屍の女王の恋煩い

□憤怒の罪
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エリザベスが何故七つの大罪を探しているのか
それは、聖騎士を止めるため
ホークは不思議そうにしていたけれど、今の聖騎士は正義の味方どころか悪党と化していた
それどころか、王国転覆を図っているのは彼らで、国王も捕えられてしまっていた
民衆に伝えられている、病気で臥せっているというのは全くのデマ
聖騎士たちは民を集めては、その戦の準備を進めていたのだ
彼女が七つの大罪を探すのは、聖騎士に立ち向かえる唯一の希望なのだ

ズズッ

突然、地面が揺れたと思えば、私達が立っていた場所が切り崩された

『あらら、落下してるね』

「おいーっ!?」

『まあ大丈夫だけど…』

私はホークを抱え、メリオダスはエリザベスを抱える
ついでに、下に落ちたアリオーリとか言う男を糸で釣り上げる

「え、え…今、どうやって…」

『あとで教えるよ…よっ、と!』

指先を上にかざし、木に糸を巻き付けて、上へと上がる
地面に着地すれば、騎士たちは動揺した
ついでにツイーゴとかいう奴が何か騒いでいた
いやぁ…めんどくさいねぇ
メリオダスはエリザベスに、まっすぐ走れと言った

「パトラ、お前は…」

『ここで戦うよ。殺しはしないけどね』

そう話していると

「決定!エリザベス王女!!」

ツイーゴが口にしたのは、彼女の名前
その言葉に二人…一人と一匹は目を疑ったようだ
ツイーゴは王国から創作命令があると言ったが、その目は殺す気だった
メリオダスが走れと合図すれば、一斉に走り出す
というか戦うんじゃなかったのかい
その次の瞬間、ツイーゴが剣を振れば、木がなぎ倒されていく
エリザベスはメリオダスに任せるとして、私はどうしようかななんて思っている間に首に衝撃が走った

『あ』

「――――っ!!!!??」

「ぷごっ!!?」

エリザベスの声にならない悲鳴が聞こえた
どさりと頭が地面にたたきつけられる
あぁ…首から斬られたのか

そのまま私の記憶はぷっつりと



「死亡者は1名…存外しぶとい物だな」

「てめぇ…よくもパトラちゃんを!!」

叫ぶホークに、涙を浮かべるエリザベス
けれどメリオダスだけは何も動じていなかった
当たり前だ

「さて…残りは貴様らだな」

「悪いが一人も死んじゃいねえぜ」

「は?」

『そーそー…勝手に殺さないでよねぇ…』

ツイーゴの後ろから声が響く
彼が振り向けば、首のない胴体だけが立っていたのだ
では声はどこから聞こえたのだろうか
目線を少し下に逸らせば答えは明白だ

『私の首を斬る人なんて初めてだよ。せっかくだから、このまま痕は残しといてあげる』

「んなぁっ!!?」

「ひっ…」

地面に転がったパトラの頭
それがひとりでにころりと転がり、立ち上がったのだ
彼女は不老不死
首を切られようが何をされようが死なない…屍人族
パトラの胴体は頭を手に取り、首とつなげて自身の糸で縫う
ボキボキと首を鳴らせば元通りだ

『この代償は高くつくぞ…人間』

殺気を放った目で睨めば、ツイーゴは怯んだ
だが、一人の少女が前に出て来てしまった




「逃げきれません…」

エリザベスはそう言った

「お前…あきらめるわけにはいかねえって言っただろ」

「私が大人しく投降すれば貴方達の命はむやみに奪わないはずです」

静かにあるくエリザベスにまたしても剣を振る
けれどやはりそれをメリオダスは助けた
それが苦しいのか、エリザベスは逃げて欲しいと泣いた
寂しい一人旅…それも王女様が旅に出たのだ
相当の勇気と決心がなければ出来ない事
馴れない鎧で、体力が底を尽きるまで歩いて、たどり着いた先に彼らが居た
名も知らない自身に優しくしてくれた彼らを失いたくないのだと、彼女はそう言った
そのときメリオダスは何を思っただろうか

「メリオダス、それが俺の名前だ」

メリオダスと言う言葉に彼女は目を見開いた

「まさか…そんな…貴方は、だって…」

エリザベスは信じられないという目で彼を見ていた
だが、腕の紋章を見て確信したようだ

「そのシンボルは…獣の…いえ、ドラゴンの…!!」

『メリオダス!!』

私は叫んだ
彼はツイーゴの振り下ろした剣を刃折れの剣で弾いた
全反撃(フルカウンター)彼の魔力だ
ツイーゴは唖然としていたが、彼の素性に気付いたようだ

「いや、だとしたら、何故あの時と姿が変わっていない!?」

驚愕するツイーゴに対し、不敵な笑みを浮かべるメリオダスは剣を構えた

「俺が誰だか、分かったか」

ツイーゴの振り下ろした剣を、刃折れの剣で…魔力で跳ね返す
尋常じゃない魔力が、肌を撫でた
その魔力でツイーゴは吹っ飛ばされた

「七つの大罪、憤怒の罪…ドラゴン・シン。メリオダス!」

彼はそう、高らかに宣言した
カシャリと剣を仕舞って、振り返る

「これで一人目が見つかったわけだな、エリザベス」

「え…」

「残りの6人の事なんだけどさ、俺も用があって最近探し始めたんだ。情報集めの為に酒場をやりながらな…」

メリオダスはエリザベスと向き合った

「これで看板娘がいてくれたら客も情報ももっと集まるんだがな…」

彼はにかっと笑って、言った

「一緒に、行くだろ」

その言葉にエリザベスは涙を流しながら、笑顔ではいっと答えた
そこにタイミングよく、ホークママが上から降ってきた
梯子がかかり、メリオダスはエリザベスを抱えて梯子に捕まる
私は糸を屋根の一部に括り付け、糸を巻き返すようにして飛び乗った

ここから、全てが始まる
七つの大罪と言う物語が…本当の戦いがこれから始まるのだ



(冒険は…ここからだ)




つづく…
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