桜と誠と鬼と鷹

□第一章
1ページ/5ページ


翌日


『眠いっ!!』


俺は叫ばずには居られなかった
だってさいつもは寝てる時間に起きてるなんて苦痛以外の何物でもねえだろ!!

まぁ起きてたのは見張ってたからで、誰も悪くは無いんだが…
久しぶりにオールしたぞこのヤロ


『の癖にこいつは呑気に寝てやがんのか…』


少し千鶴に殺気が湧いてしまったがイライラしていても仕方ないので起きるのを待つ事にした


『つーか今何時』


幸い腕に付けていた腕時計はちゃんと機能していたので良かったと思う
時間を見ると朝の5時だった


『うっわぁー…俺もう寝てる…』


俺はため息を吐いてねっ転がっていると千鶴が身じろぎして目を開いた
どうやらイベントの始まりのようだ


「ん…」


『おはよーさん。良く寝れたか?』


「あ、貴方は…」


『んぁ…自己紹介がまだだったな。俺は鷹杉蛍だ。よろしくな』


「あ、はい。私は雪村千鶴です」


知ってるよ
とは言えねえのでとりあえず、よろしくと言っておいた
千鶴は周りをキョロキョロと見渡していた


「あの…ここは…」


千鶴が俺に問いかけたその時、この部屋の襖が開き中に入ってきたのは井上源三郎こと源さんだった
この人が後数年で死ぬと思うと憐みの目でしか見れなくなって来た―――…
っと話がずれたな


「ああ、目が覚めたかい」


井上さんは優しそうな笑みを壊さずに俺達に近づいてきた
千鶴が不思議そうな顔をしているのに気付いたのか井上さんは自分の名前を名乗った


「すまんなあ、こんな扱いで…。今、縄を緩めるから少し待ってくれ」


「え……?」


井上さんは苦笑しながら総司がぐるぐる巻きにした縄を解いた
あ、ちなみに俺は自分で取った
それを井上さんに言ったら、渋い顔されたけど


「えと、あの、ありがとうございます」


千鶴はちょっと迷ったがお礼の言葉を告げた


「ちょっと来てくれるかい」


「え?」


「今朝から幹部連中で、あんた達について話し合ってるんだが……あんた達が何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」


「……わかりました」


『了解っす』


俺らは立ち上がり、千鶴がよろけたのを見て尽かさず俺は彼女を支えた
千鶴の顔を覗き込むと少し顔が強張ってた


「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気の良い奴らだよ」


井上さんは安心させるように言ったのだろうけど……さりげなく酷いっすね
そうこうしているうちに俺らは広間へと向かった
その途中幹部の中の人達の紹介をされた
俺は知ってるけどねっ





広間に入ると、一斉に視線が千鶴と俺に向けられた
俺は平気だけど千鶴は大丈夫じゃなさそうだ


「おはよう。昨日はよく眠れた?」


「……あ」


しっている顔を見つけて少し安心した千鶴は少しだけ嫌味をとばした


「………寝心地は、あんまり良くなかったです」


「ふうん……。そうなんだ?さっき僕が声をかけた時には、君、全然起きてくれなかったけど……?」


ニヤニヤと笑って言う総司に対し千鶴は不覚っというような顔で呆然としていた
なんか可哀想だったので取り敢えず助け船を出す
一君が何とかしてくれんだろうけど取り敢えずは…な


『からかわれてるだけだよ。こいつ…沖田…だっけ?は部屋に入っちゃいないよ。徹夜で見張ってた俺が言うんだから間違いなく』


そう言うと一は小さく頷いていた
千鶴はそれを聞いて総司を無言で見やった


「もう少し、君の反応を見たかったんだけどな。……君も酷いよね、勝手にバラすなんてさ」


『あまりにもこいつが可哀想だから助け船を出してやったまでだ』


「それに酷いのは斎藤さんじゃなくて沖田さんだと思いますけど……」


「……おい、てめぇら。無駄口ばっか叩いてんじゃねぇよ……」


呆れかえった土方の声を聴いて総司は肩をすくめたが笑顔のままだった
何この子怖い


「でさ、土方さん。……そいつらが目撃者?」


はいきた平助君
と、オヤジ二人


『……千鶴、今失礼な事考えて無かったか?』


「そっそんな事…」


ぼそぼそと俺らがやり取りしているとそれを気にしない平助は千鶴を見てぶつぶつと言い出した


「ちっちゃいし細っこいなぁ……。まだガキじゃん、こいつ」


(おまえが言うかこのヤロ!!!)


「おまえがガキとか言うなよ、平助」


はいきた歩く18k((ry


「だな。世間様から見りゃ、お前もこいつも似たようなもんだろ。…つーかそこの奴の方がお前より男らしいわ」


『お前、それ褒めてんのか貶してんのかこの肉体美野郎』


「オジサン二人は黙ってなよ。…それよりお前良い事言うな」


平助に関心され、左之には笑われた
…なんか気に入られた感じですか
その後も口論やらなんやらが繰り広げられ、千鶴が俯き始めた所に優しき声音が


「口さがない片ばかりで申し訳ありません。あまり、怖がらないで下さいね」


「あ……」


千鶴には救世主に見えんだろうけど、俺には悪魔にしか見えねえぜ
そんな俺の心境を口にしたのは土方だった


「何言ってんだ。一番怖いのはあんただろ、山南さん」


その土方の言葉に周りの奴らもうんうんと頷いて肯定した


「おや、心外ですね。皆さんはともかく、鬼の副長まで何を仰るんです?」


土方はその問いには答えず、淡く笑みを浮かべるだけだった
山南さんも口は笑っていた
それをみて上座に座ってた近藤さんは二人は仲が良いと言い出した


「ああ、自己紹介が遅れたな。俺が新選組局長、近藤勇だ。それから、そこのトシは副長で、横に居る山南君は総長を務めて――――…」


「いや、近藤さん。なんで色々教えてやってんだよ。あんたは」


「……む?ま、まずいのか?」


「情報を与える必要が無いんだったら、黙ってる方が得策なんじゃないですかねえ」


「わざわざ教えてやる義理は無いんじゃね?」


ぐさぐさと突き刺さる言葉に近藤さんは狼狽えていたが左之の言葉で何とかなった


「ま、知られて困る事もねえよ」


(……近藤さんってゲームやアニメで見るより面白い人かも)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ