短編

□シュウくんが不安になるだけの話
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「名前?」



森で練習をしていると、どこかに行く名前を見つけた。


不思議に思って名前の後をこっそりつけていくと、島のどこかの広い浜辺に出た。



「……こんなとこで何を…」


一瞬嫌な考えが頭を過ぎったが、そんな筈は無い。

大丈夫だろ。名前はしんだりしない。



だがその期待とは裏腹に、名前は靴と靴下を脱いで海の方へと歩を進め始めた。



――そんな、まさか…




「名前!!!!」



僕は水の中へと歩く名前の名をありったけの声で叫んだ。

けれど名前は振り向かない。


おかしいな、絶対に気付かない距離じゃ無いんだけど。
無視してるのかな?何で?
僕の声が耳に届かない?

僕の声が…



「あ…いや…そんな、ちがう、」


がくがくと膝が震え始める。


そんな、ちがうよ。
ありったけの声で呼んだし、聞こえない筈なんてないんだ…


「ね、ねえ名前…!!聞こえるだろ…!?」



――また、僕の目の前で大切な人が居なくなるの?


「ッ」


一瞬、呼吸が出来なかった。
なんて、なんて事を思ってるんだ僕は。


ざばざばと僕も海の中に入っていく。
足に纏わり付く水の感触がどうも気持ち悪い。


「ッ名前っ…え?」



やっと追い付いた。

いつの間にか歩くのを止めていた名前を連れ戻そうと手を掴むと、その手は呆気なく消えてしまった。




名前がそこから消えたんだ。















「っああ!!!」


がばりと音を立てて起き上がる。


「っはあ、はあ…、はあ……。」


真っ暗な部屋には僕の荒い息遣いが響く。


「はあ、はあ…え…?ゆめ…?」



夢だとしてもさっきのは余程きたらしい。

僕は恐怖か寒さかわからない震えを抑える為に自分を抱きしめた。


すると途端に名前の顔が頭に思い浮かぶ。



――そうだ、確認しないと…








――――――――




「…………」



名前の部屋に来た僕は、音も無くドアを開けて名前が寝ているベッドに近付く。



「…名前…」


ベッドの脇に腰掛けて名前の頬に触れる。

ギシリとベッドが軋む音が部屋に響いた。



「……良かった…」



手で触れたそこは確かに熱を持っていて、触れている手を名前のはだけた胸元に持っていく。


どくんどくんと規則的な音が伝わってきて、僕はホッとした。



途端に、触れている手をガシリと掴まれた。



「っ名前…?」


『…ああ…?なんだ…シュウか…』



名前は僕を確認するとのっそり起き上がった。


『どうし…!?』


…筈だったのだが、それは僕が抱き着いて押し倒した事により阻止された。


再び元の寝てる状態に戻った名前は何が何だかわからない表情をしていたが、僕の心の中は歓喜でいっぱいだった。



良かった、名前はここに居るんだ。


良かった、ここに居るんだ。




――消えてなんか、ない。






「良かった…。」



まだ慌てている名前をそのままに、僕は心地好い名前の心臓の音を耳に聞きながら瞼を閉じた。




――今度は名前と仲良く遊んでる夢でも見たいな…。




―――――

文才欲しい

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