い言い草だな。まるで僕が戦闘狂みたいだ」


総司はそう言いながら笑う


「……否定はしないのか」


一は否定はしない総司にため息を付きつつ俺らに視線を投げかけた
さっきよりは一の目には殺気が無い様だ
総司も俺らに視線を向ける


「でもさ、あいつらがこの子達を殺しちゃうまで黙って見てれば僕達の手間も省けたのかな?」


(俺も死ねばよかったって事ですか総司君!!?)


とまぁ心の中で突っ込みながらも俺は何処かでワクワクしてた
なんたってこの後土方が出るのだから
あ、この状況でそんな事言うか普通。とか思ったやつ人格の章行って俺の性格見直して来い


「さあな……少なくともその判断は俺達が下すべきものではない」


「え……?……っまさか―――」


千鶴は何か思い立ったのか言葉を紡いだのだがそれは突然現れた影によって呑み込まれた
そして千鶴の顔の横に刀が突き付けられる


「あ……」


千鶴はその突き付けた人物を見て息を呑んだ
その姿があまりにも綺麗で
俺はそれを横目に見つつこの先どうするか考えていた


「……運の無い奴らだ」


(あ、俺も含まれてますねそれ。酷くね?)


土方は少し冷たい声音で喋る
だが瞳の奥は殺気というものは無かった
怒りのような困惑のようなそんな瞳


「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る。そこのお前もだ」


土方は俺らに向かって宣告をする
千鶴は無言でこくこくと頷いた


『はいはい分かりましたよ……というかこの状況で逃げられる方が可笑しいと思いますけどね』


俺は少し言葉に棘を入れながら手を挙げ降参の体制をとる
ここで死にたくねぇしな
土方はというと元々深かった眉間の皺をさらに寄せながらため息を付き刀を鞘に納めた


「え……?」


「あれ?良いんですか土方さん。この子達さっきの見ちゃったんですよ?」


それに驚いたのは千鶴だけではなく総司もだった


「いちいち余計な事喋るんじゃねぇよ。下手な話聞かせちまうと始末さぜるを得なくなるじゃねえか」


土方はうっとおしそうに呟く
声音とは裏腹に彼の言葉は俺らを始末したくないという言い草だった
素直に言えばいいものを…


「この子達を生かしておいても厄介な事にしかならないと思いますけどね」


総司は言いながら千鶴と俺に目を向ける
俺は内容全部知ってるからそうでもねえんだけど


「とにかく殺せば良いってもんじゃねえだろ。こいつ等の処分は帰ってから決める」


「俺は副長の判断に賛成です。長く留まれば他の人間に見つかるかもしれない」


一も土方の意見に頷く
それと同時に一は自分が殺した羅刹に目を向ける


「こうも血に狂うとは実務に使える代物ではありませんね」


「頭の痛ぇ話だ。まさかここまで酷いとはな」


2人は淡々と話をするが今の状況でその話をするのは千鶴が可哀想だと思う


『あんたらさ、この子の事を殺したくないなら今目の前でその話はしない方が良いんじゃねえの?』


取り敢えず俺は口を挟む
2人は俺の言葉に納得したのかそれ以上は話さなかった
そして不意に土方は顔を歪めた


「つーか、お前ら。副長とか土方とか呼んでんじゃねえよ。伏せろ」


「えぇー?伏せるも何も隊服着てる時点でバレバレだと思いますけど」


『そうだと俺も思うけどなぁ?土方さん?』


俺は嫌みったらしく土方の名前を呼ぶ
土方は俺を睨んできたけどそんなに怖くなかった
一方千鶴は自己暗示を掛けていた


「…死体の処理は如何様に?肉体的な異常は特に現れてないようですが」


「……羽織だけ脱がしとけ。…後は山崎君が何とかしてくれんだろ」


「御意」


「隊士が切り殺されてるなんて僕達にとっても一大事ですしね」


総司はくすくすと笑いながら投げかける
土方も土方で苦笑いをしながら肯定を取った
そして総司が千鶴の方へと向かってる間俺は土方に呼ばれた
何となく予想がつくけどな
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