短編

□白竜は気分屋
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突然だが、俺の恋人は凄く気分屋だ。








『………ん…?』



ある晩、俺が寝ていると何やらモゾモゾと布の擦れる音がした。

まだろくに覚醒していない頭でその音源を確かめようと目を凝らすが、中々見えない。


段々と募る苛立ちをそのままにがばりと起き上がって電気を点ける。



「はっ…」



……音源の正体は、一生懸命俺の布団に入ろうと奮闘している白竜だった。



『……何、お前。』



部屋の時計は午前2時を指している。

人をこんな時間に起こしやがってという意味を含めて睨みつけてやれば、あろうことか白竜は俺に抱き着いてきた。



『っおい!!本当に何なんだよ!』

「…ふん、名前が寂しがっているだろうと思ってな。」

『はァ…?』


そう言って抱きしめる力を更に強める白竜。

いてーよ。



「そういう事だからな、寝るぞ。」

『はっ!?ちょ、待てって!!それってお前の事じゃ…』


言い終わる前に白竜の唇によって遮られてしまった。



『ふ……はっ…、んん…む…』


「んっ…、っ…」



最初は小鳥が啄むようなものから始まり、段々と深くなってまるで貪るようなキスへと変わっていく。



「…はっ…名前っ…」


『っ、白竜っ…?』




ゆっくりと唇が離れる。


「名前っ…」


白竜はキスのせいかとろんとして熱の篭った目をしていたが、多分それは俺も同じだろう。



『…ほんと…どうしたんだよ白竜っ…』




「……別に。」


…え?

俺が息を整えていると、突然白竜はベッドに潜って寝はじめた。


『…え?ちょ、白竜おまっ…』
「うるさい」


そう言って俺に枕を投げつけて数秒後、白竜は見事に寝てしまった。



『………はあ…』



スヤスヤと気持ち良さそうに眠る白竜を見て、思わず溜息がでる。




……もう一度言おう。
俺の恋人は凄く気分屋だ。



『(こんな事慣れすぎて涙も出ねーよ…)』



ベッドは白竜が占領している為、俺は仕方なく床で寝るしか無かった。



『(……恋人ってこんな感じだったっけ…)』



虚しさと寒さで震える身体を無視し、俺は瞼を閉じた。






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