頂き物
□ちょっと酵母買ってくる
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ここは西日本某所。
とある洋風建築の一軒家にやけにガタイのいい男が入っていった。どことなく上機嫌に見えるその足取りは急な来訪者というよりはいい事があって気分上々で我が家に帰ってきたそれである。
男は玄関を開けるなり家中に響くような声で言った。
「ただいまァ」
「あんたの家、隣ですよ」
「おっと間違った・・・が、こまけえこたあいいんだよ!」
「長曾我部殿居るとうちの社長が仕事しなくなるんでほんともうどっか行ってくれませんか。ほら、熊●曜子の写真集あげるから」
やけに日光が眩しい現代作りのこの家は、家主である毛利元就の仕事部屋を兼ねているようなものになっている。現在は秘書であり営業でもなんでもできる##NAME1##が住み込みで働いている場所でもある。
「おれはほ●のあき派なんだって何回言ったらわかんだよ!」
「女なんて胸と尻が出てればなんでもいいだろうが!」
「女としてお前それはどうなんだ!ってか今回現代版なんだからちょっとくらいいいじゃねえか!ここが俺んちみたいな感じでいいじゃねえか!」
「何ちょっと特別感出そうとしてんですか!?あんたの家もっと離れたとこにあるじゃないですか!うちの社宅を勝手に長宗我部宅にしないでください!」
元親と元就が会ってしまえば仕事をしなくなるとは##NAME1##の弁であるが、##NAME1##と元親が会ってもそれは大差無い事態になるのである。
ギャーギャー騒がしくなった玄関についに元就がやってきてしまった。
「騒々しい。##NAME1##、何事か」
「もっもももも元就様は向こうでおとなしくひとりでできるもんしててください!」
「うむ、まいんちゃんはネ申」
「わかった、わかったから」
「よォ、毛利!」
「・・・##NAME1##、この家に浄水器はいらぬと伝えよ」
「悪質な訪問販売じゃねえよ!」
「我が家の水道はヒマラヤ山脈の天然湧水を使用しどんな者の病も治るという・・・」
「何さらっとデマ流してんだこの野郎」
「俺んちにも流れねえかなあ。その湧水」
「貴様は本にタイミングが良いな長曾我部。ここにふたつの浄水器があるであろう。この浄水器を買えばどんな水もたちまち天然の湧水に早変わりぞ」
「へえ、すげえなあ!」
「やめるんだ長曾我部殿!それがモノホンの訪問販売だから!悪質な!元就様もふざけるのはやめてください!ノーモア悪質販売!」
##NAME1##の必死の訴えかけにより元就は渋々浄水器をひっこめた。元親も若干残念そうな顔をしていたのには見ないふりをすることにした##NAME1##である。
元就が立ち上がった。これで仕事に戻ってくれれば万々歳。元就には今大量の仕事が残っているのだ。
「##NAME1##、茶を出せ」
「ホワイ!?」
「そりゃあ俺をもてなすためだろうがよ」
「もてなされる側が得意げな顔して言ってんじゃねえよ!帰れって言ったべ!」
「天然湧水で茶を出すのだぞ」
「なんで元就様ひとりで話進んでるんですか!?待って!ちょっとでいいから待って!」
「やっぱ俺その浄水器買いてえなあ。野郎共も天然湧水飲みてえだろうしよ」
「野郎共のためにもやめてあげてください!っていうか人工物からなんで天然水生み出せると思ってんですか!?」
「大丈夫か##NAME1##。さっきから怒鳴ってばっかで血圧上がるぞ。落ち着けよ」
「諸悪の根源に言われたくねーよ!」
そう言いながらも茶の準備をする##NAME1##。根っから律儀なのである。
元就は仕事机に座ってふんぞり返っていたがその視線の先は子供向け番組が放送されているワイドテレビだ。
「最近食パンの耳だけで食いつないでたからよお、緑茶の温かさが身にしみるぜ」
「だからなんでそんなにハードな生活してんですか!黄金生活のエクストリームモードにでもチャレンジしてるんですか!」
「どちらかと言うと鉄腕な感じだな」
「食パンの耳育ててんの!?自給自足するならせめて野菜育ててくださいよ!野菜!」
「野郎共が毎朝ごはんは飽きるっていうから米じゃなくて麦を育ててたんだが・・・食パンにするには酵母が足んねえんだ・・・!」
「買え!」
「そもそも何故酵母が無いのに麦から食パンの耳のみを生成できたのだ。ありえん」
「パン屋に言って切れ端もらう要領でもらうんだ。簡単だぜ」
「麦は!?わざわざ育てた麦どうしたの!?」
「冷蔵庫に入れてあるぜ!」
「麦wwwwwww食えよwwwwwwwwww」
「元就様キャラぶれてます!直して!ちょっと横にずらして!」
「うむ、こうか?」
「OKOK、そんな感じです」
「え、どんな感じ?」
「時に##NAME1##よ、我ちょっとイトヨに行きたい気分ぞ」
「行ってらっしゃいませ元就様。私はめんど・・・留守中何かあってはまずいのでこちらでお待ちしております」
「今面倒って言わなかったか」
「言ってません。耳腐ってんじゃないんですか。いってらっしゃいませ」
「なんかとんでもないこと言ってないかこいつ」
##NAME1##と元就の会話に細かくツッコミを入れる元親が総無視で二人の会話は続く。
「もっとくやしく」
「行ってらっしゃいませェェェ!ウワアアアアン!キエエエエエエエ!」
「もっとにちゃん風に!」
「逝ってヨシ!」
「そして輝く?」
「ウルトラソウル!」
「ハァイ!」
「なに晒すんじゃボケナス!」
「やっとつっこみおったな」
「(ボケナス・・・)」
煽った元就と乗った##NAME1##のどちらが悪いとも言えない状態で、##NAME1##の鉄製ハリセンが理不尽なツッコミと共に元就の頭に炸裂したところで元親がおもむろに立ち上がった。いつもなら夕飯時まで居座るのに珍しいこともあったものである。
傍若無人な元就ですら一瞬「あれ?」という顔をしたので##NAME1##と思っていることは同じなのだろう。
「あれ、長曾我部殿、もうお帰りで?」
「ああ。そろそろ野郎共のためにパンの耳もらってこねえとならねえからな」
「だから別なものを買えと何度言ったら」
「パンがないならビスケットを食べれば良かろう」
「はいはいナリー・アントワネットさんはちょっとお静かにしててくださいねー今まいんちゃんでてきますからねー」
「長曾我部よ、帰るなら疾く去ね。我も我で##NAME1##と用があるゆえ」
「さらっと私を巻き込まないでください!買い物でしょ!私行きませんよ!行きませんからね!だいたい元就様と一緒に買い物に行ったら、元就様が認めた額まで値切らないと何も買えないじゃないですか!アメ横のバナナの叩き売りだってもっと良心的ってもんですよ!」
「これも我が策」
「策っていうかただゴネてるだけでしょ!子供か!そろそろ悪質クレーマーで出禁くらってもおかしくないですよ!」
「・・・仕方あるまい。今日のところは限りなく定価に近い価格で買ってやらんこともない」
「買え!常に定価で!」
「俺イトヨよりイオンなんだよな」
「今日30日だから5%オフですよ!」
「何!?##NAME1##、それを早く言わぬか!大至急目的地をイオンに変更せよ!」
「そういうことなら俺も行くぜ。イオンのパン屋に用事がある」
「パン屋に?ああ、パンの耳ですか」
「いや、耳はほかの店でもらう予定だ。イオンのパン屋へはあれを買いに行く」
「あれ?」
「あれ、とは何ぞ」
「パンを作るのに必要な酵母だ!」
「売ってねえよ!」
ちょっと酵母買ってくる
相互記念でTHIS IS LOVE管理人藍子様より頂きました、彼方サイト様のシリーズの亜種、まるでダメなオクラ現代版です。
なんというかもうwww元就様もアニキもwww我家と同等かそれ以上の駄目っぷりwww
素敵な作品ありがとうございました藍子様!これからよろしくお願いいたします!