聖帝様と秘書

□仕事4
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そして試合再開
ここで蘭子ちゃんは太陽をトップ下に変え、金輔と茅原君を交代させた

「………っ!!…まさかっ…!!」

1つの真実にたどり着き、蘭子ちゃんを見るが蘭子ちゃんは微笑むだけだった

「嘘…嘘よ……太陽、やめてっ!!…貴方はもう…っ!!」

懸命に叫ぶ
太陽はこっちをみて口パクで大丈夫と言う
何が大丈夫なの…!!
また、じわりと目に涙が溜まる
右目は涙が流れないため左目だけに涙が流れる
私の反感など気にせず、試合は再開してしまう
新雲からのキックオフ
それと同時に神童が一人で上がって行く
あちらも太陽が限界なのに気づいたようだ
神童はボールをカットすると一気に新雲陣内に攻め上がる
太陽はまだ動かない


ドォォンッ

「おぉぉぉおぉぉおぉ!!!」

太陽の咆哮と、爆風により神童は吹き飛ばされる
だがそんな事今の私にはどうでも良かった

「たい…よ…ぅ……たいよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

止めに入るが金輔と蘭子ちゃんに止められてしまう
なおも必死に抗う

「やめなさい、煉!!貴方まで怪我するわ!!」
「煉コーチ!!今は我慢してください!!」
「離してっ!!太陽が…太陽がっ…!!!」

太陽は化身を出した
仲間の化身ドローイングによって、だ
彼自身もそれをやると体に負担がかかるのは分かっていたはずだ
それなのに尚、彼は勝利を求めようとする
…いや、松風君と本気で戦おうとしているのだ
それを咎めたりはしない。だけど、それとこれとは話が違う

「これが僕の…いや、僕達の化身だ!!"太陽神アポロ"!!」

何故、貴方はそこまで頑張ろうとするの…
確かに勝てなければ私の生活は無くなってしまう
太陽への支援費も
でも、それがなんだっていうの

「もういいから…私の為とか……考えなくていいから…」

私はその場にへたり込む
松風君達は俺達もやりましょうという
でも今は試合なんて…どうでも良かった
私の目の前では松風君、神童、剣城が化身を出し、一つになろうとしている
太陽はサンシャインフォースを打とうとしている
それを私は呆然と見ている

「いいよ…いいから…失いたくないの……貴方を……家族を失いたくないの…!!だからっ…もうやめて、たいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

大粒の涙が砂のフィールドに零れ落ちる
視界が歪む
私の声なんてもう彼らには届かない
本当のサッカーを取り戻すため戦う者たちと全力で挑む太陽達
今の状態の彼らを止めたくはない…いつもなら絶対に止めない
でも今私は反対の事をしている
何故?答えは簡単だった

太陽を失いたくない


松風君たちの化身は一つとなり、魔帝グリフォンへと変わる
その化身は仲間の絆の化身
彼らは太陽達のシュートを止める
それに対し、太陽も押し返そうとする

「「貫け、太陽!!」」
「あぁ!!」


「「いっけぇぇぇ!!!」」

それでも雷門の思いは強く、シュートを押し返した
土佐丸も必死になって止めるが、それも空しくゴールに突き刺さってしまう
これで4-3

ピッピ――――――――ッ!!!

試合終了のホイッスル
雷門の勝ち越し
これで雷門は決勝進出
確実に聖堂山と当たる事になった

聖堂山はまだ千羽山中と試合をしていない
が、修也の事だ。雷門が勝つことを想定して絶対に決勝へと上がらせる

(ってそんな事はどうでも良い!!今は太陽!!)


「負けた…僕達が…」


ドサッ

「「!!?」」
「太陽!!」

戦意喪失したのか、それとも体力が尽きたのか分からないが太陽はその場に倒れた
皆が駆けつけるよりも早く私は走った
人生でこんなに早く走った事は無いのではないではないだろうか

「ねぇ…さん…」
「このっ…馬鹿っ!!…無茶するなって言っただろうが!!話聞いて無かったのか!!?馬鹿!!」
「ごめん…」
「死んじゃうんじゃないかって…思ったんだからな…!!」
「うん」
「私を置いていくんじゃないのかって…!!!」
「うん…」
「馬鹿…バカバカバカバカバカバカ太陽!!!」
「泣かないでよ……それと、勝てなくてごめん…」
「生きてればいい…!!置いてかないで…っ」
「うん…約束する…」



「た、太陽…大丈夫!?」

そこに松風君が来る
彼も友達の一人として駆けつけてきたのだろう

「あははっ…全力を出し切った…もう動けないや…」
「太陽…」

二人の会話に入るに入れず、私は黙ったまま
…説教したりない←

「知らなかった…こんなに気持ちのいい試合があるなんて…」

太陽は聖帝室に目をやる

「貴方が教えようとしてくれたのはこれだったんですね……ありがとうございました」

そう呟き、次いでチームの皆に感謝を述べる
太陽の瞳の奥には不安が揺れているのを見て、私はまた泣きそうになる

まだ小学生だった太陽
そんな彼は私と千宮寺の会話を聞いていた
ホーリーロードで聖帝選挙が成功しなければ私の生活と太陽の入院費を出さないという会話を…
そのため彼は楽しくやっていたサッカーを管理サッカーの為に費やしてしまった
私のせいで…
そのせいで今太陽は苦しんでいる。死にそうになりながらも戦ったんだ

目の前の二人はまたサッカーをやろうと約束を交わしていた
固い友情が松風君の原動力
あの頃の円堂のように

「…………んね…」

高く、猛々しく、堂々と
管理サッカーに立ち向かう
そんな彼らが眩しすぎる…
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