忍たま

□もう、いいよU
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「仙蔵、今日遊びにいかない?」
「大丈夫だが、私はまだ講義が残ってるぞ」
「終わってからでいいよ」
高校で再開した遺作とは相変わらず前世とかそういうものなしでも仲良しで、のりで同じ大学まで行った。
その大学が忍術学園の跡地に建っているのも何かの縁だろうと受験した二人だが、同じように運命を感じた元同窓連中数人もいるのだからまったく驚きだ。
学年が上がればれば懐かしい後輩達も入学してきて、綾部なんかは真っ先に仙蔵をみつけては駆け寄り、褒めてくださいとわかわけわからないことをいっていた。
同じ大学ではない他の奴らの連絡先も教えてもらい、一度みんなで集まったこともあった。
でもそのなかに文次郎はいなかった。
文次郎の行方は謎だ。

午後は昼間とはがらりと変わって大雨だった。
傘を持ってなかった仙蔵は、よく通うカフェで雨が通り過ぎるのを待つことにした。
しかし雨脚は酷くなるばかりでやむ気配を見せなかった。
伊作との待ち合わせ時間はもうすぐだが、少し遠めの場所で、そこまで行く足がない。この天気のなかタクシーやバスに乗って行くのも億劫だった。
迷うことなく携帯を手に取り、伊作に電話する。いつもなら快く承諾する伊作が今日は簡単に退かなかった。
『ねぇ、少しくらい顔出せない?』
「顔をだせるならいってる」
『今日はいつもとはわけが違うんだよ』
「何が違うんだ?」
『・・・・秘密にするように小平太に言われて る』
「そんな事情、私は知らん。とにかくこんな雨 だ。私は行かんぞ」
電話の向こうで伊作が黙る。まだ何か言いたげなので切ろうにも切れない。
あのさ、伊作がぼそっと呟いた。
「何だ?」
『メールする』
「は?」
唐突に切られた電話を呆気にとられ、待ち受けに戻った画面を数秒見つめた。
何なんだ。
ため息を漏らし携帯を閉じようとしたら、手の中で携帯が震えた。
ディスプレイに伊作という文字が現れる。
二度目のため息をつき、頬杖をつきながらメールを開く。

君を構成する残りの部品をみつけた


あいつはいつから謎かけが好きになったのか。
考える気にもなれない。明日伊作に答えを聞こう。
いつの間にか耳に聞こえる雨だれの音が穏やかになっていた。いまがチャンスだろう。
伊作のとこにいってやろうか。
それとも家に帰ろうか。
迷いながら外に出る。

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