屍の女王の恋煩い

□聖戦の脈動
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『暇だ』

帽子亭の屋根の上でぼーっと空を眺める
現在、ここにいる人物は私一人
何故かって理由は単純で

『自分で選択した事だけど、辛いなぁ…私もバステ監獄行きたかった…』

現在地:バステ監獄近くの村 ダルマリー
状況:私以外の皆 戦闘中
そして私は待機
バーニャの村をでてからシロユメの森に行き、ディアンヌを仲間に入れる頃にはもう私は姿を隠している状態で過ごしていた
それからほどなくしてメリオダスの傷をどうにかするべく、バステ近くの村に来ていたわけだけど
一難去ってまた一難。殺されかけるメリオダスに襲われるエリザベスや村
今ごろ、バステ監獄内でバンと再開している所だろうか
でも時間的にもうちょっと後かな
ずっとお留守番しているわけだから時間感覚なんて狂う訳だ

『うー…見に行くだけならいいかなー…?』

バステ監獄から戻ってきたら、食事会になってバンの姿は見れないわけだし
ちょっと覗いて、生のバンの姿を拝見して帰ろう

『よしっ、ホークママちょっと出て来るね』

「プゴー」

『すぐ戻って来るよー』

よいしょっと腰を上げて、立ち上がる
糸を空気中の塵に結び付けて、私だけが通れる道を作る
これは結構神経と集中力を削られるから、戦闘中には使わないけれど、我ながら便利だなと思う
バステまでの道を作り終えて、そこに飛び乗る
高い所に居ればバステは全体が良く見える
バステの周りには魔力の壁みたいなものが張り巡らされている
ということはもう皆は中に入っているという事だ

『ナイスタイミング♪さっ、行きましょうか』

糸の道を駆ける
メリオダスに怒られたら、その時はその時で




『とうちゃーくっ』

数分かからずして目の前に到着
バステ監獄の周りには聖騎士と見習い騎士がずらりと囲んでいた
皆、のんきな顔している。大罪を葬れたと思い込んでいるからだろう
この後あっけなく崩れ落ちるというのに
私がそこまで近づけば、彼らは私の存在に気付く
そして私を目にして、熱のこもった表情をする
あぁ…その表情を何年、何十年、何百年見て来ただろうか
今ではその表情は凄くけがらわしく思う

「誰だお前」

一人、私の前に剣を構えて立ちふさがる
ジェリコちゃんだ
うん。やっぱりこういう反応の方が好きだな

『通りすがりの美少女ですよ』

「自分で言うのかっ!!?」

『やだな。冗談よ』

くすくすと笑えば、彼女はまた疑心暗鬼
そうそう。そうやって人を疑って鋭い目をして人を睨みつけてよ
その顔を歪めさせるのが――――…

『さいっこう楽しいのだから』

「っ!!!??」

糸の束を彼女の体に巻きつけて縛り上げる
ぎりぎりと見えない何かに縛られ、驚きと苦痛に耐えるその表情はゾクゾクする

『あはっ♪』

「ぐぅ…が…ぁ」

その状況に騎士たちはゴクリと生唾を飲み込む
彼らの表情に、恐怖が乗る

「そこまでですよ」

『?』

声のする方に目を向ければ、甲冑を被った男
表情は読み取れないが、その甲冑の表情は歪んだ笑顔
不気味な牙…ウィアード・ファングか
糸を解き、ジェリコを開放する

「まさか貴方様が生きているとは、驚きましたよ」

『あら、殺すように仕向けたのはそちら側でしょう?』

「おお怖い怖い。そんなに睨まないで下さいよ。わたくしは少し提案があるだけなのですから」

『こちら側に戻れと言うなら、お断りさせていただきますが』

「おや、これは一杯食わされましたな」

彼は乾いた笑い声をあげる
耳につくその笑い声は私の神経を逆なでするようにも聞こえる

「しかし…群れる事を嫌う貴方が七つの大罪と行動を共にしているとは…」

『私はメリオダスについて来ているだけ。他の大罪人とは一切関与してないわ』

「やはり変わりませんねぇ」

『それより……呑気にここにいていいのかしら?バステ監獄、崩れるわよ?』

そう言って指を差せば、ピシリとバステ監獄にひびが入りこみ段々と形を崩していく
その衝撃で魔壁も敗れる

「なっ!?」

「バステ監獄が…崩れて…」

『もー…やることなすこと無茶苦茶すぎるわ…好きだけどね。そーゆう所も』

私は笑って、崩れていくこの建物を眺める
目端には逃げ惑う騎士達
あの男なんか真っ先に逃げて行っていた

『さて、と…バンは見えるかなー』

崩れていく中、人影がちらほらと見えるのだけどなかなか全体が見えない
メリオダスと腕相撲してる筈だから、彼を見つければ分かる筈なのだけど、崩れている岩で見えない
瓦礫もいろんなところに散乱し始めていて、そろそろ退却しないと私までぺちゃんこにされてしまう
いくら不死身でも、岩の下敷きは嫌だ
少々残念に思いながら…いや実はかなり残念だけど、帽子亭に戻る事に

『まーいいけどさ…"昔のバン"には会えてるし……って良くないなぁ…』




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