灰色彼女。

□第1話
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「いってきます」

誰もいないうす暗い部屋に向かって小さく呟いた。



桜があちこちで咲き誇り、通学路を華やかに飾る。

それは、これからの私達を祝福しているようだった。



誠凜高校。



河合 真冬は今日からこの学校に通う生徒だ。



「おー、まい、がっと。」




新しい希望と期待で溢れかえっている。

ハズだった。

新しい門を潜り、その先には、



溢れかえんばかりの生徒達。

眩しい笑顔を向けてくる彼らの手には、束になった勧誘用紙。



校舎までたどり着くことが出来るのか。



行き交う人たちを掻い潜り、校舎に行く…ここは、戦場だ。





「うわっ」





勧誘用紙と人に揉みくちゃにされながらも、進んで行く。

しかし、進んだと言っても10mも進めていない。

溢れる人にぶつかり何度もふらつき、重心が後ろへ移動しといくのがわかった。

同時に、転倒しているという言葉に辿り着くのには時間なんてかからなかった。

頭を打ったらどうしようなどと、呑気なことを考えていた。



ゆっくり、ゆっくり、落ちる。



しかし、固いコンクリートの感触はない。

あるのは両肩に誰かの手。





「大丈夫ですか?倒れそうになってましたけど…」





その声は少し上から降ってきた。

ゆっくり顔を上げる。

一瞬目を瞑った。



彼の髪が光に当たって、反射して見えた。

色素の薄い、水色の髪。

そして、それと同じ目の色。



綺麗と同時に、





「消えそう…」



と、思った。





「消え、そう…?」

「あ、ごめん。」





自分が無意識の内に言葉を発していたことに気が付いた。

自分が支えて貰ってることに気付き、急いで離れる。

が、離れた途端、人の波に飲まれそうになる。





「一緒に行きませんか?」





また、彼は支えてくれて
そう言った。


不思議な人だ。


彼の周りには誰もこない。


別の空間が存在してるみたいだ。





「ご一緒させて頂きます。」





校舎まで一緒に行くことにした。





**********





「さっきはすいません。2回も助けて貰って。」


「気にしないで下さい。」





彼に掴まり、スイスイと歩く。


さっきまでの混雑はなんだったんだ…。





「あ、ちょっと寄りたい所があるんですが…いいですか?」

「いいですけど?」





彼が止まったのは、バスケ部。


紙にササッと必要事項を書く。


後ろから覗くと、出身中学校が帝光中学校と書いてあった。


帝光って………。





「行きましょうか。」

「え、は、はい。」





帝光って、
私が通ってた中学校じゃ…。
 

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