ころしやものがたり

□第1話 高町切嗣
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 ここで僕に一つの疑問が浮かんだ。

「なのはちゃん、そういえばかなりフレンドリーに話しかけてくれるけど、どうしてなんだい?僕、君に会ったことあったっけ?可愛い子なら忘れる筈ないんだけど」

 そう、彼女の気軽さだ。歳が20以上離れているというのに、まるで友達感覚で話してくれている。単純に考えればそういう性格なのだろうと思った。

「え、えっと……だって切嗣くん、私と多分同い年くらいでしょ?」

「…………」

 予想の範疇を軽く超えていた。さっきのカワイイ発言でなのはが恥ずかしそうに頬を染めていたことがどうでもよくなった。彼女が30代なのだろうか?いや、流石にそれはない、彼女に失礼過ぎる、合法ロリなんて存在するわけがない、あるはずないんだ。それに自分で言うのも何だが、僕は老け顔だ。呪いで消耗して34より年上に見えるのに同い年?そんな筈は無い。そう思って手を頭にやろうとして目に入った。

 まるで子供のような柔らかそうで小さな手が

 僕の思考が停止した。その様子をなのはが不思議そうな表情を浮かべて切嗣を見ている。

「切嗣くん?」

「……なのはちゃん、鏡持ってるかい?」

「鏡?
ーーはい、これ」

 なのはは少しキョロキョロと辺りを見回すと、棚の上に置いてあった手鏡を拾い僕に手渡した。僕はそれを受け取り、恐る恐る自分の顔を写す。そして目に飛び込んできたのは、目が黒ずんでいるのは変わらないが、かつてとある孤島に住んでいた子供の頃の自分の姿だった。

「…………」

 本当に驚いた時は声が出ないのだと僕は改めて実感してしまった。これは一体どういうことなのか?死んでなかったかと思えば今度は自分の年齢が7〜8歳くらいまで下がっていたなんて魔術的な観点から見ても無茶苦茶だ。色々推測は出来るが、情報の少ない今、いくら悩んでもここでは解決しない。とりあえずここは怪しまれないように自分の見た目相応の対応をするべきだと考えた。……もう遅いのかもしれないけれど。

「あ、ああ、ありがとう」

「どうしたの?何処か痛むの?」

 なのはは心配そうに僕の顔を覗き込む。本当にいい子だ、士郎やイリヤもこう育ってくれると嬉しい。

「いや、大丈夫だよ。とりあえず君の家族にお礼の挨拶しなきゃいけないね」

「うん。切嗣くん、立てる?」

「ああ、問題ないよ。ありがとうなのはちゃん」

 僕は布団からゆっくり起き上がりニコリと微笑む、するとなのはは再び少し顔を赤くしてしまう。この歳だとまだ耐性が無いのであろう、僕も色々犯罪に手を染めたが流石にこの手の犯罪は犯したことないので流石に焦る。

「早く行こう、うん、今すぐに」

「う、うん!」

 二人揃って部屋を出る。僕は、女の子への優しさはある程度で自重しておこうと心に決めたのだった。


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