桜と誠と鬼と鷹

□第二章
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千鶴視点


「いつまで、こんな生活が続くのかな」


今蛍君は押し入れの中で寝ている
一応、幹部の皆には男で通ってるから表では寝れないし、暗いの好きだからとの事でそこが定着してしまった
因みに、押し入れの中に寝ているのを知っているのは土方さん位

ひとりになるとつい後ろ向きになってしまう
そんな自分が情けなくて、私はため息を吐いた
考えたってどうにもならないことばかりが私の前には山積みになっている


「父様が無事かどうかなんてここに閉じこもっている限りわからないし…」


外に出るためには土方さんの許可を取らなくちゃいけないのだが、土方さんは大阪に出張中
今は待つしかない
考えても解決しないことを考え続ける限り、私の不安は増していくばかり


「でも……」


ささやかな救いはある
皆良くしてくれてるし、蛍君だって私に対して親身になってくれてる
正直な所を言えば、新選組を完全に信用できたわけじゃない
…彼らは簡単に人を殺せる。私の事も、そして蛍君の事も、状況次第では簡単に殺すだろう
だけど―――…


「根は良い人達なんだよね」


「君さ、騙されやすい性格とか言われない?」


『確かに、俺も思う』


「!!?」


驚きすぎて声も出ない
慌てて振り返るとなぜか沖田さんがいて、押し入れの所からは何時の間にやら蛍君がいた


「ど、どど、どうして沖田さんがっ!?あと、蛍君も寝てたんじゃ…!!」


「あれ、もしかして気づいてなかったとか?この時間帯は僕が君の監視役なんだけどな〜」


『そして俺はそんな総司の押し殺した気配を察知して起きました』


「…………」


そういえば私、監視されてるんでした。
そして蛍君、気づいたなら言って欲しかった
……という事は


「もしかして、私の独り言も全部……?」


「ん?」


もちろん聞いていた、なんて彼は言わなかった
ただ、きらきら輝く笑顔で私を見つめていた


「…………(聞かれてた!これ、もう絶対聞かれてた!!)」


私が声にならない悲鳴を上げた時、何故か障子の影から斎藤さんが現れた


「総司。無駄話はそれくらいにしておけ」


「……斎藤さんも聞いてたんですかー!?」


「……つい先程来たばかりだが」


「よかった……!」


聞かれていないことに私は胸をなでおろした


「あ、その、すみません。私いきなり叫んだりして」


「気にするな。……そもそも今の独り言は聞かれて困るような内容でもないだろう」


『斎藤、それ千鶴をかばった意味なくなっとる』


蛍君はよいしょっと言って、押し入れから出てきながら言った
それより、やっぱり聞かれてたの…!?
いや、確かに聞かれて困る内容ではないけど、独り言を言っていた事実を知られるのも私にとっては大きな問題なんです!!
と、心の中で叫んでみる


「夕飯の支度が出来たんだが…邪魔をしただろうか」


「いえ、邪魔とかじゃないです!」


困った顔をした斎藤さんを見て、私は慌てて首を振った
斎藤さんは私達の会話に一区切りがついたら声をかける予定だったけど、話が長引くと思ったから声をかけてくれたらしい
その時、バタバタと駆け込んできた藤堂さんは私達をみると頬を膨らませた
その横では、蛍君と沖田さんが話している
どうやら藤堂さんは夕餉の時間なのに来ない私達にしびれを切らして呼びに来たらしい


「はいはい、千鶴も急げって。早くしねえと食うもん無くなっちまうからね」


「ごめんなさい、藤堂さん。すぐいきます」


行きかけた藤堂さんが立ち止まって、困ったような顔で口を開いた


「あー、その"藤堂さん"ってやめない?みんな"平助"って呼ぶから、それでいいよ」


「で、でも……いいの?」


「歳も近いからその方がしっくりくるし」


「あ……じゃあ平助君で」


そういう平助君に蛍君はぽつりとつぶやいた


『平助が歳近いなら、同い年の斎藤と総司はどうなんだよ……あぁ、精神年齢が同じって意味か』


「そこぉぉ!!居候なのに生意気!!」


『今は立派な隊士ですが(ドヤァァ』


「あはは、平助残念。僕が勝てないコイツに平助が勝てると思う?」


「うぐっ」


だんだんと話の収集が着かなくなってきたところで斎藤さんが宥めて、その場は収まった
それよりも、平助君と斎藤さんと沖田さんって同い年なんだ…



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