屍の女王の恋煩い

□聖戦の脈動
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「よしよし、留守番ごくろーさま」

『途中から私の存在忘れてたくせに…』

「忘れてねーよ。まあ、戦闘中はちょっと遠くに…『忘れてるっていうのよ、それ』」

彼らがこちらに戻ってきて、私とメリオダス、ホークはセネットの元へと足を向けていた
ダナ先生の亡骸を見て彼女がどう思うか心配なのだろう。彼なりに
というよりは見に行けないエリザベスの代わりに、が正しい
部屋に入れば、親子二人は涙を流して再開を喜んでいた
そう、生きていたのだ

「い、生き返った!?」




「見てくれ」

ダナ先生は服を脱ぎ、刺された場所をしるした
そこは綺麗に塞がれている
何もなかったかのように、ではないが

「これは…メリオダスの傷のときと同じだぜ」

「同じ…?」

彼は怪訝そうな顔をする
そして不甲斐なさそうにこう話した

「恥ずかしながら医者の私にもなぜ生きているのかさっぱりわからないんだ」

「こうして生きてるんだから、それでいいんじゃねえか」

メリオダスは安心させるように笑う

「じゃあ、俺達は行くぜ。話を聞きつけた聖騎士が乗り込んでこないとも限らねえからな」

話しはそれで終わりだというようにメリオダスは背を向けるのだが、それはダナ先生によって止められる
滞在は無理でも、ささやかな食事は用意させてほしいと
メリオダスは暫し考えたのち、肯定した

「それじゃお言葉に甘えるかな」

「毒入りは勘弁な」

『ホーク、それは失礼よ』

案の定メリオダスに軽く殴られた
セネットは食事の準備をしてきますと、嬉しそうに部屋を後にする
そしてダナ先生は私を目にすると少し驚いた顔をした

「君は…」

『あ、すみません…挨拶なしに。私は彼らと旅をしているパトラです。ワケあって彼ら以外には姿を見せないようにしているので…黙っていてくれると…』

「ああ、いや。私の方こそすまなかったね。私が聞きたかったのは、その体中の縫い目のことなんだ」

『…?』

「昔、私が子供のころ怪我をした際、手当をしてくれた女性がいてね。その人も君みたいに体中に縫い目があって、まさかと思ってね」

その言葉に少し目を見張る
彼が言うその女性は恐らく私で間違いがない
昔、大怪我をしていた小さな男の子を助けた記憶があるから

『そうですか…きっと私と同じ種族のものだと思いますよ。私達は人間に興味を持ち、人間の作る文化を真似たりして居るぐらいですから助けるのは当たり前かと』

「そうか…もし、君が知っている人だったなら伝えて欲しい。私は貴方が手当てをしてくれたおかげで、医者になりたいと思ったのだと」

『……はい、伝えておきます』

「じゃ、ちょっと仲間の所に戻るなー」

メリオダスは行くぞ、と私の背を軽く押す
部屋を出て少し歩けば、ぽろりと涙が零れる
嬉しかった。私のお蔭で、夢が見つかったという話を聞くのは
人から感謝を述べられるのがとても嬉しくて

「やっぱ、パトラだったか」

『っうん…ふふ、嬉しいものだね』

「だな」

メリオダスはニシシっと笑って私の頭を撫でてくれた
皆優しいなぁ…ほんと
これなら、皆が食事している間の時間は大人しく待っていられそうだ

「ていうかよ、まだパトラちゃんは隠れんのか?」

『うん。あまり介入したくないから、ね』

「でもよ、この前お前さみしーっと嘆いてたじゃねーか」

『そんなことないです』

「うんにゃ、言ってたね。俺の耳は地獄耳だぜ」

『言ってないですー』

そんな攻防戦をしているうちに、もう帽子亭の近くまで着いてしまった
楽しいおしゃべりもここまで
これ以上先に進むと、背の高いディアンヌにばれてしまう
私は彼らから離れて、森の中に消える
去る間際に、メリオダスが背を向けたまま手を振ってくれたのが見えた
こうやって細かい気遣いをしてくれるところが優しい
とりあえず彼ら全員が向こうに移動するまでは森の中でやり過ごすしかない
その時間つぶしに、食材と材料集めをする
材料と言うのは服を作るための材料
普通に布を買えばいいのだけど、彼らは頻繁に戦闘を繰り返すので普通のものではすぐに破れてしまう
そこで森に潜む、モンスターたちの皮や毛を拝借するのだ

『大体あつまったかなー…時間も良い頃合いだし戻って作業しようっと』

上機嫌で帽子亭に戻れば、思った通り電気はついておらず、人の気配もない
扉を開けて、3階まで駆け上がる…が

『………え゛』

3階の扉を開けてまず目に入ったのは、堂々とエリザベスのベッドを占領しているバン
誰もいないと思っていたので油断していた
というか寝すぎでしょう…

(とりあえず慎重に…)

こっそりと歩みを進め、屋根裏部屋に続く扉を糸で開ける
階段は作ってないので、これも糸で上る
けれど、そっと上ったのがいけなかった

ゴトッ

『あっ』

慎重になり過ぎて、履いていた下駄を片足落としてしまった
この静かな部屋に、上から物が落下する音はやけに響く
やってしまったと、両手に抱えていた材料を部屋に置き、下に急いで降りる
こういう時下駄なのが少し恨めしい
下駄を拾い、そそくさと上に上る………はずだった

『っ!!?』

気づいた時には自分はうつぶせになっていて、腕を後ろで交差するように掴まれている
こちらも慎重になり過ぎたせいの末路だ
こんな事する者はここで寝ていたあの人以外いないだろう

「てめぇ…だれだぁ?」

『…今日は厄日なのかな』

物凄く大ピンチです
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