短編
□シュウくんはヤンデレ
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ふと気付くと、俺はエンシェントダークの森の、周りの海がよく見渡せる崖の上に来ていた。
辺りは暗く、月の光ぐらいしか明かりは無いだろう。
「ねえ、」
『おわっ』
そんなとこにずっと立っていても仕方ないだろうと思い、とりあえずゴッドエデンに戻ろうとして後ろに一歩足を出すと、突然声が掛けられた。
まさか他に誰か居るなんて考えてなかったので何気にビビる俺。
振り返ってみると、そこに居たのは我等がエンシェントダークのキャプテン、シュウだった。
『な、なんだシュウか…。ビビらせんなよなー…』
「いや…びっくりさせた覚えは無いんだけど…。
なんで名前はここに居るの?」
はて。
何故ここに居るのかと聞かれても…
『……いや、実を言うと俺自身もよく分かんなくてさ…』
はははーと笑いながら返すと、シュウはなんだか微妙な表情になった。
そしてシュウは俺の手を掴み、何も声を発する事も無く無言でゴッドエデンの方へと歩き始める。
『お、おいシュウ?』
「…………」
『ちょっ、はやっ…少し速くないうおわっ!!!』
少し速くないか、と言い切る前に何かに躓いた俺は、情けなくも変な声を出してしまった。
シュウはその俺の情けない声でピタリと歩を止めた。
『うわ…今の結構痛かったんだけど…。…?』
躓いた原因の物を見ようとするが、辺りは暗く、月の光が辺りを薄く照らしていた。
躓いた辺りを手で探ると、手は何か硬いものに触れた。
『……石か…?』
少し埋まっていたがそれを掘り起こして手に取ってみると、石にしてはやけに白くて軽く、少しぬめりとした感触もあったので、多分苔でも生えているのだろう。
『わー、なんだコレ…何か細長ー…』
「……それは骨だよ。」
『…え?』
突然横で無言を貫いていたシュウが言葉を発した。
…骨、なのか?
なんでシュウはわかるんだ?
俺がそう尋ねれば、シュウは途端に悲しそうな顔をして黙り込んだ。
「……それが、僕のものだからだよ。」
『え、』
しばらくしてシュウが発した言葉に、俺は絶句した。
……これがシュウの骨?
嘘だろ、ありえない。
だってシュウは今目の前に――
冗談だろ、と笑いながら目の前のシュウの手を掴もうとしたが、それは失敗に終わった。
―シュウの手が、掴もうとする俺の手をすり抜けたからだ。
『…いや、はは……嘘だろ…?だって、さっきちゃんと…』
「……嘘じゃないよ。それに死んでるのは僕だけじゃない。」
『え…』
その言葉に、また絶句するしかなかった。
なんだよ、この島は。死んだ奴もシードとして養成するのかよ。
『……そのシュウ以外に死んでる奴って、俺らエンシェントダークの中に居たりするのか…?』
「うん。」
『…木屋?』
「違うよ。」
『…じゃあカイか…?』
「カイも違うな。」
『じゃあ…』
俺はエンシェントダークの皆の名前を次々と言っていく。
だがシュウは、どれも首を横に振って違うと言う。
最後に残ったのは、自分の名前。
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