人魚とシャチの恋模様

□再開のstartingblock
1ページ/3ページ



午前の授業も終わり、昼休み
私はいつも通り遙とまこちゃんとお昼を食べるため教室へと向かった…のだけど

『…いない…?』

屋上にでも言ったのだろうか
そう思って屋上へと足を進めた
するとやっぱり、二人はそこに居た
あと、もう一人

『渚…?』

あのやたら目立つ黄色の髪は、間違いなく渚だった
そういえば、新入生リストに入っていた

「あ、姉さん」

しばらくぼーっと眺めていると、遙が私の存在に気付いた
私はそのまま三人の元へと歩みを進める

『二人とも、此処に居たのね』
「ごめんね何も連絡なしに教室出ちゃって…探したよね?」
『大体予想はついていたから大丈「かなちゃん!!」ぅぐっ』

まこちゃんと話していると、案の定渚が抱き着いて来た
…首が軽く絞まっているのだけど
そんな私なんてお構いなしに渚はキラキラとした目で質問を色々投げかけてきた
私はそれを右から左へと受け流しながら、食べ損ねていたお昼を食べ始めてた
まこちゃんの話によると渚はまた二人と泳ぐためにここに来たそうだ

『といっても水泳部は無いしね…プールも使われてなくてボロボロだし…』
「ハルも競泳はやめちゃってるし、どうとも言えなくて」
『まあ、あんなことがあれば辞めたくなるわ…』
「え?」
『なんでもないよ』

その後、渚から聞いた話だと昔、遙たちが
通っていたスイミングスクールが取り壊しになったみたいで、その前にあれを掘り起こしに行きたいとのこと

『…不法侵入にならないかしら』
「うーん…どうだろ」

結局みんなで行く事になり、関係のない私まで着いて行く事になってしまった
その前に私達の家に寄ることとなった

「いいなぁ…今ハルちゃんとかなちゃん二人暮らしなんだ」
「おばさん、おじさんの所に単身赴任だって」

そんな話をしている二人を横目に、私と遙は夕食の準備を進めた
遙は鯖しか作ってくれないといっても過言ではないので、その他のメニューを作る事に
遙は鯖が無いとうるさいので、もう放っておくことにしている

「…でもさ、本当にいいのかな」
「えぇ?さっきは賛成したのに?ひょっとして怖くなった?」
「違うよ。俺達だけで掘っちゃっていいのかなって」

そう話すのは同じスイミングスクールの仲間だった凛の事
凛が留学したのは小学6年の冬
あれからもう5年…皆は知らないだろうけど、凛は日本に帰ってきている
だけど、それを言うのはためらった
だってそれは…

(遙を追い込むだけだから…)




「けっこう…荒れてるね…」

そして夜
私達はスイミングスクールにやってきた
取り壊しが決まったとあって、中々おどろおどろしい
そんな時、渚が取り出したのは塩…に見える砂糖
噂だけど、ここには出るみたいな話があるらしい

「はい、次ハルちゃん」

「…おい」
「っ!?ど、どうしたの…?」
「これ、塩じゃなくて砂糖…」
「「………;;」」




『意外と暗いのね…噂で出そうってだけあるわね』

カンッカランッ

「うわぁぁっ…!?な、なにっ…!?」
「あ…ごめん…空き缶蹴飛ばしちゃった」
「お前…わざとやってるだろ…!!」

(まこちゃんの怖がりも相変わらずね…)

『…?』

微かに人の気配がした…様な気がした



しばらくして休憩室に着いた
女子の私が男子更衣室に入ってよかったのかの疑問はとりあえず置いておく
そこに飾ってあったのは昔の皆の写真
まだ笑いあえた、皆の写真

(また…もとに戻るのかな…)



しばらく歩いていると、カツンという音がした
これは…人が歩いている音…
それとこの香り…

『まさか…』
「かなちゃん?」

通路をよく見ると、人影があった
黒のパーカーとズボン、そして帽子を深くかぶっている青年
その姿は月明かりに照らされて、はっきりとしてきた
赤髪で、同じく赤い瞳…間違いなく――――

(凛…)

「よぉ」

「だ、誰…?」
「わかんないよっ…」

「まさかここでお前らと会っちまうとはな」

そう言って凛は帽子のゴム部分を伸ばし、弾く
それはあの時からやっていた癖

「「あぁっ!凛…(ちゃん)!」」

「オーストラリアから帰ってきてたんだ」

渚はそう言って凛に近づく
だけど凛は何も言わず、ただ遙を見て遙も凛を見ていた

「ハル、お前まだこいつらとつるんでたのか…ハッ、進歩しねえな」
「え…」
「何言ってんだ、凛…」

動揺する二人とは別に酷く冷静な遙
こうなる事をどこか予想していたのかもしれない

「そういうお前はどうなんだよ、ちょっとは進歩したのか」
「ハル…?」

「丁度いい、確かめてみるか?勝負しようぜ」

凛はそう言って、プールの方へ向かう
遙もその後に続いた
私も二人の後に続く。戸惑ってる二人を余所に凛と遙は脱ぎ始めた
…というかちょっと待って、もしかして…いや確実にそうだ

「俺とお前の差…教えてやるよ」
「いいぜ…やってみろよ」

『ちょっ、二人とも待って!』

「あぁ?止めんなよ彼方これは俺とコイツの問題だ」
「姉さんは黙ってろ」

『そうじゃなくてっ…!勝負事には
口は出さないけどちょっと待ちなさいっ…!』

そんなのお構いなしに二人はプールサイドへと走っていく
ゴーグルを付けながら、サイドへと

「行くぜハルッ…!レディ…ゴッ…!!?」

『はぁ……馬鹿』

取り壊しをするのだから当然水は抜いてあるし、なによりもう廃墟と化してるんだから水が無いのは当然
なんで後先考えずに行動するかなぁ…

「水…入ってないね」
「だから待てって言ったのに…」

まこちゃんも呆れ顔である
水がないと知った凛は舌打ちをして、スタスタと自分が脱ぎ捨てた服を持って出口のほうへ向かってしまった
しかし立ち止まり、何かを取り出した
………トロフィーだ

「そーいやお前ら、コレ見つけに来たんだろ?」
「あっ…トロフィー」
「俺はもういらねえから、こんなもん」

そういう割には、瞳が悲しく揺れている
凛はそんな感情を振り払うようにトロフィーから手を離した

「「っあ…!?」」

慌てて捕ろうとするが、トロフィーはカツンと音を立てて虚しく落ちた
凛はそのまま去っていく

(いらないと言うなら、何故立ち入り禁止であるここに来たの…?)

貴方もここがなくなるのが嫌で来たんじゃないの?そんな事はいなくなってしまった凛には聞くことができなかった



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ