【胡蝶の夢】 石田×保志


ゆっくりと目を開けると、『あなた』になっていた。
驚いて辺りをみまわすとどうやらリビングのようで、でもなにかが可笑しかった。

視界が
白と黒しかないのだ。

驚いて窓の外から景色を眺めてみても
太陽も
空も
どれもがやっぱり白と黒。
鏡で確かめた貴方の顔も、白と黒。

なんだか急に不安になって、どうしたらいいか分からなくなって
無性に『あなた』に会いたくなった。

でも、どうしよう。
『あなた』は『ぼく』が乗っ取ってしまっているから
もうどこにも『あなた』はいない。

もしかしたら、『あなた』は『ぼく』に入り込んでしまっているのかも!

そう思って、急いで寝室へと向かう。
昨日は一緒に過ごしたから、『ぼく』は今ベッドで眠っている筈なのだ。


がちゃり


小さく音を立てて開いた寝室のドア。
そこでとても不思議な光景を見た。

白と黒しかなかったあなたの視界。
太陽も
空も
どれもが白と黒の世界で。

『ぼく』だけが優しい色合い。

ふわりと色のついた『ぼく』だけれども今は『あなた』。
小さな寝息を立てて眠っている、薄く色付けされた『ぼく』だけど今は『あなた』。
白と黒の視界の中で、そこだけが幻想的にキレイで儚い『ぼく』だけど今は『あなた』。

何故だか泣きたくなるような愛しさが込み上げて
そっと眠る『あなた』へと口接けた。


そこで『ぼく』は夢から醒めて、視界に映るのは優しく『ぼく』へと口接けをおくる『あなた』の顔。
互いに見つめ合って、小さく微笑んで

まさに胡蝶の夢と、口接けた。

end...







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