短編

□シュウくんはヤンデレ
2ページ/2ページ





『ッ……』



駄目だ、言いたくない。


シュウは、シュウはエンシェントダークの中に居るって言ったんだ。

それで今まで自分の名前以外YESは無かったわけで……



『………俺、とか?』


「……うん、そうだよ。」



やっぱり、そうだった。

俺の考えは当たっていたらしい。


『っでも!俺にはそんな覚えないぞ!!死んだ覚えなんて…』

「当たり前だろ。忘れてるんだから。」


ッ嘘だ嘘だ嘘だ…!!!
俺の記憶の中にはちゃんと両親も居てここに来た時の事も覚えてて…!!!

どこにも記憶が抜け落ちた後なんか無い!!!!



「……ねえ、混乱してる所悪いんだけど……それじゃないならどうしてあんなとこに居たの?」


『え…』



無表情でこっちを見るシュウの疑問は最もな事だった。


そうだ、何で俺はあんなとこに居たんだ?

崖なんて滅多に行かないし、ましてやこんな暗い時に……



するといきなり、シュウは考え込む俺の手を掴み、さっきの崖にズンズン進んで行く。


『ちょっ…シュウ!!手、痛いって!おい!!』

「…………」



そして崖に着くと、俺を海の方に突き飛ばした。


『っ!?危ねえなシュウ!!落ちたらどうするんだ!!!』

「落ちて良いんだよ。」

『は…!?』



シュウの言ってる事が分からない。

落ちたら、しぬだろ。
危ないじゃねえか。



そんな俺の考えを余所に、シュウは俺の前に来て、座り込んでいる俺を抱きしめた。



『っシュウ!!』


「ねえ名前。落ちたらわかるよ。落ちたらきっと、思い出せるよ。」

まるで子供をあやすかのように背中をポンポンと叩くシュウ。



そのまま後ろに体重を掛けられて、ついに俺の身体は宙に投げ出された。



「名前、好きだよ。愛してるんだ。」


殺したいほどに。




その言葉とシュウの微笑みを最後に、俺の意識は波に呑まれて消えてしまった。






「…これで、ずっと一緒だ。」


シュウのその呟きは聞こえなかった。













(本当はね、)
(嘘だよ)
(君が此処に来たのは偶然で、)
(君はまだ生きてたんだ)
(僕らはずっと一緒だ。)
(名前、好きだ。愛してる。)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ